アラビアン・ナイトメア (文学の冒険)

  • 国書刊行会 (1999年9月21日発売)
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本 ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784336035868

感想・レビュー・書評

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  • 読んだことあったかな?としばらく悩んだがアラビアの夜の種族と混同してた。初でした。
    ずっと取り止めのない話ばかりで起承転結がない。

  • 何かの国書本の後付けで見かけて気になっていた。このタイトルは危険な香り。

    舞台はスルタン・カーイトベイの治める15世紀のカイロ。巡礼に扮してここを訪れた青年バリアンはフランス国王よりある密命を帯びており……という粗筋は早いうちからほぼ意味をなさなくなる。何せ夢と現実が同等の質量で描かれるうえ、夢はいくつもの「層」に分かれて錯綜していく。各章冒頭の謎めいた語り手といい、その正体といい、つまりこれは口の中で見る夢という物語の愉快な企み。明確に千夜一夜物語を背景(劇中ではヨルの作品)としているし、隙あらば半畳の入る入れ子語り、夢と現や神と悪魔の二元論から宗教談義に陰謀論、物語と歴史のパロディに余念がない。夢が見る夢、夢から現への対象性という危険なテーマをアラビアン・ナイトでやったのはさぞ愉快だったはず。
    夢でも現でも、カイロのイメージがこれでもかというほど執拗に重ねられていくのがまた面白い。実像に基づいているのは勿論だろうけど、カイロ的なもの、アラビアン・ナイト的な要素をそれこそカイロの家並みやモスク、城砦、ピラミッドのように積み上げてモザイクのように組み合わせているみたいで。そうかと思えばゴーレムや自動人形が出てきたりと、19世紀の文学作品を思わせる部分も。このへんも何かしら確信めいた匂いがする。
    ところで「ヨル」は原著でも固有名詞として「ヨル」なんだろうか。実は普通名詞の「夜」(ライラ)を男性名っぽくした言葉が充てられていたりしないだろうか。

  • 大体こういう本って独特の雰囲気の中、読みたい人はご勝手にとばかり、形容詞というのか語りについて丁寧でなかったりする。これはイギリス人の研究家らしき人が書いたもので、非常に世界に入りやすい。が。内容はイギリスの宣教師がエジプトカイロにのりこむ。寝て起きると大量出血してるのでアタシ死ぬのかも。そもそもお前の言う、夢とはどのことや?っていうか今も夢でないとなぜわかる?という世界が連続してる。最初からわからない世界なのでイラつかない。根っこには宗教のせめぎあいがあったのかもしれんが、よくわからんかった。

  • 2/18 読了。
    15世紀のカイロ。巡礼団員に混じり、マムルーク朝の戦力を探るため、フランスから送り込まれた密偵のバリアンだったが、ある日突然目の前でイギリス人がイスラム教徒に連行され、そのまま消息不明になるのを目撃する。カイロを取り巻く陰謀の裏には<猫の父>と呼ばれる魔術師と、謎のイギリス人・ヴェインが絡んでいるらしい。折しも都市では、見た夢を完全に忘れてしまう<アラビアの悪夢>という奇病が蔓延する最中、バリアンは幾重にも入れ子状になった長い長い夢を見るようになる。何度も夢の中で目覚めるのだがそれは偽物で、やっと本物の目覚めがやってきたと思うと口から血を吐いて苦しむのだった。高飛車な娼婦のズレイカ、人猿を肩に乗せた語り手のヨル、年頃になった二人の娘を心配する長官、暗躍する死神のファティマらがバリアンと読者をめくるめく眠りの迷宮へ引きずり込んでいく。

    密偵とは名ばかりで眠ってばかりの空虚な主人公と、読者に向かって主人公の愚痴をこぼす存在感の強い語り手。ここの関係に気付いてしまえば、あとは言葉の迷宮を思う存分さまよっていけばいい。冒頭で語り手自ら「ガイドブック形式のロマンス」であることを宣言しているのだから、物語に散りばめられたオリエンタリズムも計算づくなのだ。つまりこれはバリアンと同じく<誰かから聞いたようなアラビアらしさ>を<危険すぎない程度にハラハラしながら>楽しみたい人のために語られた夢なのである。だから「アラビアン・ナイトメア」という書名に惹かれて本書を開いた者は、既にそこでチクリとやられていることになる。
    バリアンの見る夢が<観光ガイドのサービスとしての語り>であることは、作中に何度も登場する<猿と青年の性戯比べ>のエピソードに対し、登場人物が「その話はもういい!」とツッコミをいれることからもわかる。一冊まるごとが明晰夢であることは、冒頭でイギリス人が語る<息子殺しの蛇遣い>のエピソードに象徴されている。「キリストは眠らないから夢を見ない」という宗教談義がそのまま<アラビアの悪夢>へとスライドしていき、<猫の父>は<アラビアの悪夢>を恐れて生まれてから一度も夢を見たことがない、というエピソードに連環し正邪が重ね合わされるのもうまい。終盤に語り手から漏らされる「ここで読者に警告しておく。頁が減れば、可能な解の数も減るのである」という警句は、アンチミステリ的な本書の構造に触れているとも言えるだろう。斯様に自己言及の多い周到な小説であり、解説にあるようにカルト小説として人気があるのは納得だった。

  • おもしろくない、とゆーほどでもないんだが
    読み進める元気がないってとこ。
    うーんやっぱ外国ものはあんま合わないのかもなあ。

  • 妖しくも魅力的なカイロの街を、スパイがさまよう迷宮小説。作中の出来事の意味を理解するにはいたれなくて、ただ読んだことを読んだままに感じていくような荒唐無稽さが魅力かもしれない。

  • エジプト、カイロなどを舞台とした作品です。

  • 夢と現実が入り混じり、夢の中で夢を見て、話中話の中で話中話が展開される、複雑な構成をもつ小説。と書くと小難しそうだが、深く考えず目の前に展開されるイメージを追うだけでも楽しめる。15世紀のカイロの風俗、習慣もよく伝わってくる。とはいえ爆発的に面白いかというと・・・。

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