「甘え」の構造 [新装版]

著者 :
  • 弘文堂
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本棚登録 : 221
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784335651069

感想・レビュー・書評

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  • 単語一つをここまで掘り下げて考えたことはなかった。俺はまだまだ甘いな。
    多方面から光を当てる勉強になった。

  • 医学を学んだ著書が書いている点が面白い。出版されてから時は大分経つが、全く色褪せていない内容。それだけ日本人の『甘え』に変化が無いのだろうか。『甘え』という考え方から、鋭く日本人感を記述している。外国人には分からない(理解されない)この『甘え』という感覚は読み進めていて実に面白い。納得するし、だからこそ日本人たらしめているというのも然り。

  • 新装版じゃない古いのを持ってるんですけど…まあいいや。
    ともかく難しいことこの上ない本。土居先生が天才ってことはよくわかる。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/490105

  • おすすめ資料 第29回日本人の心性を解く(2007.6.15)
     
    1971年出版され、幾度か加筆されつつ、欧米・アジアでも翻訳書の出たロングセラーです。
    例示として扱われている社会事象は当時のものですが、作者の主張は現在も生きています。

    作者は「甘え」を日本人の特性として捉えますがネガティブな面ばかりに目を向けているわけではありません。
    アメリカでは客人を招くとき、ドリンクの種類・その量まで相手に選択の意思確認をします。
    一方、日本では最初から客人の好みに合いそうなものを用意します。
    それはホストに対する客人の甘えにも通じますが、そういった習慣は日本人の、相手の心中を察する想像力を発達させ、和の文化を成熟させてきました。
    アメリカ流のやり方も彼らにとってはそれが丁重なもてなしです。
    それは文化の違いです。

    反面、戦後の甘えのゆき過ぎは個人の確立を妨げ、甘えが許される身内には依存し、外の世界に対しては臆病・もしくは冷淡になるという歪みももたらしました。

    日本人の多くは知らず知らずのうちに「甘え」に根ざした行動をとっています。
    依存はわかりやすい例ですが、一方的に相手に期待してそれが思い通りにならなかったとき、すねたり、逆に相手に取り入ろうとするのも日本人特有の行動です。
    作者はそれは日本の外交姿勢にも現れており、同じアジアでも中国にはそれがないと分析しています。

    日本人という自分を深い部分で客観的に顧みる一助になる資料です。

  • 日本文化か日本人のパーソナリティに関する本。「甘え」という単語から日本を見た一冊。論理の展開が読みとれないところもあったが(おそらく「甘え」という単語に対する私自身のイメージがあるからだと思うが)、社会問題を読み説く一つの視点を享受できたと思う。

  • 甘えって、日本人独特の感覚だったんだ!と驚いた覚えあり。こういう本も面白いんだと気づかせてくれた一冊。

  • 「専門的な部分を省いて」という文句が多いけれど、むしろ省かないでほしかった。この人は、わかりやすくかける分、専門を用語を難解に使いまわすとかはできないタイプだろうし。これは、河合隼雄も同じタイプなんだろうけれど。

    ちなみに、日本人論が本著では展開されているが、これは精神分析論でもあるし、哲学も混入してくる。この人、意外と哲学に詳しいそれほど踏み込んではこないけれどね。ただ、聞きかじり、読みかじり程度の知識が羅列してあるだけなのかもしれないが。とりあえず、批判から入ると、本著では、いまいち方向性が見えてこないのである。ルーズベネディクトをたとえば著者は、「西洋=罪>日本=恥」といった偏見が混じっているとして批判しているわけである。むしろ、著者は西洋人は恥を抹消しようと努めているだけであり、彼らも恥は持っているはずであり、恥こそがより根源的ではないか?とすら述べている。まあ、罪と恥とが相重なる概念なのは間違いない。ともかく、こういった議論を展開したかと思わせ気や、日本人は「甘え」に頼りすぎてきた分、西洋人に比べて、「大人になりきれない」といった批判も浴びせてくるわけであり、著者が持っていきたい終着点がいまいち見えてこないのである。確かに、「甘え」といった概念が武器になることは間違いない。われわれは誰かに甘えずにはいられないし、甘えられないということはそれだけ生きにくい、ということに「なってしまう」わけである。この、「なってしまう」がポイントである。甘えの発祥は、それは乳幼児期だろう。そして、甘えるためには自他が分離する必要がある。母子一体ならば甘える必要がないからである、というところから、著者は母子一体(三月微笑)→分離(八月不安=人見知り)へと変化するあたりから、甘えが生まれると推測しており、甘えとはこの分離不安を緩和させるために必要なものであると考えている。


    で、著者はこの「甘え」なる言葉は外国にはないと考え、他方でしかし、言葉がないだけで現象としては生じていると踏んでいる。で、外国ではこれが同性愛的感情=友情にひそんでいるのではないか?と予測するのである。まあ、これの真偽はともかく、外国人だって間違いなく甘えはあるし、そもそも、ドメスティックバイオレンスという行為自体が究極の「甘え」であろうから、暴力があるということは甘えがあるとも言えてしまうだろう。といった具合だろうか?ちなみに甘えの正体とは、表出する行為から見て取れる「感情」であり、それは、他者へ甘える=接近するという「欲求」であり、原初的に人間に刻み込まれている「本能」なのであろう。ただ、この人甘えにこだわりすぎている、というか、頼りすぎている気はする。何もかもを甘えから分析しきれるかというと、それほど甘えは万能ではないだろう。また、著者は「甘え」という母性的なもののみでは社会はうまく回らないものであり、それゆえに、「父性」が必要となるのだが、父性は「殺されうる」定めなのだと著者は結論付ける。だが、フロイトがエディプス神話からエディプスコンプレックスを見つけているのだけれども実はその行為自体が投影であるといったところなんかはかなり鋭い。ともかくフロイトはエディプスコンプレックスにとらわれ父殺しにとらわれたわけだけれども、その後自分が「父」となり、そこから離反したユングらによって、彼の理論は「殺された」わけである。ちなみに、本著への最大の批判点は、「甘えという日本人的視点から、日本人論を展開させているはずが、著者の視点がかなり西洋史観に基づいてしまっている」といったあたりであろうか?

  •  実は「甘え」という語は、日本独特の語彙である。甘えという受身的愛を示す日常語が存することが日本の社会と文化の指標であると著者はいう。無論現代日本の特質や、美点、問題点、その他病理、諸事万般にわたる全てが甘えに収斂されるわけでもあるまい。しかし、甘えの構造によって論理的説明可能な部分が多々あることもまた厳然たる事実だ。なるほどなとなんども首肯せざるを得なかった。土居先生の知見と卓見には舌を巻いた。

     甘えの心理的観点から洋の東西を問わず現代青年にみられる現象を分析した「戦う現代青年の心理」を以下引用する。

    「・・・・・・以上現代青年が桃太郎のごとく鬼征伐に従事せねばならぬ心理的必然性について説いてきたが、ただ彼らは一点についてだけ桃太郎と異なっている。桃太郎なら鬼征伐をして親にも喜ばれ、それこそめでたしめでたしで話は終わったのであるが、現代青年の場合はそうはいかない。もっとも大人たちの間には、自分たちのやろうとしてやれなかったことを青年がやってくれるといって、ひそかに声援を送るものもいる。しかし事態はそんなロマンチックな夢を許すほど容易ではない。というのは鬼征伐に懸命になっている青年が自らも鬼に変わる危険が現に存するからである。
     大体青年自らの力を過信するに至れば、彼らが攻撃している勢力者たちともはや区別がつかなくなるではないか。彼らが真に必要とするものは、それによって自らの限界を知ることができる力試しである。しかし今日の社会で誰がその機会を青年に与えられるのだろうか。誰が彼らにとって父親となる、権威と秩序の意味を新たに説くことができるのであろうか。見渡したところ、大学教授にも、政治家にも、思想家にも、宗教家にもいない。この点で現代はまたに絶望的である。事実は一握りの青年たちだけがアナーキーなのではなく、時代全体の精神がアーナキーなのである。であるとすると現代の青年はいつ果てるともわからぬ力試しに、まだ当分は明け暮れねばならぬのではなかろうか。」

    四半世紀以上前に書かれたものであるにもかかわらず、今なおこの文章は示唆に富んでおり、プレグナントだ。

  • 社会学の授業での参考図書として手に取りました。
    結構なベストセラーになった一冊のようです。
    心理学の視点からみた日本人、そして人間関係の考察が綴られており、興味深い。
    「甘え」というたった一語のテーマからこれほどひろがりをもった議論ができるのかと勉強になりました。
    言葉の単位での文化の考察といった面では、国語の教職の授業をとっている私にもとても興味深く感じられるところもあり、また以前読んだ『「世間体」の構造』と重なる部分もあって、社会学に一歩近づけたかなと思えるような部分もありました。内容的には『「世間体~のほうが社会学寄りな印象。
    また夏目漱石の『こころ』の解釈や、日本人と外国人の同性愛感の違いなんかについての言及も面白かったです。
    自分自身の価値観と結びつけて読んでいけるので、ちょっと小難しいかな、と思っていましたがそうでもなく、読みやすかったです。
    たくさん、知りたいこと、学びたいことを増やしてくれた一冊でした。

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