白壁の緑の扉 (バベルの図書館 8)

  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336025630

感想・レビュー・書評

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  • ボルヘス編纂のバベルの図書館シリーズ、今回はSF作家のウェルズ。


    『白壁の緑の扉』
    少年の頃、白壁の緑の扉に入り楽しく美しい庭で遊んだ。
    それから何十年も生きた。人生の選択の時に現れて誘うように牧歌的風景を思い出させる白壁の緑の扉。男はその中の光景に憧れながらも現実社会を生きたが…。

    『ブラッドナー先生綺譚』
    化学の実験の爆発で、ブラッドナー先生は消えた。
    9日後に戻ってきた先生が言うには、半分死者として存在していたらしい。

    『亡きエルブシャム氏の物語』
    青年に持ちかけられた契約の話。資産家の老哲学者から「相続人のいない自分のすべて受け継いでもらいたい。財産も屋敷も名前も人生もすべて」
    素晴らしいかに見えたこの契約は、しかし先の短い老人が、若くて健康な青年を人生を入れ替えるというものだった。

    『水晶の卵』
    骨董屋の手に入れた水晶の卵には光線の角度により不思議な光景を映し出す。
    どうやら別の星の別の生物の光景らしい。

    『魔法屋』
    路地ある魅力的な店は本物の魔法やだった。息子はすっかり夢中になる。

  • 『白い壁の緑の扉』と『水晶の卵』は以前も何かのアンソロジーで読んだ覚えあり。どちらも一つは扉から一つは水晶に寄って異世界やもう一つの世界を見る話。
    『亡きエルヴシャム氏の物語』は少しミステリーな部部も含みつつ。
    どの話も読みやすくて面白かった。

  • 知人から勧められ、購入。

    まず一番嬉しいのは実はこの、本の装丁だったりもする。
    普通の本の大きさではなく、縦長の、絵本のような美しくもクラシカルな装丁。
    本を読む楽しみはいろいろあると思うが、最近本の、インテリアとしての魅力を再認識しているため、不思議な雰囲気のこの本を、楽しく読んだ。

    本のタイトルにもなっている「白壁の緑の扉」は、不可思議な風合いの、SFというよりはファンタジーと言っていいと思う。例えばクトゥルーや桃源郷、遠野物語、平たくはチルチルミチルの世界にいたるまで、いかに人が「こちらではなくそちらの」世界に憧れ、理想化していたかをあたらめてこの美しい文章で読み、考えた。

    日常にふと入り込む、理想の世界への扉。

    開くまで向こうがわからない魅力と恐怖とを伴いながらも、手にしている「こちら」ちお対比される「あちら」には、こちらで叶わない何かがあるのではないか、理想があるのではないか、という人間の根源的理想は、古今東西場所も文化も超えて、たしかに存在することを、またそのことがいかに人が心の底では1つの生命体として精神的に共通のベースを持っていることを、あらためて思ってみた。

    これはすでに物語ではなく、事実としての事象なのではないのか?

    などと、大人げなく考える自分に苦笑しつつも、どこかでそんな、「ココデナイドコか」を思う自分も思想に隷属する人間なのだと、当たり前のことを思ったりもした。

  • 第8冊/全30冊

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著者プロフィール

1866~1946年。英国の作家・社会活動家。『タイム・マシン』『モロー博士の島』『透明人間』『宇宙戦争』などの小説で「SFの父」と称される。フェビアン協会に参加し、国際連盟の提唱、人権の遵守、英国の社会問題に取り組んだ活動家でもあった。また、第一次世界大戦前に作品で原子爆弾を予見したとされている。1910年に発表された本書は、代表作『キップス』同様、虐げられた者への深い同情と格差社会への強い憤りを表明している。英『ガーディアン』紙は本書を「古今の名作小説100」に選出、ウェルズを主人公にした伝記小説『絶倫の人』の作家デイヴィッド・ロッジは、ウェルズ作品のトップ・テンに選出している。

「2020年 『ポリー氏の人生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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