- Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
- / ISBN・EAN: 9784335651298
作品紹介・あらすじ
親しい二者関係を基盤とする「甘え」の心性が失われ、無責任な「甘やかし」と「甘ったれ」が蔓延しています。変質しつつある日本社会の根底に横たわる危機を分析した書下し論考"「甘え」今昔"を加えた新増補版。
感想・レビュー・書評
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この本は、ユーチューブのアバタローさんが紹介している本だったので読んでみました。
この本には、「甘え」という言葉は、日本にはあるが欧米にはない!!と書かれており、「え!そうなのか!」となり、とても興味を持って読み進めることが出来ました。
「甘え」という言葉のから、その意味、海外との比較、日本の歴史、社会、親子関係等などを紐解いていく本書は、とても面白く、さすが名著として読まれている本だと感心しました。
ぜひぜひ、読んでみてください。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「タテ社会の人間関係」(中根千絵)、「菊と刀」(ルース・ベネディクト)などと並んで、日本人論の代表作ともいえる本書ですが、切り口はかなりユニークで、「甘える」という概念から日本人を議論しています。甘えるとは他者への依存心でありますが、これはつきつめると他者との同一感、一体感を得たいという欲求でもあります。著者によれば人類、果ては犬までも甘える行為は見られるものの、「甘える」というような言葉は他の言語ではほとんど見られないとのこと(英語でも甘やかすという意味でのindulgeなどありますが、自分が能動的に甘える、という言葉はない)。つまり日本人は人間の本能的な行為をやまと言葉で発明したわけですが、甘えると関係した語彙が日本語には豊富であることを示します。
ほとんどの人がそうだと思いますが、「甘える」という言葉自体は小さいころから知っていて(〇〇ちゃんは甘えん坊ですね、と親戚や知り合いの大人から言われる)、それが何を意味しているかはわかっているものの、著者ほど深く考える人はいないでしょう。私自身も人生で初めて「甘えるとは何か」というお題を深く考えさせられた気がします。
甘えることは依存欲求ではありますが、より根源的には同一化欲求である、という説明は腹落ちしました。すると日本には「同調圧力」という言葉がありますが、実はその圧力は外部からというより自分自身の内部から生まれているのではないかとも感じました。またコロナウイルスによってサラリーマンの多くが強制的にテレワークをしましたが、テレワークに反発する人も多かったと聞きます。これなどは日本人の「甘え」、つまりテレワークでは組織との一体感、同一感が失われるとする危機感のあらわれと見ることも可能かと思いました。
本書では日本だけでなく西洋(欧米)との対比もなされていますが、私が最も興味深かったのは、なぜ欧米人は個人主義が進んだのか、という点についての最後の著者の主張です。欧米でも中世までは単一組織にしか所属することが許されていなかったが、近代化の過程で複数の集団に所属することができるようになった。これこそが自己意識、あるいは個人主義の強まりにつながっているのであって、確かに1つの組織への忠誠を誓わされ、転職や副業も欧米ほどは容易でない典型的な日本企業に働いている人の場合は、「その組織から放逐されないこと(同一化を維持すること)」が最大の関心事になるのでしょう。つまり裏返せば、日本でも転職や副業/兼業が欧米並みに当たり前になったとき、「甘え」は徐々に見られなくなる、ということなのかもしれません。本書は様々な思考のきっかけを与えてくれる良書でした。 -
第一章「甘え」の着想で著者が渡米した際に体験したカルチャーショックのエピソードが面白い。これは他の著者の本でも紹介されていて既に読んだ覚えのあるエピソードだが、改めて本家本元で読むとまた面白い。
「甘え」は親しい二者関係を基盤とする。
「甘やかし」と「甘ったれ」は無責任。
『要するに人間は誰しも独りでは生きられない。本来の意味で甘える相手が必要なのだ。自分が守られていると感じることができなければ、ただの「甘やかし」や「甘ったれ」だけでは、満足に生きられない。』
甘えの心理を示す日本語として「甘える」だけではなく、多数の言葉が甘えを表現している。たとえば「すねる」「ひがむ」「ひねくれる」「うらむ」はいずれも甘えられない心理に関係している。「すねる」のは素直に甘えられないからそうなるのであるが、しかしすねながら甘えているともいえる。「ふてくされる」「やけくそになる」というのは「すねる」結果起きる現象だし、甘えないように見えて根本的な心の態度はやはり「甘え」であるといえる。
また、精神分裂病で異常な自我意識を持つ人々について
『…甘え欲求は潜在しているが、しかし甘えによる他者との交流が過去に全く経験されていないと思われる場合である。彼らには「自分がある」という意識が発生する土壌がもともと存しなかったのであり…』と考察している。これなどは精神の病を来している人の歪みの根本をよく表しているように思う。
『甘えは、人間交流を円滑にするため、欠くべからざるものである』
人間的基盤をつくる上で、甘えの経験が必要なのだということがよくわかる。
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疲れた
けれどなんで日本人がこんなにも自己否定に向かうのか。そういうことがこの本からわかった。 -
ロングセラーだけど、読んでもよくわからないので読み返したい。
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自分自身の体験として人から言われた「甘え」に関するいくつかの台詞がずっと頭にあって、手に取った。
なぜこれがベストセラーになったのか、理解できない。
「第3章「甘え」の論理」において、「国民性はその言語に反映しているはずだという考えを前提とするものであるが、しかし私はこの点について専門家の意見を知りたいと思い、たまたま言語学者サピアの著書を繙いたことがある。するとそこにはこのような前提がはっきりと否定されているので、私はちょっとばかしがっかりした。しかし私はそれが専門家の意見であれ、それに素直にしたがうには、すでにあまりにも甘え概念の魅力にとりつかれていた。」と中盤で述べられていて、一気に冷めてしまった。仮説に基づく検証をして、違う結果が得られたのであれば、再度違う仮説を立てる、ということが論理的な態度であると思う。
日本ばかりでないという前置きも多々あるが、そもそも「甘え」という言葉を軸にした日本人論という体裁なので、「日本人」自意識の発露の連続のように感じられて、うんざりした。
ところどころ面白いと思える箇所もあったが、それらを拾い直してみると、大体他著者の引用文だったので、私には必要な本ではない。 -
甘えという切り口で日本人の精神構造を論じた本。遠慮も甘えの一種だったんだ!
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この本が悪いのではなく、私がこの分野の内容に全く関心がないとこがわかった。
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昭和に書かれた本だが、現代でも十分あてはまる。読んだ感想、甘えとは子供のものとしては自然。大人のものとしてはややいびつ。日本人は甘えの性質を強く持ちがちらしい。集団では強く、個では弱い。少しずつ、これが時代とともに薄れていると思いたい。もっともっと、日本人は強く幸せになってほしいと思った。
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すごく抽象的でフワフワしていることを言っているように感じるのは、それこそ「甘え」という概念が日本人にとってあまりに当たり前すぎて、言語化する対象となりにくいからではないか。
この本の言っていることは、山本七平の「空気の研究」ととてもよく似ている。四半世紀以上も前の本なのに、今の世の中のことを語っているのかと思われる点も同じだ。
日本を海外から見るなどして、相対化した視点で見ている人にはよく共感されると思う。
「空気の研究」は日本と欧米社会の違いの源泉をキリスト教に見ているが、本書はそこまで至っていない。日本人がそこまで「甘え」に固執し社会的に許容している理由は何なのか?と問われても、筆者に明確な答えはないと思われる。そこだけが残念だった。 -
メルカリ売却
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だいぶ前に買ったが積んでいた一冊。
日本を持ち上げて欧米を下げるような記述がいくつか見られ、自分にはあまり合わなかった。書かれた当時は日本人が日本人を嘆いている風潮が強かったのかもしれないが。
あと父権の不在・復活希望(?)論も合わなかった。
また今後呼んだらなにか印象が違ってくるかもしれないので、取っておこうとは思う。 -
面白かったです。
海外に住んでいたときに、その国と日本の文化との違いに悩むことがあり、モヤモヤすることがありました。
この本はモヤモヤを言語化してくれているように感じました。 -
2020年1月24日読了。相手に決断を委ねつつ期待して圧力をかける「甘え」という人間関係について、日本で顕著に認識されるそれが米国社会では容易に言語化できないこと、とはいえ精神病の治療現場の中ではこの概念が重要になること、また母子間では文化を問わず普遍的に見られること、などを論じて解説していく本。古典的な書籍だが、非常にスリリングに興味深く読めた。「甘え」のような、日本人なら誰でもそうと分かる概念や状態だが、英語で説明することは難しい、というものが度々紹介され、自分の認識している世界とは一つではなくある角度から・バイアスを伴って見ている世界の一部でしか無いのだな、ということを改めて思い起こさされる。これだから違う世界に触れられる読書は面白い…。「甘え」というと悪いものと捉えがちだが、それを観察し、その意味を考察することが大事か。
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「甘ったれ」ではなく正しく「甘え」られるような、本物の愛が内在化された存在になるためにはどうすればいいんだろうね。
家族を出発点として周囲に発露していくべきものが、家族の形の変化によって成り立たなくなっているということなのか。
大人と子どもの境目がなくなってるって、この本が書かれた昭和の時代から言われていて、どんどんエスカレートしている現代が恐ろしく感じた。 -
高橋俊介さんのセミナーで1年前に課題図書として出されたものを今頃読んだ。
著者の土居さんは精神医学の権威だったようだ。
日本人の特性、日本語にはあっても外国にない概念など、興味深かった。
たとえば、「気」という言葉は非常に多くの意味をもつのにもかかわらず、「気」で表現できてしまうのはあらためてすごいことだと思う。英訳には苦労するかもしれない。
「甘え」は「恥」の文化にも繋がる部分なので、いいか悪いかは別として、やはり他の国の人とは異なることを再認識した。