本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784335651861
作品紹介・あらすじ
精神医学が読み解く選別と排除の思想史
社会から排除される〈危険な人間〉はどのように創り出されたのか。19世紀末から20世紀初頭、科学と法の交錯から保安処分と優生学を軸とする〈危険な人間〉をめぐる議論が熱を帯びた。排除のための選別は科学の手に委ねられ、多くの一流の学者が犯罪対策と優生政策に関わり、多様な類型が考案された。生まれつきの犯罪者、変質者、社会敵対者、改善不能者、悪質遺伝者、お荷物人間、性癖犯罪者、そしてサイコパス。21世紀の今、装いを新たに〈危険な人間〉の言説が蘇ろうとしていないだろうか。
みんなの感想まとめ
社会から排除される「危険な人間」の概念を、精神医学や優生学の視点から深く掘り下げた内容が展開されている。19世紀末から20世紀初頭にかけての科学と法の交錯を背景に、犯罪者や社会敵対者の定義がどのように...
感想・レビュー・書評
-
犯罪者の精神医学的な話かと思っていたら、優生学など多岐に渡った。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
精神医学からみた犯罪学(法制史)と言える。
元々ロンブローゾの言説「生まれつきの犯罪者」を知った時からロンブローゾに興味があったため手に取ったが、本書は私の想定を超えて非常に興味深く、面白く、為になり、そして考えさせられるものだった。
ロンブローゾが科学史家ムキエリから継承した「生まれつきの犯罪者」は「犯罪者は人体の特徴から分かる」という説であり、現在は明らかに否定されている。しかしこの説はその後の犯罪学を語る上で非常に重要だった。
本書では、その後進化論(進化論というとダーウィンと日本人は思いがちだが、実は当時の主流な考え方だったらしい)とキリスト教的観念の整合性、植民地として他国へと欧州人の活動範囲が広がった経緯、更には産業革命による精神疾患やその他社会問題の醸成、等々複数の要因が絡み合い、やがて社会的秩序を重視した優生学へと繋がっていく。その結果、第1次大戦後の経済的貧困に喘ぐドイツにてナチスが民主主義により選ばれ、ユダヤ人の虐殺へと繋がる。
特筆すべきは、優生思想や断種(精神疾患等を持つ人に対し施される不妊手術)はナチス特有のものではなかったという点である。
更に本書では、現代における死刑制度や保安処分にも焦点を当てている。
これらの内容を読み吟味することで、実は現在でも内容は違うがナチス政権下と実は同じような状況に陥りかねない場面が多々みられるのではないか、と思える。
歴史的な転換点を精神医学、犯罪学、歴史学から網羅的に解説した、他に類をみない(もしあったとしても非常に少ないだろう)本であり、明治期の書籍から引用していること等もあり理解に時間がかかるかもしれないが、必読の書ではないかと思う。
著者プロフィール
中谷陽二の作品
本棚登録 :
感想 :
