木村敏著作集 (2) (木村敏著作集 第2巻)

  • 弘文堂 (2001年5月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (452ページ) / ISBN・EAN: 9784335610226

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みんなの感想まとめ

自己と他者の関係を深く考察するこの作品は、時間の構造を通じて精神疾患の理解を試みています。著者は、自己の根底にある時間の「今はもう……でない」と「今はまだ……でない」という二方向性を探求し、過去と未来...

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  • 『時間と自己』(1982年、中公新書)のほか、『自己・あいだ・時間』(1981年、弘文堂)や『分裂病と他者』(1990年、弘文堂)などに収録された論考12編を収めています。「自己」の根源にある時間構造を解明することによって、分裂病(統合失調症)、鬱病、癲癇および躁病という精神疾患の三つの類型を性格づける試みがなされています。

    『時間と自己』において、著者はまず〈もの〉と〈こと〉を区別することから議論を開始します。〈もの〉として対象化される以前の〈こと〉は、排除しあうことなくわれわれの意識のなかでかさなりあっていると著者はいいます。つづいて著者は、時間の構造について考察をおこないベルクソンやハイデガーの時間論を参照しながら、時間は「……から……へ」という拡がりをもつ「あいだ」として理解されるといいます。そして、われわれの自己は、「今はもう……でない」および「今はまだ……でない」の両方向へと開かれています。こうした過去と未来の両方向へと向かってみずからを開く「あいだ」が、われわれの自己の根底にある時間の構造だという。こうした時間構造の理解にもとづいて、著者は分裂病、うつ病、癲癇を、「アンテ・フェストゥム」「ポスト・フェストゥム」「イントラ・フェストゥム」ということばで表現しています。

    『自己・あいだ・時間』と『分裂病と他者』では、ハイデガーや西田幾多郎などの哲学者の思想を手がかりに、上述の議論を理論的に深化させています。著者は、「自己とは、ノエシス的な差異化のいとなみが、それ自身との差異の相関者としてのノエマ的客体を産出し、逆にこのノエマ的客体を媒介としてそれ自身をノエシス的自己として自己限定するという、差異の動的構造のことである」と定義します。さらに著者は、このような自己差異化の動的な働きが、自己と他者の根源的な関係をつくり出していると論じています。

    ハイデガーのばあいには、形而上学の解体を通して存在論的差異の解明がなされており、デリダのばあいにも差延は形而上学の脱構築の実践と結びついているのに対し、著者における自己差異化の原理としての「あいだ=いま」は、臨床経験に裏打ちされたものとして提出されています。ただしそのために、あくまで精神病の理解のための理論的仮説という位置づけを出るものではないといわざるをえないように思います。

  • 『自己・あいだ・時間』まえがき
    分裂病の時間論―非分裂病性妄想病との対比において
    時間と自己・差異と同一性―分裂病論の基礎づけのために
    思春期病理における自己と身体
    存在論的差異と精神病
    内因性精神病の人間学的理解―「内因性」の概念をめぐって
    『時間と自己』
    『分裂病と他者』序
    あいだと時間の病理としての分裂病
    他者の主体性の問題
    自己と他者
    離人症における他者
    自己の病理と「絶対の他」
    現象学的精神病理学と“主体の死”―内因の概念をめぐって

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著者プロフィール

木村 敏(きむら・びん):1931-2021年、朝鮮慶尚南道生まれ。1955年、京都大学医学部卒業。京都大学名誉教授。専攻は精神病理学。河合文化教育研究所所長、日本精神病理学会理事長などを歴任。著書に『自覚の精神病理』(紀伊國屋書店)、『異常の構造』(講談社学術文庫)、『時間と自己』(中公新書)、『あいだ』『自己・あいだ・時間』『分裂病と他者』『自分ということ』(ちくま学芸文庫)、『関係としての自己』(みすず書房)、『木村敏著作集』全8巻(弘文堂)など。ヴァイツゼッカー『パトゾフィー』など翻訳書多数。1981年に第3回シーボルト賞、1985年に第1回エグネール賞、2003年に第15回和辻哲郎文化賞受賞。

「2025年 『新編 人と人との間 精神病理学的日本論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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