未来を予見する「5つの法則」

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334975463

感想・レビュー・書評

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  • 本書で言っているところの「5つの法則」とは、・「螺旋的プロセス」による発展の法則・「否定の否定」による発展の法則・「量から質への転化」による発展の法則・「対立物の相互浸透」による発展の法則・「矛盾の止揚」による発展の法則である。それぞれの法則に説得力があり、すごく納得させられる。過去を振り返れば、まさにこれら5つの法則で人類は発展、発達を繰り返した。では、未来は?

  • 世界の発展の5つの法則



    第一の法則 螺旋的プロセスによる発展

    世界はあたかも螺旋階段を登るように発展する。



    第二の法則 否定の否定による発展

    現在の動きは必ず将来反転する。



    第三の法則 量から質への転化による発展

    量が一点の水準を超えると質が劇的に変化する。



    第四の法則 対立物の相互浸透による発展

    対立し、競っているもの同士は互いに似てくる。



    第五の法則 矛盾の止揚による発展

    矛盾とは世界の発展の原動力である。





    資本主義の発展に伴い、全ての営みが商品とし売買されるようになり、貨幣に換算されるという文化が広がり、それと共にボランティアの文化は失われていった。だが、ネット革命の到来により、その文化が甦ってきた。



    均質化と個性化の螺旋的発展。



    進化の本質は多様化である。単に古いものが消え、新しいものに置き換わる事ではなく、昔からある古いものと新たに生まれた新しいものが共存し、共生し、棲み分けることによって世界の多様性を高めていくプロセスである。



    知識社会においては、言葉で表せる知識が価値を失い、言葉で表せない智慧が価値を持つ。



    コストを劇的に下げる事で、主戦場の移行を早める事ができる。

    例えば、通信料金の量的変化が市場文化の質的変化をもたらす。



    民主主義は、多くの人々が意思決定に参加する事から多くの人々が社会変革に参加することへ深化する。



    非言語コミュニケーションとイメージコミュニケーションの時代が幕を開ける。



    考える力、論理的思考力から感じる力、感覚的直感力へのパラダイム変換が起こる。



    イデオロギーからコスモロジーへのパラダイム変換が起こる。

    (*コスモロジー、、世界に存在する様々な価値観を全て受け入れていくだけではなく、異なった価値観が共生する事に最大の価値を認めること。)



    機会論的世界観から生命論的世界観へのパラダイム転換が起こる。

    肉体の精密検査だけでは決して原因がわからない心身症や、個人の精神分析だけでは決して理解できない集団心理の現象などに象徴される問題。この世界は有機的な生命的システムである為、分解しても理解できない。



    複雑系の科学が生命論パラダイムの科学へと進化させる。

    物事が複雑になると、あたらな性質を獲得する。自然、社会、人間を問わず、システムが複雑になると、それを構成する要素が持つ性質の単なる総和ではない、

    「新たな性質」を獲得していく。



    インターネット革命が、組織、市場、社会を「高度な複雑系」へと進化させる。

    例えば、

    ネットコミュニティの自己組織化

    コミュニティにおける新たな知識の創発

    ネットを通じて多くの人々の共鳴行動

    企業の意識と消費者の意識の相互進化

    ポータルサイトにおける商品生態系の形成



    この結果、人々の意識への生命論的世界感の浸透が起こる。

    そしてこの結果、「生命的システムに処する智慧」が求められるようになる。

    例えば、

    コミュニティの自己組織化を促す智慧

    新たな知識の創発を促す智慧

    人々の共鳴を生み出す智慧

    生態系の形成を促す智慧



    地球環境問題解決の為には、生命的システムに処する智慧が求められる。



    人類の古い文明の中に宿る生命論的な思想や智慧が甦り、古い叡智と現代文明の科学技術、組織、制度が融合し、新たな文明が生み出される。



    本来、科学技術と資本主義そのものに問題はなく、その背後にある世界をエゴの願望のままに操りたいという「操作主義」や、世界が自由に操れる機械の如きものであって欲しいという「機械論的世界感」にこそ問題の根源がある。



    教育、コミュニケーション、コミュニティ、医療など、様々な分野において「生命論的な思想と智慧」が生かされる文明がはじまる。

    例えば自然の中に宿る神秘や自然の持つ不思議を感じるセンスオブワンダーを大切にする思想が、ハイビジョンや三次元映像、仮想現実感などの最先端技術を用いた教育システムと結びつく時、そこに新たな「体験型自然教育」のパラダイムが生まれる。



    人間同士の暗黙知を言葉を使わずにイメージを用いてコミュニケーションする思想。以心伝心、不立文字の思想がウェブの写真やCG、動画や映像の共有システムと結びついた時、そこに新たな「イメージコミュニケーション」のパラダイムが生まれる。



    東洋文明と西洋文明の螺旋的発展が起こる。

    東洋文明に宿る生命論的な思想や智慧が甦り、西洋文明が育んだ最先端の科学技術や資本主義と融合していく。例えばエルンスト•シューマッハの仏教経済学。



    人類の前史の時代が終わりを迎える。

    西洋の叡智によって高度に発達した科学技術や資本主義と、東洋の土壌に深く根を下ろした生命論的な思想と智慧が結びついた時、そこに新たな文明が生まれる。この時、人類の前史が終わり、本史が始まる。我々人類は幼年期を終えるのだ。



    12のパラダイム変換まとめ

    1、貨幣の経済に対して善意の経済が影響力を増していく。そして新たな経済原理が生まれてくる。

    2、多くの消費者や生活者が、社会の変革とイノベーションのプロセスに参加するようになる。

    3、政治の分野だけでなく、経済と文化の分野でも直接民主主義が実現する。

    4、言葉を使ったコミュニケーションではなく、言葉を使わないイメージコミュニケーションが広がっていく。

    5、考える事を重視する文化と感じる事を大切にする文化が融合していく。

    6、誰もが自分の中に眠るいくつもの才能を開花できる「ダヴィンチ社会」が到来する。

    7、誰もが自分の中に隠れている複数の人格を表現できる脱ペルソナ社会が実現する。

    8、単一価値のイデオロギーの時代から、様々な価値観の存在を最大価値とするコスモロジーの時代に向かっていく。

    9、排他的な一神教の時代から様々な宗教が共生する新たな多神教の時代が始まる。

    10、機械論的世界観に基づく科学ではなく、生命論的世界観に基づく科学が主流となっていく。

    11、現代文明の科学技術と古い文明の生命論的な智慧の融合が起こる。

    12、東洋文明と西洋文明が互いに学び合い、21世紀の新たな文明が生まれてくる。

  • 結論がまとめられているのですが、実例が汎用。これを読んで未来の予見に当てはめるのは大抵の人には難しいと思う。

    ①世界はあたかも螺旋階段を登るように、発展する。
    ②現在の「動き」は、必ず、将来「反転」する。
    ③「量」が、一定の水準を超えると、「質」が、劇的に変化する。
    ④対立し、競っているもの同士は、互いに、似てくる。
    ⑤「矛盾」とは、世界の発展の原動力である。

    気に入ったのは、ヘーゲルからの引用「存在するものは、合理的である」。なのでこの世に存在するもので無意味なものはない。その意味の大きさが変わり、相対的な重要度が低くなっただけである。だから、加速度的に物事が発展すると、以前あったものが形を変えて帰ってくる。

  • 未来は「予測」はできないが「予見」はできる


    なぜ予測できないか?
    「不連続」「非線形」「加速度的」


    どう「予見」するか?
    大局的な方向を予見すること

    すなわち、「世の中はこの方向に向かう」など未来に向かってな大きな流れを理解する


    大局観を身につけるには
    「古い哲学」(弁証法)を学ぶこと。
    それにより、世界の変化、発展、進化の法則を教えくれる。

    弁証法が教える五つの法則とは?

    ・螺旋的プロセスによる発展の法則
    ・否定の否定による発展の法則
    ・量から質への転化による発展の法則
    ・対立物の相互浸透による発展の法則
    ・矛盾の止揚による発展の法則

  • 時代が移り変わっても、抽象化すると螺旋階段のように同じものが戻ってくるという話などがあり、分かりやすい。端的な文章ですぐに読むことができ、物事を理解するときの物差しや整理のヒントとして頭の引き出しに置いておきたい。

  • 感想
    対立を超えた進化。相反するものが上昇圧力を受け次のステージへ淘汰される。変化が多い時代。より多くの止揚が見られるようになる。

  • ■ひとことで言うと?
     弁証法的思考により未来の方向を知ることができる

    ■キーポイント
     ・弁証法の法則
      →1. 螺旋的発展:世界は螺旋状に発展する
      →2. 否定の否定:発展の動きは極致で反転する(相手を包含し反転する)
      →3. 量質転化:量的飽和が質的変化を生む
      →4. 相互浸透:対立物は互いに似てくる
      →5. 矛盾の止揚:矛盾を超えて発展する(矛盾は発展の原動力)
     ・進化の本質
      →進化≠古いものの排除
      →進化=古いものと新しいものとの共存(多様化)
     ・これから起こるパラダイム・シフト
      →直接民主主義(参加型イノベーション)
      →感じる文化(非言語コミュニケーション・VUCA時代)
      →マルチタレント時代(複数人格の表出・分人)

  • 新聞のコラムの経営者の座右の書として紹介があり、この度、読みました!
    2008年に出版された本ですが、世の中にどのような変化が生じるのかが書かれている。ズバリなんだよなー。そんでもって読んでて思うのは、世の中の本質というか、普遍的なものというか、そんな精神的なことをこの本より感じました。→読んだら、なんとなく理解頂けるかと思います。

  • 弁証法を用いて未来を考察。当たるか、当たらないか、よりも考察する過程が大事だと感じるとともに、シンプルに削ぎ落としきる筆者の文体も魅力。

  • これまで、田坂さんが書いてきた、「使える弁証法」「これから何が起こる」で述べてきたことを12のパラダイム転換にまとめたもの。

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著者プロフィール

シンクタンク・ソフィアバンク代表

「2023年 『能力を磨く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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