めくるめく世界 (文学の冒険シリーズ)

制作 : 鼓 直  杉山 晃 
  • 国書刊行会
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本棚登録 : 140
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336024664

感想・レビュー・書評

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  • もはやファンタジー(誰もただの伝記だなんて思っちゃいないだろうけど)。というより、夢か。
    小難しく見えるけど、実は勢いがあって楽しい話だと思う。

  • 頭にモノが当たって人死にが出すぎる世界を不死身の修道士が駆け巡る、バカ男子系ロードノベル。空を飛んだり鉄球と化して町を蹂躙したり、少年マンガのようなダイレクトなおもしろエピソードに溢れている。

    少年っぽいのは物語だけではなくて、主人公のセルバンドは若者を煮詰めてエキスにしたような人物だ。突っ走り、振り返らず、「俺は間違ってない」で人生を貫く。その一方で、人との距離の縮め方は全然知らなくて、むしろ修道士であることを口実に逃げ回っているよう。彼の世界が荒々しく猛スピードで過ぎていくものなのは、その心の反映でもあるようで、もう若くない読者としては、セルバンド/セルバンドに自分を重ねるアレナスにいじらしさを感じずにはいられなかった。

    あんまり人の口にはのぼらないけれど、居場所を見つけるって簡単じゃない。バカ男子系なのにそんなことを思わされる本だった。

  • キューバの作家アレナスの幻想的文学。

    ★★★
    メキシコの神父セルバンド師は、グアダルーペの聖女について異説を唱えたことから異端として告発される。スペイン監獄からの体中に鎖を巻いたままの脱走劇や、フランス王宮の大袈裟な語り口、両性具有のオーランドーとの交流、最期は独立戦争に加わり命を落としたセルバンド師の生涯の、そして死後も続く放浪を饒舌でユーモラスに語る。
    物語は同時に三つの目線から語られる。三人称による俯瞰的目線、一人称・二人称による「こうだったらよかったのに」という幻想的な描写。現実とホラ的に大袈裟な話が交じり合った奥行き深い語り口となっている。
    ★★★

    アレナスはこの後カストロによる革命に参加するが幻滅し批判、反体制と同性愛で国内を逃げ回り、収容所に入れられ、アメリカに亡命する。この体験を書いた「夜になる前に」では、「小説で描いた放浪生活を自分が辿ることになるとは…」と嘆いている。作者のその後を知って読むとまた感慨深い。

  • 奇想天外、めくるめきすぎてひたすら作者のイマジネーションを追いかけ肩で息しながら読了。どうしてもセルバンドの生涯にアレナスの魂を重ね合わせてしまう。それ故にかなり感慨深いものがあった。邪道かもしれないけど、作者の背景を知っているか否かで読み応えが変わってくる。メタファーを読み解く鍵を持っているか否か。改めてアレナスの唯一の武器は書くことだったと、全身全霊一滴も零さず(持ち前のユーモアも含めて)自身を投影させてくる。貪欲な自由への希求にゴールはない。果てなく交錯し広がるイマジネーションの海に溺れるしかない。

  • 実在したメキシコの修道士、セルバンド師の文献をもとにした冒険伝記小説。

    「私」「彼」「あなた」と3つの人称を使い分ける叙述トリックが特徴で、それぞれ事実と、推測と、願望をあらわしているそう。こんな文学的なテクニックを駆使していると聞くと、さぞかし難解だろうと身構えてしまいそうですが、さにあらず。文体なんてどうでもよくなるほど、パワフルで豪快でユーモアたっぷりのほら話にたちまち引き込まれてしまいます。

    ところは独立戦争前のメキシコ。セルバンドは説教中にカトリック信仰の欺瞞をあばくかの問題発言をしたかどで捕らえられ、スペインの牢獄へと送られます。そこからが脱獄と逮捕を繰り返す、波乱の人生のはじまり。

    それぞれの牢獄の描写がまあ面白いの面白くないの。部屋の天井近くまで海水で満たされているとか、ネズミや南京虫の大群が棲んでいるとか、まあありえない誇張表現なんだけれど、とにかく最低の環境だと言いたいことはよくわかります。しかもそこでの身の処し方がまた常識はずれで、ネズミと話して仲良くなって乗り切っていたりする。自らもキューバで思想犯として監視されていたレイナルド・アレナスならではの思いが多分に込められていることでしょう。

    セルバンドはスペイン、フランス、イタリア、ポルトガル、イギリス、アメリカと世界中を逃亡し旅します。彼は歴史上の有名人と知り合っては、不思議とぜいたくな暮らしも経験したりする。通り過ぎる国ぐにに対する辛辣な寸評も読みどころです(実際のセルバンドの著作からの引用だったりします)。

    自由を渇望するセルバンドは、我が身をスペイン植民地である故国に重ね合わせ、やがてメキシコの独立を夢見るようになります。何しろ彼は稀代の説教師。彼が弁舌をふるう革命や政治に、大衆が熱狂するのも道理です。そんな反権力的な言動に当局は警戒を強め、牢獄の警備はますます厳しくなります。

    あと少しでメキシコの革命が成るか、というところでまたもやスペインの牢獄につながれてしまったセルバンド。ここの執拗なまでの描写は本作でも白眉といえます。スペイン人はセルバンドの脱獄を怖れに怖れ、彼を厳重に拘束します。手足はもちろん頭髪の1本1本に至るまで無数の鉄の鎖に縛られ、牢屋の扉には鍵と鎖が巻かれ、牢獄自体にも鍵と鎖が巻かれ…。トゥーマッチを通り越してナンセンスで涙が出るほど可笑しいんだけれど、ある時からそれが感動の熱い涙に変わるのです。

    なぜなら、どこまで自由を奪われても、彼の空想や思想だけは奪えないことが、いつ終わるともしれない鎖の描写の中から強烈に立ち上がってくるからです。タイトルは、世界を股に掛けたセルバンドの冒険のことでありながら、何よりも彼の内にある、豊穣な空想の世界のことなのだ!そう思いながら読み進めると、今度は快哉の涙が…。

    アレナス自身の想像力の奔放さにも、ブラヴォー!本当に楽しい小説でした。

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    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 雑誌・文藝(2009年冬)のアンケートの答え:星野智幸

  • 異端の僧セルバンド・デ・ミエルがヨーロッパ各地を旅(逃亡)する奇想天外伝奇小説。

    読む前の期待値が高かっただけに、個人的には物足りない読後感。。。
    外国文学はとにもかくにも訳がキモだ。

  • 2009/6/24読了
    2013/12/5購入

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