- Amazon.co.jp ・本 (166ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336025586
感想・レビュー・書評
-
ボルヘス監修、バベルの図書館シリーズ。イタリアで刊行された青を貴重とした縦長の装丁で出版されています。
ホーソーンの巻は、寓話短編集です。
ウェイクフィールドは仕事に行くと言って家を出て、隣の通りの家に住み始めた。家族とは数分の距離で生活して20年後に家に戻った。
人は社会に組み込まれていて、そこから離れたら「宇宙の孤児」になってしまう。
/『ウェイクフィールド』
牧歌的な谷あいの村から見える大岩は、人の顔のような形をしていた。慈愛に富み優しい顔立ち。人々はいつかあの大岩と同じ顔を持つ人が現れる、その人こそ世界で一番偉い人なのだと言い伝える。
本当の徳を持つ人間とは?
/『人面の大岩』
地球上に溢れたガラクタを焼こう。
人々は次々に火に投下する。権威の象徴、経済、趣向品、書物、それらをくべてもまだ火は消えない。もっと大きな観念を燃やさなければ。
/『地球の大燔祭』
行商人のドミニカスは、次の村でヒギンボタムというじいさんが死んだと聞いた。その話を酒場でしたら皆に広まった。だがヒギンボタムじいさんは生きていたんだ。
翌日別の男にまた「ヒギンボタムじいさんが死んだ」と聞かされた。今度こそ本当か?また酒場で話したら皆に広まった。だがヒギンボタムじいさんは生きていたんだ。
翌日また別の男がまたまた「ヒギンボタムじいさんが死んだ」と言って…。
/『ヒギンボタム氏の災難』
地域で信頼されていた牧師さんがいきなりベールを被りだした。突然隠された顔に村人は知らない何かを見るかのような気持ちになる。
/『牧師の黒いベール』詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ナサニエル・ホーソンはアメリカの作家
昔読んだ「緋文字」が面白かったが、全く違う作風。「ウェイクフィールド」は、ある男が妻を家に置き去りにして20年間帰ってこない話。死んだはずの彼がひょっこり帰って来る。何事もなかったかのように。 -
表題の『人面の大岩』中々考えさせられるお話。
20年間、行方不明を装って実は家の隣で生活していた『ウェイクフィールド』も面白かったですが、個人的には『牧師の黒いベール』が好きです。
どのお話も読みやすくて、考えさせられるけど間抜けな感じがして面白かった。 -
全30巻からなる、ボルヘス編集叢書「バベルの図書館」巻3。学生時代からずっとあこがれてきたシリーズ(例によって国書刊行会)なのだが、なかなか手を出せずにいたところ、近くの図書館が何冊かを揃えていたのをみつけて読み始めることにした。
まずは軽めのところからと思って、『緋文字』で有名な Hawthorne。現代の目から見るとやや単調なきらいはあるが、「小説」の原石とも言うべき作品群。一番のお気に入りは、幻想的な雰囲気を讃えつつ、しっかりと落としてミステリ小説の嚆矢と言われる『ヒギンボタム氏の災難』。次いでボルヘスが「文学におえる最高傑作の一つ」と讃える『ウェイクフィールド』だが、他の 3作品も素晴しい。 -
第3冊/全30冊
-
ウェイクフィールド "Wakefield" (1835)
人面の大岩 "The Great Stone Face"
地球の大燔祭 "Earth's Holocaust"
ヒギンボタム氏の災難 "Mr.Higginbotham's Catastrophe"
牧師の黒いベール "The Minister's Black Veil" (1836) -
おもしろい。馴染みの道にいつのまにか見知らぬ穴があいていたような気持ち。日はやさしく照っているけれど、穴は深くて暗いみたいだ。近寄って覗いてみようか、どうしようか。ボルヘスの序文もそれ自体がまるで短い物語のよう。
“かの〈尊敬すべき〉ベーダのように、ナサニエル・ホーソーンも夢みながら死んでいった。彼が死んだのは1864年春の、ニューハンプシャーの山中でのことである。彼が夢想し、その死によって完成または消滅した物語を想像してみることをわれわれに禁じているものは何もない。だがそれはそれとして、彼の全生涯は、ひとつらなりの夢であった。”
(ボルヘス序文より)