公衆トイレと人生は後ろを向いたらやり直し ソープの帝王 鈴木正雄伝

著者 : 木谷恭介
  • 光文社 (2012年8月18日発売)
2.90
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  • レビュー :8
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334976910

公衆トイレと人生は後ろを向いたらやり直し ソープの帝王 鈴木正雄伝の感想・レビュー・書評

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  • ソープの帝王と呼ばれた鈴木正雄さん。今現在では80歳を過ぎているだろう。ソープの経営は「あくどいこと」をしない。女性の面倒をよく見る。

  • 裸一貫から、ソープランド、宝石店、ボクシングジム等を擁する角海老グループを築き上げた鈴木正雄の自伝。インタビューをまとめたものに著者の補足説明的なコラムも掲載されている。
    鈴木が政財界、法曹界、学会と広く交流があったことが、一部実名入りで書かれていて、その人脈の広さに驚かされた。
    鈴木自身の女性遍歴については全く触れられていないのがちょっと残念。
    ちなみに清泉亮著「吉原まんだら-色街の女帝が駆け抜けた戦後-」にも鈴木についての言及があるので、こちらも併読することで、鈴木の人物像がより立体的に見えてくると思う。

  • ソープの帝王・角海老グループ創業者の自伝と聞きつけ、どんなディープで破天荒な話かと思いきや、まっとうな商売人のまっとうないい話が満載で若干拍子抜けの感はあるが(笑)、戦後の風俗事情の変遷が分かりやすく、特に風営法施行以降の業界と取締りのグレーゾーンなど解説が入り興味深い。

    「あくどいことはやらない。税金をきちんと納め、店で働く女の子も、お客も、従業員も、お客を運んできてくれるタクシーの運転手も、みんな気持ち良く働くことができれば充分商売はやっていける。」
    この信条で長年この業界でトップを張ってきたのだ。
    高校生の時に人力車一台から始めた仕事を、500人からの従業員を抱えるグループ会社に成長させたひとかどの人物は、若者の勤労意欲が下がったこの国の未来を憂う。
    ソープの帝王の仕事術。仕事とは業界職種の関係なく、「ちょっとした心遣い」。読み終わるとなんだか頑張って仕事したくなる。そんな本である。

  • 19番乗り。気になる。(2012/9/13)

  •  なぜ、ソープランドってホンバンがあるのに、売春禁止法で検挙されないのか?

     長年の不思議が解決した。

     どうでもいい話だが。

     さて、どんな仕事も、ここまで誇りを持って行えば、結果が伴う、というのを実践した話、だった。性風俗店も、外交に使われていたとは、、でもそうだよね、必要だよね。

     突き抜けていて、痛快でした。

  • インタビューアーが木谷氏で、インタビューに基づいて角海老グループの創業オーナーの鈴木氏の半生をまとめ、そして木屋氏による風俗史観について記した内容かな。
    ちなみにお二人とも昭和ひとけた生まれ。

    帯に「ソープの帝王」なんてあるので「すごい内容」を想像した方もたくさんいるかもしれませんが、ま、読んでのお楽しみですか(笑)


    鈴木氏が、風俗産業の変遷(赤線~売春防止法~トルコ風呂~現在)ついて、そして自身の半生に熱く語っています。
    「日本最大のソープランドチェーン店のオーナー」が「正々堂々と語る」というところがおもしろいですよね。雑誌やスポーツ新聞やネットの記事での匿名ならありそうだけど、これは堂々とかつ真面目に「グレーともとれる業種」について語っているわけです。

    間違ってもピンク系の内容ではありませんので勘違いして買わないでください(笑)

    私はピンク系の話こそ期待していなかったものの(苦笑)、かなりダーティーな
    内容、ダーティーな方かなと思って読んでみたのですが全く違った。
    少なくともこの本を読む限りにおいてはダーティーさは微塵も感じられない。
    むしろ「まっとうな商人」という印象です。

    正直1,700円というのは高いかな、、、、とも思うけど読み物として
    楽しめます。

    ちなみに「公衆トイレ・・・」のタイトルは「トイレ掃除」の事を意味するんですが、昔トイレ掃除をする事で「問題を先送りしてはいけない」ということを学んだんだそうです。

  • 首都圏一円に32店舗のソープランドを展開し、世界チャンピオンを3人輩出した角海老宝石ボクシングジム、角海老宝石などを所有。いまや500人を超すグループ企業となっているのが「角海老グループ」である。

    これらを経営者として率いてきたのが、角海老グループの元総帥・鈴木 正雄氏。本書は、これまでに、ほとんどマスコミには登場しなかったことから「闇の帝王」「ソープランドのドン」などとも呼ばれた鈴木氏の半生をまとめたものだ。

    取材をしたのは、かつて風俗ライターとしての経験もあるミステリー作家・木谷 恭介氏。84歳が80歳にインタビューを行い、生き字引同士で昭和の裏面を描き出す。まさに役者が揃いも揃ったりという状況である。

    木谷氏の周辺取材によると、同業者からは角海老グループの荒稼ぎっぷりに、いささか羨望めいた非難まで聞こえてきたそうだ。唯我独尊、己が商法を貫き通し、今日現在”ソープランドの帝王”とまで呼ばれるようになった鈴木 正雄とはいかなる人物なのか。

    その幼少期は、やはり壮絶だ。妾の子として生まれ、父は戦後の混乱で割腹自殺。焼け跡の瓦礫の山のなかで、はじめて兄、弟、妹二人の兄弟と巡り会う。

    精神面で大きく鍛えられるのが、中学生で便所掃除のアルバイトをしたときのこと。この作業を通じて、問題を先送りしてはいけないということを痛感したのだという。

    汚れた便所を前にして腕を組み、どうしたら汚されないかとか、どうしたら汚れないかを考える前に、まず目の前の汚れている場所を掃除することです。
    問題解決策を考えるのは、それからで十分だということを忘れている人が多いようです。
    ビジネスマンとしてのスタートは、浅草界隈を中心に芸者衆を運ぶ人力車の商売から始まる。しかし持ち前の嗅覚を頼りに職を転々としていくと、あれよあれよという間に女郎屋の経営へと行き着いてしまう。そして、その後の半生は、まさに昭和の風俗史との二人三脚だ。

    1957年の「売春防止法」施行の時こそ、時代が大きく変わった瞬間である。それまで公認されていた赤線地帯と呼ばれていた売春地帯が廃止され、昨日までシロだったものがクロへと変わることになるのだ。しかしその後も名称こそ変わったが、ソープランドはほとんど姿を変えることなく60年近く存在し、平成23年度版警察白書によれば1238軒も存立しているという。

    ここに見えてくるのは、「是非で論じられない」行為を、取り締まる側の為政者・取り締まられる業者・利用する社会、この三者が合意できる落とし所として生み出された不思議な構造体としてのソープランドなのである。日本は取締当局が常に正しい判断をするという前提に立ち、その実、すべての面で曖昧なのだと鈴木氏は語る。

    一線を退いた鈴木氏が、今なお声高にこの問題を叫ぶのは、昨今のデリヘルという無店舗型システムが性風俗業界の半数を超えるシェアを持つようになったこととも関係がある。

    デリヘルはネットや新聞広告で見て、電話をすると、指定した場所に女性が出張サービスを行うシステムだが、広告やネットでしか「存在」を確認できないものも多い。要は、曖昧ながらも可視化される存在であった現代日本における風俗産業の多くが、いまや地下に潜行してしまっているということに危惧を覚えているのだ。

    後半、テーマはどんどん大きくなり、日本全体を憂う言論へと論調は変わっていく。この中で鈴木氏は、この国を良くするためにすべきことの一つとして「真実を伝える」ということを挙げている。これは性というものの本質について、政治や司法がまじめに取り組むべきであるということとも繋がっている。

    ある側面においては、常識のある人が、しごく真っ当なことを述べているという印象も受ける。それだけだと通常は読み物としての物足りなさも感じるものだが、特殊な立ち位置からくる”見えているもの”の違いが、言葉に力を与えているのだと思う。それはグレーな領域を「正業」と捉え、事業として発展させてきた男の、胆力のようなものである。

    風俗の問題に限らず、世の中に曖昧な領域というのは、実に多い。そして語られることこそ少ないが、その中で生きてきた人たちは確かに存在し、その歴史を無かったことにするなど到底出来はしないのだ。このようなところから目を逸らさずに生きていきたいものだと、つくづく思う。

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