壜の中の世界 (文学の冒険シリーズ)

著者 : クルト・クーゼンベルク 前川道介 三宅晶子 竹内節

• 国書刊行会 (1991年10月1日発売)

作品紹介・あらすじ

老船長が空にしたアラク酒の壜の中にボトルシップを作るという話が突然、南の国の小さな湾に碇泊する三本マストのスクーナー船の話になってしまう…あざやかな手品のような逸品『壜(ラ・ボテリヤ)』、盗みに入られてもほうっておく邸の主人と、節度を守って盗む泥棒たちの奇妙な共棲とその破局…『優雅な泥棒たち』、夢の中の青年を探して、少女は時を超える旅に出かけた…美しいファンタジー『蒼い夢』、速度に取り憑かれた人間を笑い、秩序に取り憑かれた国家を諷刺する『生き急ぐ』『秩序の必要性』、死を待つばかりと思い定めた老人が、ひょんなことから生きる歓びを見出してしまう悲喜劇『汽車を乗り間違えて』、構想中の小説の登場人物が実際に現われてしまった…作家のイメージの発生現場を垣間見させる『トルコ人』等々、時間と空間を自由に往き来しながら、変幻自在なプリズムの光を結晶化したような現代ドイツ随一の短篇の名手、クルト・クーゼンベルクの世界。クールな透明感あふれる文体で描く、ふしぎで、おかしくて、皮肉な21篇。

感想・レビュー・書評

[fujitatetsuyaさんの感想 · 2014年1月25日]

「抱き合わせ販売」「休まない弾丸」「秩序の必要性」の３編がよかった。見ようによっては悪夢、だがしかし悪夢も考えようによっては飼いならされた日常とも映る。エッヂの効いた想像力豊かな短編集。