日本幻想文学集成 32 室生犀星

著者 :
制作 : 矢川 澄子 
  • 国書刊行会
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本棚登録 : 114
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336032423

感想・レビュー・書評

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  • なんて艶のある題名だろう。
    小さく小さく作られたものが、濃密に煮詰められた甘さを持っていて、けれども味わえるのは、そこからわずかにしたたったひと雫だけ、というような、切なさもあるような、色っぽい題名。

    老齢の「おじさま」と、二十歳くらいの外見の「金魚」である「あたい」が、戯れるお話。
    全編通して、会話のみ。
    会話だから、金魚ちゃんはおじさまのお腹の上で遊んだり、くちづけたり、人間の姿になってお買い物に行ったり、しっぽに入った裂け目をおじさまのつばでちょっと治してもらったり、おじさまがあたいの姿を絵に描いてお金をもらったんだからそれはあたいのものよちょうだいよ、と、かなり我がままだったり。
    おじさまの過去の女である幽霊も、度々登場。
    しかし、幽霊は金魚ちゃんの前にだけ現れて、金魚ちゃんがおじさまに会わせようと画策しても、毎回うまくいかない。
    過去はもういらず、空想の若いかわいい女の子と戯れる、老境の自由。

    この金魚シリーズは設定がおもしろく、会話しかそもそもないのですらすらと読めたけれど、他はそこまで引かれるタイプでもなかった。

  • 室生犀星の小説・詩から、魚に関わるものを選び出したアンソロジー。その核になるのは、晩年に著された「蜜のあはれ」「火の魚」だが、編集が非常にうまくできているので、最初から最後まで順に通読することを勧めます。冒頭の「蜜のあはれ」の前半あたりでは、ただの変態小説かと思いきや、読み進めるにつれ、これはすごいかも、と思いはじめました。生と死、エロスとタナトス、生き物の業(ごう)。著者が描こうとしているものは一貫しています。

  • 兎に角、金魚が可愛い。
    尾籠も淫靡も語りながらそれでも可愛いとは。参りました。

  • 金魚

  • 普段読みなれない文章だったので読みにくかったです。
    可愛いかったと言えばそうでした。金魚がしゃべるなんて素敵ですものね なんというかスイミングスクールの更衣室の臭いがしてきそうな本でした。

  • 「をぢさま」と呼んでくれる金魚、お掃除にお料理にお使いまで行ってくれる金魚、お腹でぴちぴちはねてくれる金魚、私もほしい。

  • こんなにも日本語に惹きつけられた作品はなかった…と思わせられるほど、良かった…。おじさまと金魚…わすれられない。

  • 室井犀星って凄いひとだ。魚をよく見てるんだと思いました。生き物の描写がとても気にいりました

  • 2021.12.15 図書館

  • 老小説家ををじさまと呼ぶ、3歳の金魚のあたい。
    この金魚がとても魅力的で引きつけられてしまった。
    時にはとても美しい若い女性に姿を変え、
    また時には金魚の姿のままでをじさまのおなかの上を
    ぴちゃぴちゃと這いまわる。
    そしてそのはすっぱな、でもとても女性らしい言葉遣い。
    をじさまでなくても、金魚は君だけで十分だと
    いいたくなるだろう。
    ただ可愛がられるだけの生き物は
    可愛がられ方をよく分かっている。

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著者プロフィール

詩:詩人・小説家。本名、照道。金沢生まれ。北原白秋・萩原朔太郎らと交わり、抒情詩人として知られた。のち小説に転じ、野性的な人間追及と感覚的描写で一家を成す。「愛の詩集」「幼年時代」「あにいもうと」「杏つ子」など。


「2013年 『児童合唱とピアノのための 生きもののうた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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