メルヴィル ― 代書人バートルビー (バベルの図書館 9)

  • 国書刊行会
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本棚登録 : 72
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (100ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336025647

感想・レビュー・書評

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  • 入り込むのが難儀な冒頭から始まり、やがて作者の意図が見えずじれったくなるストーリー展開。
    バートルビーは陰で何かをたくらんでるかと憶測すればそうではない。その結末は目の前真っ白。

    この小説の感想は不謹慎に訳知り顔で語るのはダメでしょ、と。傑作だと思った。

    この類の人間の深層心理、深い闇のような、でも誰にも確かなことはわからない小説はアメリカ人ならではだと思う。アメリカの小説はヨーロッパにはなく、日本とも違う。だからこの小説の舞台は圧倒的にニューヨークでなければならないと思う。
    しかも19世紀の小説には思えない新しさ。

    語り手である雇い主は最後にはバートルビーへ好意を持ったのかも。わたしにわかったのは死は誰の上にも平等に訪れるということかな。

    • minikokoさん
      くろねこ・ぷぅさんのレビューを読んで、読んでみたくなりました。
      くろねこ・ぷぅさんのレビューを読んで、読んでみたくなりました。
      2015/12/02
  • ★★★
    「しないですむと有難いのですが」
    法律事務所に雇われた代書人が、人生と隔たりを感じ、自分に閉じこもり壁を作り、世間への完全な無関心の中死ぬまでの話。
    「ああ、人間とは」
    ★★★

    バートルビーのあまりに深く、そして理由のない絶望と無関心が衝撃で、いったいこの作者はどのような精神をもってこの人物像を書けたのだろうと思う。

  • 代書人バートルビー面白かったです。
    頑として部屋から出て行かないバートルビー。彼がしているコトはおかしいのに、最後は彼がとても可哀想な人に思えてくるなら不思議。

  •  物語とは比喩の世界であるというような言説はおそらく在って、というのもなんかでそのように読んだ気もするし私も基本的には同意で、それはテーマやキャラクターやセリフに貌を変えてあらわれるのだろう。それが正体こそ嘘っぱちでしかないはずのフィクションの意義という側面がある。
     小説の読書という行為の成果のひとつにはその、作者がこめた(のかどうかは実はどうでもいいことのような気もするけど)比喩を読者が読み取る•感じ入ることがあると思う。

    この本にも、大きく"バートルビー"という人物としてなにかの比喩は表れているんだろうし、おそらく多くの読者がバートルビーが体現している比喩とは何なのかみたいなことを読みながら考えたり読み終えてから考えたりするだろう。

     しかしながら私が「もしかして…?」と、見当違いの内省を多く孕みながら考えるのは、バートルビーも、この小説そのものも、なんの比喩でもないということだ。それは言い換えればフィクションへの皮肉であり、それでもメタフィクションにならずつまりはあくまでもフィクションという形態の中で物語という構造のひとつの側面を完全に拒絶するということでもある。捏造されたドキュメントとか光景の描写を、本来とは異なる意味で恣意的に書かれているのではないか。そういう可能性が、なくもない。なくもないというのが不気味なのである。つまり知ってかしらずか小説が「現実」に接近しているということで、それはややもすると「現実の比喩」と言い換えられなくもない。ああ袋小路だ。こんなこと考えずにすめばありがたいのですが……。

  • せずにすめばありがたいのですが。

  • 文学

  • 第9冊/全30冊

  • 2009/10/30購入

  • メルヴィルの「バートルビー」とホーソーンの「ウェイクフィールド」は、ボルヘスによって私は読むことができたのだが、すでに19世紀に、このような小説が書かれていたことに、驚いた。2005年現在、ある意味カフカよりもアクチュアルである。

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著者プロフィール

1819年-1891年。ニューヨークに生まれる。13歳の時に父親を亡くして学校を辞め、様々な職を経験。22歳の時に捕鯨船に乗り、4年ほど海を放浪。その間、マルケサス諸島でタイピー族に捕らわれるなど、その後の作品に影響を及ぼす体験をする。27歳で処女作『タイピー』を発表。以降、精力的に作品を発表するものの、生存中には評価を受けず、ニューヨークの税関で職を得ていた。享年72歳。生誕100年を期して再評価されるようになり、遺作『ビリー・バッド』を含む『メルヴィル著作集全16巻』が刊行され、アメリカ文学の巨匠として知られる存在となった。

「2012年 『タイピー 南海の愛すべき食人族たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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