神さまたちの遊ぶ庭

著者 :
  • 光文社
4.16
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334978075

感想・レビュー・書評

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  • 「大雪山国立公園の中にトムラウシっていう集落があって、すごくよさそうなんだ」

    冒頭から『え〜、北海道で生活するの?』、『しかも、北海道の雄大さを感じたいから…』、私の世界では考えれない少々現実離れした冒頭に、『大丈夫なのか?』と、人ごとながら心配していたのに、『しかも帯広どころではない、そのトムラウシという、またとてつもなく大自然に囲まれた(と、言えば聞こえはいいが)集落にいこうなんて!』、『しかも、家族がいて、来年受験の受験生までもいるではないか!』と半ば開いた口がふさがらないと言うか、心配を通り越して、呆れてしまう始まりであった。

    本作は、北海道を愛する作者のご主人様の希望で、トムラウシで1年間山村留学を行った先生の日記のようなエッセイである。
    宮下家が金沢から北海道の中でもあえて、「カムイミンタラ(神さまたちの遊ぶ庭)」で称されるくらい雄大なトムラウシに引っ越す話が上がった新年の出来事をプロローグとして、トムラウシでの生活開始の4月から翌4月までの作者が感じた心の声が文章となっている微笑ましい、たまに(いや…かなり)爆笑する作品で、「羊と鋼の森」の作者のイメージが覆され、面白い先生として感激した。

    便利な福井を去り、TSUTAYAまで60キロ、最寄りのスーパーまで37キロ。夏には「ヌカカ」というコバエのような吸血鬼が出没。
    小中併置校で、学生15名、先生たちが11名。先生と子供の絆が強い。先生と子供だけでなく、村民と学校のつながりもつよく、盛りだくさんの行事は山村全体で参加。

    コミュニティーという言葉がこの村から発祥したのではないかと思うほど、住人の絆が強く、先生、親たちが協働で子供を育てていると感じる。そんな中で育つ子供たちは、素直で一生懸命。
    一人では何もできないところだからこそ、いつも家族がいて、村の人たちがいて、その絆の大切さが感じられた。

    また、作者のおおらかさにもびっくりした。これまで「羊と鋼の森」しか読んでいなかったので、どちらかというと、真面目で暗いイメージ。確かにピュアな感覚は持っていた。が、しかし、ここまでピュアだとは…そしておおらかであるとは…
    そして、何より読者へのその語りかけ方が、面白く、ツボってしまった。
    作者の意外な一面が感じるとともにこんな生活を経験して、こんな感じの方なのだと、親近感を感じてしまう。それ故にその他の作者の作品も少しずつ読みたくなる中毒性のある恐るべしエッセイであった。

  • 小中学生三人を連れて、福井から北海道のトムラウシに移り住んだ宮下家。
    そこは「神々の遊ぶ庭」と呼ばれる場所。
    小さなコミュニティの中で、家族それぞれが大切なことを感じた、春夏秋冬一年の記録。

    とても読みやすく、素敵な本でした。

  • まず、かわいい表紙にひとめぼれです♪

    それと宮下さんのキャラが~!!
    私が今まで読んだ作品から受けるイメージとは、だいぶ違っていて驚きでした。

    一年という期間限定で北海道のトムラウシという僻地にお引越しした宮下家。

    日々の暮らしの様子がほんとに楽しそうでね、明るくオチまでついていたけど、実際は言葉にできないつらいこともたくさんあったんだろうなぁ…(不整脈からパニック障害なんてね)

    それにしても、ユニークなお子様たちで、特に、”漆黒の翼”と”英国紳士”にはおもわず吹き出してしまった!

    ”北海道”あこがれの地、一度でいいから住んでみたいなぁ。

  • 福井在住の宮下さん一家が一年だけ暮らす事になった北海道の小さな集落トムラウシ。自然に囲まれ、スーパーなどなく、テレビも映らず、全員が顔見知りという陸の孤島での一年を綴ったエッセイ。
    三人のお子さん(中3、中1、小4)が中心となるが、なかなか体験しようにもできない体験ばかりで羨ましくなった。たった一年間だけれど、ものすごく貴重な体験で、一生お子さん達の糧となるだろう。また、お子さん達がそんな特殊な場所に急に放り込まれてもひねくれもせず、実際は悩みもあっただろうが元気に楽しんでいる様子がとても頼もしく微笑ましかった。勿論、元からトムラウシにいた人達も素敵な人ばかりで、そんな恵まれた環境での価値ある一年だったんだろう事がしっかり伝わってくる。トムラウシ…行ってみたいな~。

    ただ、やはり宮下さんのご主人の定職に就かないスタイル?みたいなものには、若干モヤモヤする。

  • 知らない土地へ子連れで移住って勇気いると思うのですが、地域の受け入れも素晴らしく、人とのつながりにほっこりします。

  • 北海道・トムラウシの一年、なんて素敵、羨ましすぎ。子育て、こんな選択もありだったのだな、と。
    僻地学校の教育、夢のようだ。机上の勉強以外の魅力的な学びが盛りだくさん。自然の中で生活に根差した知恵が教育に結び付いている。
    先生たちや地域の人々の子どもに向ける熱い眼差しがいい。

    家族で一緒に過ごす濃密な日々はあっという間に過ぎてしまうから、その一年が輝いてみえる。トムラウシの自然と人々の優しさに触れて、三人の子どもたちが成長していく姿が眩しい。
    それを伝える宮下奈都さんのユーモアのセンス、母としての懐の深さ、おおらかに惹かれた。

    知らない土地での新たな生活が期待に包まれていること、一つづつ馴染んでいくあの感じ、そこを去る時の気持ち…想い出と重なり胸が熱くなった。

  • しょっちゅうクスッと笑ってしまうので、
    外で読まない方がよいと思います。
    これ、本当にエッセイなんだよね⁉
    と思うくらい、宮下家も学校の先生もキャラが濃い(笑)
    次男君指定の仮名には笑ってしまいました。
    宮下さんのユーモアあふれる視点、語り口もいいですね。
    プリンターが壊れた話、担当者さんともに面白すぎます。

    宮下さんが、あるがまま受け止めているのが素晴らしいなと思いました。
    それが子どもたちの個性につながっているのでしょうね。
    長い人生の中の1年。
    細かいことは忘れていくのでしょうが、
    何事にも全力で取り組み楽しむ姿勢とか、
    得意なことを生かしていろいろ教えてくれた地域の人々のこととか、
    きっとずっと彼らの中で生きていくのではないかと思います。

    いいことばかりではなかったでしょうし、
    期間限定で行く是非もあるとは思いますが、
    とても貴重な体験をされたんだなーと、
    そのおすそ分けをいただいた気持ちです。

  • 2016 本屋大賞受賞の宮下奈都さんが、一家で大雪山の村トムラウシに山村留学したときの日記エッセイ。

    冬は極寒の超過疎の村、小学校も中学校も全校生徒合わせてヒトケタのような場所。
    山村留学は今の世界に捨てられないものがある人には出来ない、と書かれている。

    主にお子さんの学校が話題の中心。
    超少人数生。
    超ユニークなカリキュラム。
    型どおりのことは出来ないかもしれないが、確実に学ぶ力はつきそう。

    基本的に明るい話で構成されているが、ご主人は極端に人見知りなようだし、宮下さん自身もパニック障害を抱えているらしい。
    作家、という場所を選ばない仕事というプラス要因も手伝っての山村留学であろう。

    人の数が少なく、人間関係が濃密、それが良いとは限らないがプラスに出る部分ももちろんあろう。
    トムラウシの中学を出て下宿して遠くの高校に通うなっちゃんが歩けなくなってしまうエピソードが印象的。
    以下、引用

    "心ってわからない。なっちゃんは嘘をついていない。ほんとうに自分の心と身体のことがわからなかったんだろう。私にもわからない。息子や娘のことも、わからない部分がいっぱいあるのだと思う。わかるふりをしたり、わかったつもりになったりするよりいい。少なくとも、わからないことがある、とわかってよかった"

    全く同感

    • koshoujiさん
      初めまして。これ、いい本でしたね。
      その後、宮下さんのお子さんたちが都会に戻り、どういう子供たちになっているのか、とても興味があります。
      初めまして。これ、いい本でしたね。
      その後、宮下さんのお子さんたちが都会に戻り、どういう子供たちになっているのか、とても興味があります。
      2016/05/24
    • adagietteさん
      koshoujiさん、コメントありがとうございます。トムラウシ生活から、もう2年?3年?経つのでしょうか。
      そうですね、お子さまたちどう...
      koshoujiさん、コメントありがとうございます。トムラウシ生活から、もう2年?3年?経つのでしょうか。
      そうですね、お子さまたちどうされてるでしょうか。旦那さんも。
      皆さん、元気で幸せでいてほしいですね!
      2016/05/25
  • エッセイ。この方の小説はまだ読んだことがない。エッセイしか読んでいない。たぶんその形態の方が性に合っているのではと感じた。

  • 福井県から1年間だけ北海道のヘソにある僻村に移り住んだ作者一家の日常エッセイ、みんなが楽しんだ様子がいきいき綴られている。公開エッセイだったらしいので、書けない本音も片や有っただろうけど、小さな集落でのびのび暮らす子供たちの様子や付き合いや学校の中などが作家目線じゃなく母親目線 女性目線で楽しげに書かれていて興味深い。エッセイと言うより山村日記と言った体裁ですね。のちの「羊と鋼の....」にも繋っているのかしら?と思いながら読みました(^^)

    • ありんこさん
      あの「羊と鋼の森」の作者さんなんですね! やはり培っておられたのでしょうねぇ(^^) なんとなく感じます。
      あの「羊と鋼の森」の作者さんなんですね! やはり培っておられたのでしょうねぇ(^^) なんとなく感じます。
      2019/04/20
    • ありが亭めんべいさん
      わたしもそんな気がしながら読みました。やはり作家さんはいつもあれこれと目配りしてしまうのでしょうね!
      わたしもそんな気がしながら読みました。やはり作家さんはいつもあれこれと目配りしてしまうのでしょうね!
      2019/04/20
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著者プロフィール

1967年、福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年、第3子妊娠中に書いた初めての小説『静かな雨』が、文學界新人賞佳作に入選。07年、長編小説『スコーレNo.4』がロングセラーに。13年4月から1年間、北海道トムラウシに家族で移住し、その体験を『神さまたちの遊ぶ庭』に綴る。16年、『羊と鋼の森』が本屋大賞を受賞。ほかに『太陽のパスタ、豆のスープ』『誰かが足りない』『つぼみ』など。

「2018年 『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。   』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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