悪魔のささやき「オレオレ、オレ」―日本で最初に振り込め詐欺を始めた男

著者 : 藤野明男
  • 光文社 (2012年4月発売)
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  • レビュー :5
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334976866

悪魔のささやき「オレオレ、オレ」―日本で最初に振り込め詐欺を始めた男の感想・レビュー・書評

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  • 国内におけるオレオレ詐欺(振り込め詐欺)第1号と言われるグループに属していた青年の追想記。
    前半が音楽やファッションが好きな青年がオレオレ詐欺に手を染めるまで、後半が刑務所体験記という構成になっている。前半のさして深くも考えず詐欺にのめり込んでいく軽いノリに対して、後半の刑務所生活のつらさが対照的。

    振り込め詐欺というのは、(もちろん、褒められたことではないけれども)ある意味、人の心の虚をうまく突く、よくできたシステムだと思う。それだけに、非常に(悪)賢い人が練り上げたもので、実は総元締めがいて、特許じゃないがこのアイディアを使う使用料を回収していたりして、などと漠然と思っていた。
    だがこの本によれば、国内第1号とされているオレオレ詐欺は、口のうまい人当たりのよい青年たち(DJをしていたり、前職がキャッチセールスだったりキャバクラ嬢だったり)が、自然発生的に思いついたものなんだという。そういわれると、ああなるほどと納得したりもする。
    本当にこの著者たちが一番だったのかどうかはともかく、彼らも誰に教えられたわけでもなく、自然に仲間の1人が思いついたのだというから、遅かれ早かれこうした詐欺の形はできていたということになる。
    何というか、ある意味、心理学実験のような「装置」ができていたんだなぁ・・・。
    金をだまし取ろうとする集団以上に、「どうすれば人は騙されるのか」について深く考え(仮説を立てて)、また実際にやってみる(実験してみる)人はいないよな・・・。そりゃ繰り返し何度もやっていれば、場当たり的にうまい手を編み出したりもするだろう。

    著者が、非常に軽いノリで振り込め詐欺を繰り返したのは、被害者と実際に顔を合わせないため、加害者側の「加害」意識が低いことに所以するのだろう。

    初期は素人的なグループが仲間内でやっていたものの、今や、おいしい「ビジネス」に目を付けた暴力団関係者が大規模かつ組織的に行っているのだという。グループは(1)実際に電話をする実行班、(2)携帯電話等を調達する道具班、(3)振り込まれた金を回収する出し子班に分かれている。それぞれが顔も知らずに行動しているので、グループのうちの誰かを捕まえても班全体が捕まるわけでもないし、ましてや別の班の構成員には手が伸ばせない。当然、黒幕の尻尾は掴めない。
    まさに悪魔の発明。開けられてしまったパンドラの箱だ。

    最終章に、振り込め詐欺の現状と防御策が簡潔にまとめられている。これだけでも一読の価値がありそう。
    日夜戦う警察の担当者に敬意を表したい。


    *手記の形を取っているが、本書中に挿入されている著者の日記に比べ、本文(ときどき解説もあり)が格段に読みやすく、論理的に感じる。ライターさんとか編集者さんの手が大幅に入っているということか。

    *著者の親は、土地等を売って被害者に全額弁済したのだという。「育て方が悪かった」という批判はあるのかもしれないが、それにしても親って悲しい。出所した息子にまずサーロインステーキを食べさせてやる父。これ以上、お父さんお母さんを泣かせないでね・・・。

  • だからといって、許される行為ではない。その様や、仕組み、葛藤など、よくわかって面白かったけれど、やはりその代償は重い。

  • 他有没有印税?方法巧妙。 网络难民被迫搞工作的事也。

  • 「オレオレ詐欺」と呼ばれる詐欺行為は近年の犯罪の中でも、ある意味手軽でかつ成功率が高いということから考えてもなかなか画期的な犯罪手法だと思う。なんと言っても北海道に住む自分の親のところへも2005年暮には電話が掛かってきていたくらいだから、その拡散のスピードと裾野の広さには驚くばかりだ。

    だが、その詐欺行為の「発明」は意外なくらいにあっけない話だ。場所は杉並で独立・開業したばかり闇金業者。闇金の三種の神器である飛ばしの携帯電話、架空名義の銀行口座、金融名簿とあるが、この金融名簿には多重債務者のリストには家族構成・学校・実家の明細までも揃っているという。要はこうした名簿を基にして金を貸し込みまた取立てを行うわけだから回収率もまた高いということのようだ。

    で、そこで働く中で最も業績の悪い人間がある日、名簿の中のおばあちゃんの自宅に電話して「オレだけど・・・、じつは金に困って電話したんだ。交通事故をおこして支払いに困っているので40万円くらい振り込んでくれないかな?」と言うとなんとこれが簡単に金を振り込んできてしまったらしい。これが意外にも成功率が高いと事務所の皆が真似を始めてあっという間に広がったのが「オレオレ詐欺」の始まりというわけで、時期が2003年の春。以後は雨後の竹の子の如くこの手法が広がり今に到っているというわけだ。

    本書はこの闇金業者で「オレオレ詐欺」の発明を目の前で見て、そして自らも実践し、一端は実を引くが改めてその発明した彼と再度、詐欺集団を立ち上げたところで逮捕され服役を終えた人物。残念ながら(?)本書の大半は、生い立ちと逮捕・拘留・服役の間の話が中心で、オレオレ詐欺の詳細については其れほど深く語ってはいない。恐らく詐欺の反省をしている姿と、被害をこれ以上拡散させないために口を開いたという形にしているのだろうが、逆に物足りなさもある。

  • 振り込め詐欺を発案したということになっている人が、半生を語った自伝。大学生のころから、闇金業界に入り、そこから振り込め詐欺の手口を組織化し、逮捕されて現在に至る……という流れは、アメリカだったら映画化されてもおかしくないと思う。自伝の最後には振り込め詐欺の現状や手口、詐欺に引っかからないための方法などが語られていて、これを読むのが面白かった。


    振り込め詐欺という、誰も真に受けなかった方法を、その有効性を目の当たりにして組織化した作者は、ちょっとしたベンチャー臭がするし、メンタリティ的には新しいビジネスを発見した!というビジネスマン的なものに近かったような気がする。闇金自体が一旗上げようとする人たちの吹き溜まりなわけだし。


    なので、逮捕されてからの刑務所生活のところはあんまり面白くなかった。そこは他の犯罪者と境遇は同じなわけだし、振り込め詐欺の創始者ならではの特殊さもないと思う。刑務所の中で、振り込め詐欺の方法論を伝授するコンサルタント的な役回りになったことで、今はこんなに大変な世の中になりましたという流れなら納得できるけれど、そうでないから逮捕されるまでをもっと濃密に書いたほうが良いと思った。

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