ストーカー病―歪んだ妄想の暴走は止まらない―

著者 :
  • 光文社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334977641

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で目に入ったので、手にしてみた。
    司法と医療は水と油という話が印象的だった。
    全く性質の違うものだからこそ、
    それを認識して、連携が必要だということ。

  • ストーカーを病としてとらえようと提唱する精神科医の書。
    「病としてとらえる」「被害者を減らすためにも加害者の治療が必要」という趣旨には賛成だが、発想や言葉の選び方があまりにも無神経で不愉快だった。
    臨床の精神科医としては絶望的なまでに不適切な鈍さ。
    これを読んだ人がどう考えるか、相手がどう受け止めるか想像できていない。
    そのうえ医者であるにもかかわらず、医療に関する部分すら裏付けがない。

    著者は相手への過度の執着、被害意識、関係を適切に認識できないなど、ストーカー周縁の問題をまとめて「ストーカー病」と呼ぼうとする。
    まずこの名付け自体が悪いラベリングだ。
    病名をつけることには、病識をもたせて安心させる効果がある。
    自分がクズだからではなく病気だからおかしいのだと思えばこそ治療に励むこともできる。
    病気だと認識することで周囲の目も変わる。
    「ストーカー」という名前にそんな効果は期待できない。

    ストーカー行為の自覚はないものの自分はヤバいんじゃないかと思って情報を調べた人がこの「病名」に行き着いたとして、その人はこの名前を受け入れられるだろうか。
    受け入れたら自己評価がさらに下がるし、この名前を他人に説明しても偏見しか得られない。
    私ならこんな犯罪でしかない名前で自分を説明したくない。
    著者はたぶん、そういう想像ができないタイプの人だ。

    この本には「実例」がいくつも出てくる。
    ほとんどは報道で知っただけのニュースなのに、被害者加害者ともに実名で記される。
    本という媒体は新聞やテレビの報道よりも長く残る。
    そこに実名をのせる配慮のなさも、直接診察したわけでもない人達を分析する軽率さも、医師として信頼できない。
    野口英世にいたっては、根拠として引用するのが渡辺淳一の小説。この人リテラシー大丈夫なの?

    しかもストーカーの解説や分析よりも自分の話が多い。
    経験から「ストーカー病」を語ろうとはしているけれど、そこを読むのは苦痛だった。
    著者自身が診察した人達は匿名でこそあるけれど、本人の許可をとって載せているとは思えない。(フェードアウトした患者と連絡を取るのは困難だ)
    よくあるパターンを再構成したものだと思いたいけれど、断りがないしそういう配慮ができる人だとも思えない。

    2000年から2003年頃に診察した小学生の女の子の話は本当にひどかった。
    父親からの性的虐待を告白される→父親と少女を同席させて「娘さんに聞いたんですけど性的虐待してますか?」と聞く。
    ねえよ!精神科医の常識はしらないけどこの対応はねえよ!
    診察室をでたあとに、この子がこの親と同じ家に帰ることが想像できないんだろうか。

    虐待されている子を助けたくても、虐待者をどうにかしなくては本当に助けることはできない、という結論だけなら納得できる。
    でもその過程がひどい。
    だいたいフロイト世代でもないのに、性的虐待をありうることとして考えられない精神科医なんているのか?
    いたとしてそいつは使えるのか?

    その後、父親は二度と姿を現さず、そのうちに著者は転勤、人づてに娘が病院に来なくなったと聞く。
    が、自分の対応の悪さではなく、制度の限界が原因だと考えているようにしか見えない。
    再現された台詞はどう考えても小六の話し方じゃないから、だいぶ著者の脳内で改変されているんだと思う。
    つまりは、頭の中のイメージでしか患者をとらえられていないだろうと思う。
    にもかかわらず、わかった風に「傷は一生を支配する」とまで書く。
    傷痕が残るのは避けられないとしても、痛みに人生を支配されずにすむよう手助けするのが医者の仕事なのに、それをまったく理解していない。

    このエピソード以外にも「あの頃は情報もなかったから」という言葉がちょくちょく出てくる。
    けれど、十年前はそこまで昔じゃない。興味があればそのくらいの情報は素人でも簡単に手に入った。
    著者が調べないから知らなかっただけだ。

    被害者を責める(ように受け取れる)言葉が多いのも腹立たしい。
    「こうすればよかったのに」というばかりで、「なぜそうできないのか」という視点がない。
    ストーカー被害者にも類型がある、ストーカーに目を付けられやすいタイプの人がいる、それ自体は書いちゃいけない情報じゃない。
    でも書き方が悪い。
    「被害者にも落ち度がある」という風にしか読めない。

    自分の身を守れない人(被害にあいやすい人)の中にも、病気として考えるべきケースが多々ある。
    そういった人に向けて、自分を守っていいんだよと安心させつつ自衛の手段を伝えるなら有用な情報になりうるのに。
    いくら一番悪いのはストーカーだけど、と断っても、被害者を攻撃したい人や、自分を責めてしまう被害者には伝わらない。
    しかも実際の事件の被害者を実名で示して非難するなんて、もはや讒謗だし二次加害でしかない。

    でも悪い人じゃなさそうなんだ。
    ひたすら善意っぽい。
    だから困る。

    加害者の更生支援は必要なことだけど、被害者に同調する人にとって、加害者の言い分を聴くのは苦痛の大きな仕事だ。
    だから、こういう人が加害者を診るのは適材適所と言えなくもないかもしれない。
    加害者にとって有益な仕事ができるかは別として。
    この人にはとにかく被害者にかかわらないでほしい。
    ダメージを受けて弱っているときにこんなんに「治療」されたら立ち直れない。
    この人には二次加害の心理について研究してほしい。

    腹立ちが大きすぎて肝心の加害者の更生部分にはあまり目がいかなかった。
    というか更生支援の本としては使える情報があまりにも少ない。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/62013

  • 加害者治療について勉強になった。
    女性ストーカーの最も過激な行動で、目の前での焼身自殺とか




    精神科医になるにあたってカウンセリングの守秘義務とかってどうなっているのか、少女の告白の章で少し思った。
    外科医とかだったら先輩の手技とか見て学べそうだけど、精神科医の場合はどんな研修なんだろう?

  • 【恨みの中毒症状の治療なしに、被害者は減らせない】
    精神科医で、ストーカー加害者の診療にも携わる著者。

    近年、痛ましいストーカー殺人が続いている。
    殺人に至るまでに未然に防げなかったのか?という
    世間の声もある。
    ストーカー加害者は繰り返すので治療なしに、
    根本的な解決にはならないという。

    ストーカー病の分類、犯罪のパターンなど
    素人にもわかりやすく書かれている。

  • 筆者の自己紹介の部分が思いのほか、結構多かったですね。
    加害者を減らすという方法、私も重要だと思います。

  • なかなかかわった経歴の方が書いてる。ADHDまっしぐらという感じですな。

    それはさておき、ストーカーは最低最悪だ、という気持ちは私にもあるのだけど、
    この方のように、ストーカー側からアプローチする治療するというのは、とても興味深いし、とても必要なことだなと、
    ストーカーの見方がかわった。
    これは病気なんだと。

    誰もがストーカーになりうる、とはいえないかもしれんけど、
    私なんかは、一歩まちがえばあぶないわと思うほどにはなるほどと思う内容で、
    そのあたり、とても参考になったし、理解が深まった。

    被害をなくすために、加害者を治療する、ストーカーを治療するよりそう、
    こういう活動が、東京だけでなく全国に広がるらしい、今後に期待。

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著者プロフィール

【福井 裕輝】(ふくい ひろき)

性障害専門医療センター(SOMEC)代表理事・精神科医・医学博士(京都大学)。1999年京都大学医学部卒業。京都大学医学部附属病院精神科、京都医療少年院、国立精神・神経センター(国立精神・神経医療研究センター)などを経て、2010年にNPO法人性犯罪加害者の処遇制度を考える会、2011年に性障害専門医療センター(SOMEC)を設立。加害や再犯を防ぐため性嗜好障害などの治療に取り組み、犯罪者の精神鑑定も行う。一般社団法人男女問題解決支援センターではストーカー加害者、クレプトマニア医学研究所では窃盗症患者などの治療も行っている(ともに代表)。

「2022年 『子どもへの性暴力は防げる!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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