- Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336030412
感想・レビュー・書評
-
ボルヘスを館長として編纂された文学シリーズ、「バベルの図書館」の一冊。
イタリアから刊行されたシリーズですが、青を基調とした装丁が美しく、並べると美術館のようです。
===
『怪奇クラブ』(https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4488510019#comment)の中から『黒い石印のはなし』『白い粉薬のはなし』と、『輝く金字塔』が収録されている。
『怪奇クラブ』に内容は記載したのでここでは簡単に。
『黒い石印』は、平井呈一訳では遺されたメモが漢字とカタカナ混じりだったので読みづらく頭に入りづらかった(-_-;)のですが、こちらでは普通に書かれていたのでそこは読みやすかったです。
それにしても『黒い石印のはなし』も『白い粉薬のはなし』も、『怪奇クラブ』の中では作中作の小話なのですが、こちらで独立した短編と読むと不気味さグロテスクさが際立ちますね。
『輝く金字塔』
文士のダイスン(『怪奇クラブ』のダイスンと同じ人?)は、西部の隠居邸に住むヴォーンから怪しい話を聞く。
まず近所の小町娘が行方不明になった。この地方では妖精伝説があり、そいつらにさらわれたのでは?といわれているらしい。
そしてヴォーンは住居の近くの広場の石がなにかの形に置かれていることに気がつく。それは軍隊、鉢、ピラミット、そして半円の形に配置が変えられている。
ヴォーンの住居に同行したダイスンは、その石が置かれていた広場の塀に不思議な印を見つける。その印は毎日数が増えている。
結局ですね、ダイスンは「石を置いたのも、塀に印をつけたのも、このあたりに太古から住む妖精たちだ。小町娘を攫ったのもかれらだ」と推測する。この「妖精」というのは『黒い石印』で言われているような、おぞましい生態と風習を持つ存在で、接触してしまった人間はおぞましい目にあうものだ。
そして「妖精」たちの周回を察知したダイソンは、ヴォーンを連れて、おぞましい儀式を目にするのだった。
「妖精」のことは、「黒い石印」でも書かれているように「本当はおぞましいからこそ、美しい姿を偽って伝えている」というもの。そのおぞましいものに関わったら自分も下には戻れない。
===
収録の三作が似た感じの気持ち悪さ(ーー;)
人間が悪の生命体に接触してしまって、という意味ではホラーであるが、これはしかし原始の荒々しさが現れていてなんともグロテスク。自然は美しいものというだけでなく、人間がもう近づいてはいけない闇の部分もあると感じる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
“彼の自伝の中に女性に対する関心が少しも見えないこと、その代りに無暗にご馳走の話が出て、それが又実にうまそうに書いてあることなども、彼の風変りな性格を示すものだが、もっと変なのは、ある時期に、彼が少年時代からあこがれていた山の向うのもうひとつの世界、人間界とは違った別の世界に遊んだということである。つまり、一種の狂気に陥ったのである。”
(― 江戸川乱歩「マッケンの事」)
ラヴクラフトの文章を仮に読みやすくすっきり仕上げたらアーサー・マッケンになるのかも、と「黒い石印のはなし」を読んで思いました。気を引く導入と徐々に立ち上がる不穏な世界、しかし事象の後に原因が提示されるクリアな読み心地のため、かえって陽のもとで恐怖が色褪せるのを眺めるような、物足りなさと味気なさを覚えたのでした。乱歩が言っていた「実にうまそうに書いてあるご馳走」は今回の短編集には出てこなかったので、他の作品も読んでみます。
収録作品一覧
黒い石印のはなし/白い粉薬のはなし/輝く金字塔 -
オカルト、神秘主義、超自然の傾向が強い作品群。自分はすごく好きでした。人間の知識の及ぶ範囲の外の世界は広大で地上、地下には神秘や恐怖が潜む余地はいくらでもある。
表紙のイラストが表題作を読んでから見るとネタばれ気味…(イラストの雰囲気は好き)。 -
[ 内容 ]
[ 目次 ]
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ] -
異形のものが登場する3つの短篇が収録されている。バベルの図書館シリーズの中では、ストレートでわかりやすいほうだ。そのぶん、読んでいて素直におぞましさを感じるが、具体的すぎて味気ないという一面も。
-
第21冊/全30冊