表と裏

著者 :
  • 弘文堂
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本棚登録 : 118
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784335650550

感想・レビュー・書評

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  •  建前と本音の区別がわからぬまま大きくなった者の場合は、ちょっとした挫折でも精神的に参ってしまうので、まことに扱いにくいと云わねばならぬ。実はわれわれ精神科医のお世話する病人の中にはこの種の人々が数多く含まれているのである。(p.73)

     アイデンティティというのは簡単に云えば自分を自分として意識することだが、この自分の意識が他者との結びつきの上に成立していることを示唆するところに意義がある。例えばリアの場合、娘との関係が昔日のごとくでないことを知らされた瞬間、自分がもはや自分ではないと感じるところが、この点を最もよく示しているのである。(p.85)

     時間にゆとりがあるというのは、暇を作り出そうと思えば作り出せるということであり、その点に心のあり方が関係しているのである。すなわちそれは云うなれば無用の用であり、心の内的自由度をあらわす。例えば何かある仕事をしていて心はたしかにそれに向けられているが、しかし決してそのとりことはなっていないことがゆとりである。であるから必要とあらばいつでもそこから心を引き離せる。したがってそれは遊びの精神に近いと云ってよかろう。もちろん遊びほうけるのがゆとりではない。遊びと真面目の間に、あるいは自由と制限の間に、ある絶妙なバランスを保っておれるのがゆとりであるということができるのである。(pp.134-135)

  • (1985.05.24読了)(1985.05.17購入)

    ☆関連図書(既読)
    「タテ社会の人間関係」中根千枝著、講談社現代新書、1967.02.16
    「適応の条件」中根千枝著、講談社現代新書、1972.11.20
    「「甘え」の構造」土居健郎著、弘文堂、1971.02.25
    「モラトリアム人間の時代」小此木啓吾著、中公文庫、1981.11.10

  • 『「甘え」の構造』(弘文堂)の著者が、「表」と「裏」、「内」と「外」、「本音」と「建前」といったテーマに取り組んだ本です。

    著者は、「建前」が正義で「本音」が悪であるとか、「建前」は見せかけで「本音」が真実であるといったこと主張するのではなく、両者が切り離すことのできない人間心理の双面を構成していると論じています。

    ただ、あまりくわしい分析が進められることはなく、著者の印象に基づいた比較的気楽なエッセイのようにも感じられました。

  • オモテとウラ、本音と建前というあいまいな、けれども日本人の日常に深く浸透している概念を考察し、そこから個人、社会の成り立ちについて発展させていきます。本音と建前、そして秘密が人の社会的成長、そして社会生活に不可欠というくだりには納得させられます。

  • 甘えの構造をまだ読んでいないのにこちらを先に読んだ。

  • 第三部「秘密の意義」が面白かった。良寛、漱石、ソール・ベローの講演などの出典が興味深い。

  • 「甘え」理論に続いて、日本人ならではの「本音と建前」を考察し普遍概念として捉えようとした。心の「表と裏」の付則不離の関係、「ゆとり」「秘密」などの解釈は出色。

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