珈琲が呼ぶ

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334979768

感想・レビュー・書評

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  • 著者、片岡義男さん、どのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。

    ---引用開始

    片岡 義男(かたおか よしお、1939年3月20日 -)は、日本の小説家、エッセイスト、写真家、翻訳家、評論家である。

    ---引用終了

    で、現在、84歳になられるようです。


    本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    なぜ今まで片岡義男の書き下ろし珈琲エッセイ本がなかったのか?

    珈琲が呼ぶザ・ビートルズ四人のサイン。
    珈琲が呼ぶボブ・ディラン。
    珈琲が呼ぶ三軒茶屋。
    珈琲が呼ぶクェンティン・タランティーノ。
    珈琲が呼ぶ美空ひばり。
    珈琲が呼ぶジム・ジャーミッシュ。
    珈琲が呼ぶ黒澤明。
    珈琲が呼ぶ玉子サンド。
    珈琲が呼ぶ神保町の路地裏。
    珈琲が呼ぶオーティス・レディング。
    珈琲が呼ぶつげ義春。
    珈琲が呼ぶトム・ウェイツ。
    珈琲が呼ぶ京都・姉小路通。
    珈琲が呼ぶフィリップ・マーロウ。
    珈琲が呼ぶタヒチ。
    珈琲が呼ぶ高田渡。
    珈琲が呼ぶホットケーキ。
    珈琲が呼ぶ下北沢。
    珈琲が呼ぶクリント・イーストウッド。
    珈琲が呼ぶ有楽町・スバル街……

    一杯のコーヒーが呼ぶ意外な人物、映画、音楽、コミックス、場所が織りなす物語の数々。

    ---引用終了


    で、本作に登場する人物を数名調べてみました。

    クェンティン・タランティーノ(1963~)
    アメリカ合衆国の映画製作者

    ジム・ジャーミッシュ(1953~)
    アメリカ合衆国の映画監督、脚本家、俳優

    オーティス・レディング(1941~1967)
    アメリカ合衆国のシンガーソングライター

    クリント・イーストウッド(1930~)
    アメリカ合衆国出身の俳優、映画監督、映画プロデューサー、作曲家、元政治家。

  • コーヒーって、と考えさせられるエッセイ。
    お供はレコードだったり、一緒に歩いた街だったり。
    昭和の珈琲店や欧米の映画。
    ノスタルジックな空気感が心地良い。

  • 久しぶりの片岡義男。短編小説だけ読んできたので、エッセイは初めて。片岡さんの肉声っぽい文章、独特のリズム感が心地いい、片岡さんとこんなに生活圏が近かったのかと驚き、これもまた懐かし。。

    下北沢近くの住宅街での風景を書いた一編が好き。著者の家から喫茶店への道順書いてるだけなのに、なんだか読ませる、、音楽みたいな文章。地名だけで心おどる、私の大好きな思い出の街。ブログも!
    https://hana-87.jp/2018/12/22/coffeeyobu/

  •  2018年1月の上梓と、意外や、比較的近年の著作。でも、中身は、どっぷりと昭和だった。

    「僕が最初に喫茶店に入ったのは、1957年、17歳の頃、下北沢のマサコだったと思う。当時の下北沢には喫茶店がすでにたくさんあった。」

     そんな高度経済成長期の頃から、昭和の良き時代を過ごしてきた感が横溢する、なんとも贅沢な書下ろしエピソードが44篇、いや、あとがきまでもがエッセイのようで、45編の、片岡義男が語る、一杯のコーヒーをめぐる物語が展開する。

     同時に、昨今のサードウェイブ、スペシャルティコーヒーの楽しみ方の指南書も並行して読んでいたが、半世紀の間に喫茶店に求める機能や、コーヒーの楽しみ方もずいぶん変わったなと、その変遷をしみじみと噛みしめながら両書を読んだ。

    本書の「一杯のコーヒーが百円になるまで」という章で著者は、こう記す。

    「(喫茶店に入って)注文したのは常にコーヒーだった。しかしコーヒーそのものが目的ではなく、椅子にすわって一時間ほど人と話をして過ごすための、切符のようなものがコーヒーだった。」

     分かるなあ。自分もそんなためにコーヒーを飲んでいた頃の癖が抜けないからか、コーヒーはじつにチビチビとやるほうだ。テレワークしながら、読書しながら飲むコーヒーも、すっかり冷え切った最後のひと口がカップにいつまでも残っていて、よく奥さんから「まだ飲んでないの?!」と、あやうくカップを下げられそうになる。 切符は最後まで持ってなきゃ!笑

     注文の仕方も、「コーヒーをください」、あるいは「コーヒー」のひと言だけでも良かったものが、いつしか、
    “「ホットですか」とか「ホットでよろしいですか」などと訊き返されることが多くなっていった”
     その次は、「アメリカンで」という傍流が一時主流の勢いで広がったかと思うと、
    「ブレンド」か否かを確認されるようになり、
    “「ブレンドでよろしいですか。ホットですね」という訊き返しも多くなった。”
     と、その変遷を振り返る。
     喫茶店を原稿書きの書斎、編集者との打ち合わせ、待ち合わせの場所として長年使って来た著者ならではの感慨だろう。面白い。

     あとがきに、編集者との会話がある。

    「男にせよ女にせよ、ひとりの人がしみじみコーヒーを飲む場面は、そう言われば、ないですね」
    「しみじみは展開ではないから」
    と真面目な顔をして僕は言った。

     飲み方云々もあるが、ストレートの豆の種類をあれこれ選び、焙煎まで指定して愉しむ。昨今のスペシャルティコーヒーを小説の小道具に使ったんじゃ、片岡義男の物語も違ったものになってしまうのだろう。

     それにしても、彼が訪ね歩いた、神田神保町の喫茶店街や、通った京都の様子も、近年どんどん変わっていく。
    「ミロンガとラドリオを、ほんの数歩ではしごする」の章で語っている神保町の三省堂裏の界隈も、ランドマークの三省堂そのものが、老朽化による建て替えのため2022年に営業終了、移転となるニュースがつい先日(2021年9月)に報じられた。

    「いかにおわす京の都、つつがなきや京都タワーだから、こうして京都タワーに挨拶しないことには、僕の京都は始まらない。」

     と記す京都タワーも、改修解体の話は折に触れて浮上する。令和の世に、いつまで、あの姿をとどめていることか。

     であるが故に、一杯のコーヒーを軸に、どっぷりと昭和目線で眺めた世相は、ある意味とても貴重なのかもしれない。

  • コーヒーが登場する、あるいは関連する音楽、映画、小説などについてのエッセイ。
    以前にも書いたような気がするが、かつて片岡さんは、我が家の近所に住んでいたようだ。界隈の描写が実に正確なのが嬉しい。

  • ひとつのテーマでこんなに世界が広がるのが、凄い。
    日本茶版も読みたいな

  • 途中までだけど。上七軒の喫茶店・静香が紹介されている。

  • コーヒーを切り口とした、映画や音楽、漫画、小説、喫茶店にまつわるエッセイ集。

    まず驚いたのは、片岡さんは学生時代からライターの仕事を始めて今に至るということ。そんな時代には神保町界隈や都内の喫茶店をハシゴして執筆したという。

    今もあるその喫茶店たちは雰囲気があって素晴らしい。行ってみたい。都内に住む喫茶店好きな人々にはきっと有名なんだろうな。
    ちょっと足を伸ばせば歴史ある喫茶店に行けるなんていいなぁと思った。

    我が街には喫茶店が少ない。タリーズやスタバ、星乃珈琲店やコメダなんかはあるけれど、そういうカフェも良いけれど、この本に出てくるような喫茶店が近くにない。
    散歩圏内にふらっと寄ってみたくなる喫茶店がある街に住みたくなった。

    喫茶店で注文して飲む珈琲は『珈琲』だけど、例えばアメリカの広大な土地に佇むダイナーならカタカナで『コーヒー』って感じがする。インスタントも。

    インスタントコーヒーも、珈琲じゃなくて、『インスタントコーヒー』という飲み物だ、と割り切ればなるほどそれはそれで飲める。

    シャープでドライな文章は健在で、それこそ丁寧に淹れた珈琲を味わうように読んだ。

    片岡義雄さんは高校時代に出会ってハマり、かなり影響を受けた。
    いつの頃からか新刊を買うこともなくなってしまったのだが、今も変わらず書き続けていると知り、嬉しくなったし驚きもした。

    巻末の著者プロフィールを見ると1939年生まれ。ということは今年84歳になられる!
    シャープな文章と視点はますます磨かれているように感じた。

  • 不思議なエッセイ集だ。どこを切っても片岡義男の味がする。個性というか、彼の恐ろしいほどフレッシュでソリッドな美学の塊である。だが、その塊をこじ開けてみると中身はこれまたたじろいでしまうほど多彩というか多様さに満ちている。漫画を語り映画を語り、音楽にも造形の深いところを見せる。それらが「珈琲」という一本の軸で繋げられているので、読みながら熟達したDJのミックスを体感しているような贅沢な気持ちになる。悪く言えば片岡義男という人の節操のなさというか、多様に書けてしまう器用貧乏な資質を見せているとも言えて悩ましい

  • 珈琲を切り口にしたエッセイ集。喫茶店、音楽、映画などさまざまなストーリーが語られている。洒落た雰囲気で、片岡さんのファンにはたまらないエッセイなのだと思いますが、少し自分にはリズムが合わないというか、スッと入ってきませんでした。

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著者プロフィール

1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始める。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『日本語の外へ』『万年筆インク紙』『珈琲が呼ぶ』『窓の外を見てください』『いつも来る女の人』『言葉の人生』ほか多数の著書がある。

「2022年 『これでいくほかないのよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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