愛 (文学の冒険シリーズ)

  • 国書刊行会
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本棚登録 : 204
レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336039606

感想・レビュー・書評

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  •  凄い作家による凄い作品、という評判を前もって読んでいたので、かなり期待して読んだのだが、少々期待外れだった。
     一つにはこの手のタイプの作品を既にいくつか読んでいたのが原因かも知れない。
     前衛的な文章や文体破壊とか言われている形式はドナルド・バーセルミで、反モラル的な作品はチャールズ・ブコウスキーで、通常の小説形態を壊したような作品は中原昌也で、スカトロ的作品は高橋源一郎で、自動手記的文章はアンドレ・ブルドンで、既に経験済だったりする。
     おまけにバーセルミやブコウスキーや高橋源一郎の方が面白く読めたりした。
     そうは言っても、本書におけるいくつかの短篇(本書は17編の短篇からなる)にはとんでもなく面白く、また衝撃的な展開を見せる作品もある。
     僕にとってそれは「愛」「セルゲイ・アンドレーエヴィチ」「真夜中の客」「シーズンの始まり」「弔辞」などがそれにあたる作品だった。
     ただ、この著者の他の作品も読みたいか、と問われたら、あまり食指は動かないのが正直なところ。
     スカトロや人体破壊や同性愛やカニバリズムや自動手記に興味がある人は読んで面白いかもしれない。
     そうじゃない人は、気分が悪くなるだけなので、読まない方が良いです。

  • うんこ




    とだけ書いてレビューを終えようと思ったんですが、それだとさすがにあんまりなので補足をば。ちなみに「うんこ」というのはうんこそのものを指しているのであって、この小説の出来がうんこだったという訳ではありません。何を言ってるのか理解できないかもしれませんが読めば分かります。
    それにしてもなんてナンセンス!この小説がどういう本なのかは最初の「愛」って短篇を読めば十分分かります。すぐ読めるのでそれで気に入ったらレジに持っていってください。
    途中まですごく良い、重厚な文学感を醸しているにも関わらず、話がびょーんと飛び跳ねて訳の分からないところに放り投げられます。だいたいこのパターン。
    本編もかなり意味不明でしたが、それよりも巻末に付された解説とインタビューも、なかなかどうして意味不明です。
    それにしてもロシア人の小説は読むのにものすごくエネルギーが必要だなあ…。名前がだいたいなんとかスキーだのなんとかチョフだのなんとかビッチだので、まず覚えにくいのに加え、愛称が結構原型をとどめない感じになるので、誰が誰だか読んでて理解できなくなる。なんとなく雰囲気で読み進めたため、「弔辞」という作品が実は全く理解できてなかったことに解説を読んで気付きました。ガッデム。
    読み終わってから二時間くらい立ちますがまだ頭が煙を上げてます。

  • 潜在的に堕ちてゆきたい願望「タナトス」具体化した1冊。

    理性を奪い、不安を目覚めさせて退化した獰猛な野性に餌をくれよう。
    常識や固定概念、既存の価値。これらを捨てて、不自由な不愉快に身を任せれば快楽になり、わたしの中の悪魔が喜ぶ。

    人生は悪い冗談。滑稽すぎて笑えない。

  • 【展示用コメント】
     「愛」っていったい何だろう……

    【北海道大学蔵書目録へのリンク先】
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_details.cgi?lang=0&amode=11&place=&bibid=2000764133&key=B151607864902210&start=1&srmode=0&srmode=0#

  • どこかで分岐を誤ったのだろうか。そもそもどこかに分岐などあったのだろうか。いくら来た道を振り返ってみても道はただ真っ直ぐに伸びている。なのにさっきまでの穏やかな風景は一変し、乾いた舗装のされた道はぬかるんだ滑り易い泥道にすり変わっている。悪臭がするなと思っていると、それが足元から漂っていることに気付く。鋭利なものかぬめりとした感覚と伴に脳に差し込まれると、視界が端の方からぐにゃりと溶け出す。狂気、という言葉が一瞬浮かぶが、ここにあるのは冷静な頭脳なのだということが少しずつ理解されてくる。

    印象派のどこまでも平和なものを喚起する絵の中に、本来は慎ましやかに衣服で隠しておくべき筈のものが、そこだけ原色の持つ強い陰影を些かも薄めることなく使って描かれていたら。急いで目を逸らせてしまうべきか、それとも画家の意図を汲み取るべくじっくりと観察するべきか。これはある意味モラルへの挑戦のようでもあるが、例えば岡本太郎の絵から受け取るべきものは飽くまで自分自身の中に沸き上がるもやもやとしたエロスとタナトスの混合のような感覚だけであって、芸術家が何を考えてこの絵を描いたかということについては深く考え過ぎない方がよいのと同じようなものだと受け止めておくべきか。とは言え、断片的な文脈の中にはソ連時代から現在に至るロシアという下地は強く漂って来るし、何か慎重に隠されたメッセージがあるようにも見える。その事を冷静に考えることすら許さないような強烈なエログロ、スカトロが何もかにも麻痺させてしまう。

    思わせ振りや気取りなど一切排除して、人の一番隠しておいた触れて欲しくない所をぐいっと掴む。ウラジーミル・ソローキンという作家の恐ろしさをまざまざと見せつけられる。

  • 「愛」★★★★★
    「別れ」★★
    「自習」★★★
    「競争」★★★★★
    「可能性」★★★★
    「地質学者たち」★★★
    「樫の実峡谷」★★★★★
    「セルゲイ・アンドレーエヴィチ」★★
    「真夜中の客」★★★★
    「巾着」★★★
    「しごとの話」★★★
    「シーズンの始まり」★★★★
    「弔辞」★★★
    「はじめての土曜労働」★★★
    「寄り道」★★★
    「出来事」★★★
    「記念像」★★★

  • 文体破壊。形式破壊。公序良俗破壊。いい雰囲気破壊。清潔さ破壊。誠実破壊。信愛破壊。人間性破壊。普通破壊。品行方正破壊。平凡破壊。筋書破壊。平穏破壊。希望破壊。理性破壊。

    現れるのは、頽廃などという美的なものではない。
    もっとしょうもなく下品なものばかり。
    なのにどうしようもないエレジーが。
    私の頭はどうかしてしまったのだろうか。

  • いやあ、これはクセになりますなー。まさしく最強、最狂。

  • カフカの不条理に狂気とエログロを足したみたいな世界。グロは嫌いだけど、なぜか一種の爽快さみたいなのがある。面倒くさい「個の内面」をすっとばして、ぶっ飛び方がギャグに近いからかも。

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著者プロフィール

1955年ロシア生まれ。コンセプチュアリズム芸術運動に関わったのち、83年『行列』で作家デビュー。「現代文学のモンスター」の異名をとる。主な作品に、『ロマン』『青い脂』『氷3部作』、短篇集『愛』など。

「2017年 『テルリア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ウラジーミル・ソローキンの作品

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