都市のドラマトゥルギー: 東京・盛り場の社会史

著者 :
  • 弘文堂
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  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784335550294

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  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/24398

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/0000064654

  • 河出文庫(2008)あり。

  • 「盛り場」という言葉のもつイメージは人によってかなり異なり、たとえば、銀座と新宿(東口)を同じく「盛り場」と呼ぶと、それは違うのではないかと感じる人は多いのではないかと思う。

    この本では、東京にあるそのような複数のタイプの盛り場を取り上げながら、それらの違いを社会学的に分析している。

    筆者が社会学の研究者であるだけに、そこに集う人たちがどのような属性の人たちで、どのように交感しながらその「場」を形成していったのかということが論述の中心である。

    しかし、筆者の視点はとても広く、再開発や交通機関の発達といった都市構造の変化、人口移動や産業の発達による社会の変化、江戸から続く庶民文化の跡など、さまざまな要素を織り交ぜながら論じているために、読んでいて非常に楽しく、かつ深みのある議論だった。

    とくに、「浅草-新宿」的なものと「銀座-渋谷」的なものの対比の中から、東京という都市が変容していく様を解き明かしている点は、印象深かった。

    出版されたのが1987年であるために、70年代の渋谷までの論述で止まっているが、その後も、臨海の開発、秋葉原等のサブカルチャーの抬頭、住宅の都心回帰や丸の内エリアの再開発などのさまざまな動きによって、また新たに筆者が述べているような出来事が起こってきているのだろう。

    ただ、個人的には上述の対比の中で「浅草ー新宿」的なものの存在感がやや低くなってきているような気がする。都市の活性化というと「銀座-渋谷」的な、トレンドを作り出す再開発のみに注目が集まりがちだが、「トレンド以前」の、もしくは決して「トレンド化」されないものがうごめく確かな都市空間が東京の中にあることも、この都市が持続的な生命を維持していくために必要なことなのではないかと感じた。

  • この本は建築学科にいる万人に読んで欲しいとは思わない本。とくに勉強はじめたばっかの建築関係の人が建築の本として読むのは少し難しいかも・・・。都市の盛り場に集う人がどのように都市という舞台の上で演出されて、そしてまた都市を演出していくのか。そのいわば都市(ハード)とそこに集う人々(ソフト)
    との相互の劇作術の変遷のありようを渋谷、新宿、浅草、銀座を舞台に鮮やかに上演している。単なる都市史や社会史を超えた傑作と言える。この本は社会学の本として出版されている本だが、著者の遍歴のせいか、かなり都市史的な視点・考察に優れた本である。なぜなら、今までの都市史研究的な個別的事象分析に加え、それを全体的・統一的な視点へと昇華させていく社会学的なアプローチをとっているからだ。逆に言えばまた、今までの社会学の様に抽象的な見解を述べるだけに終わらず、しっかりと個別的事象を都市史研究として耐えうるレベルまで分析するということを一冊の本の中でしっかりと両立しているのである。社会学という枠と都市史という枠を横断したという意味でも非常に画期的である試みと解釈した。都市史系の専攻に進む人は読むといいのかも。(たぶん加筆・修正します。ムズカシイ)

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著者プロフィール

吉見 俊哉(よしみ・しゅんや):1957年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。同大学副学長、大学総合教育研究センター長などを歴任。社会学、都市論、メディア論などを主な専門としつつ、日本におけるカルチュラル・スタディーズの発展で中心的な役割を果たす。著書に『都市のドラマトゥルギー』(河出文庫)、『大学とは何か』(岩波新書)、『知的創造の条件』(筑摩選書)、『五輪と戦後』(河出書房新社)、『東京裏返し』(集英社新書)、『東京復興ならず』(中公新書)ほか多数。

「2023年 『敗者としての東京』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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