オレンジだけが果物じゃない (文学の冒険シリーズ)

制作 : Jeanette Winterson  岸本 佐知子 
  • 国書刊行会
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本棚登録 : 196
レビュー : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336039620

感想・レビュー・書評

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  • ちょっと、これ超面白いんですけど。おかげさまで夜を徹して読んでしまいました。オヌヌメ!

  • 翻訳の岸本女史の力も大きいと思うけれども、私は好きな作品です。それにしてもイギリス人作家って変わってる…

  • 作者の自伝的小説。20代半ばくらいに書かれた物語だが、深遠な哲学的思考が随所に見受けられる。

  • 厳格な母親のせいでキリスト教とプロレスの区別がつかなくなったトゲトゲな女性の一代記。こういう作品ばっかり読まされているせいか、イギリスってのは変態の集まりだと確信しています。

  • お母さん、悪い印象ではないのだけど・・自分の親なら嫌。

  • 倫理観の廃棄と回帰の物語。私はこれを読んで泣きました!(おすぎの物真似で)

  • 「さくらんぼの性は」という、現代と歴史、現実と夢、が入り交じったような小節を読んだ後で、同じ作家の「オレンジだけが果物じゃない」を読むと、その穏やか語り口に、少しだけ、驚かされる。穏やか、と言ったけれど、語られている内容は穏やかとはほど遠く、さらにこの本が作家の自伝的小説であると知って、その驚きは大きくなる。翻訳者の岸本佐知子が「ウィンターソンという作家のいちばんの魅力は"からかいの精神"ではないかと思う」と、あとがきで書いているが、確かにそんなニュアンスに溢れている。しかしこの小説の視点は、からかい、をはるかに通り越して、警鐘を打ち鳴らすかのような響きがあると思う。そのことが、勝手に期待していたウィンターソンの風味と違うので驚くのだ。

    からかいの対象となっているのは、単純に言えば「白黒つけたがる精神」である。白黒つけたがる、というのは、結局、自分は正しい立場にいる、という気持ちがどこかにあるからで、例えその判断が、公平な立場から述べているんですよ、と強調されたとしても、白黒をつけられてしまう側にとっては何の違いもありはしない。そのことは、ウィンターソンがやや自虐的にすら聞こえる調子で強調していることではないだろうか。

    白黒をつけたくない、というのが、読み手である自分の目下の信条のようなものなので、この作家の気分は、たちまちのうちに伝染する。ウィンターソンの小説に、とくに岸本佐知子が翻訳者であることから、期待していた内容とは、実際のところややずれているので、読み出す前の気分からすれば、期待外れであったにも拘わらず、この本は思いの他面白かった。面白かったな、とは思うのだけれど、一方で、感化されるということが、実は、白黒付ける、ということの始まりにも繋がっていることに気づいて、はっと、させられもしている。読後の気分では、ウィンターソンに完全になびいており、彼女が言いそうになっている「白黒をつけることは間違っていることです」という言明に頷いている。しかし、その文言自体が逆説的にではあるけれど白黒をつけている精神に、しっかり絡みついているものだ。そして、その精神が、よくよく考えれば小説の中で画かれている、悪魔払い、の精神に繋がっていることに気づかされて、だめだなあ、頭を冷やさなければいけないなあ、という気分になる。

    お話の中に別なお話しが急に挿入され幻惑的な効果を持つ、というのはウィンターソンの特徴だと思うけれど、この本でもとても効果的に使われていると思う。さらに挿入された話が主人公の感情をうまく表現する役割を果たしてもいるのだ。この「オレンジだけが果物じゃない」の中では、アーサー王の時代と思しき時代の架空の話が挿入されている。完璧を追い求める王子、妖術使いの弟子の少女、アーサー王に使える騎士、と3つくらいの話が断片的なお話として挿入される。ウィンターソンはイギリスの作家で、念頭におかれている読者もイギリス人だろうから、この挿入話による主人公の感情の起伏は、より鮮明なのだろうと想像する。もっとも、この辺りの作家と読者の呼吸は、残念ながら文化的背景の異なる島国に暮らす者には想像するしかないわけだけれど。

    しかし、この小説の後味はそれ程よくない。良くないのは何故か。恐らくお話しの裏に見え隠れする私憤が感じられるからではないかと思う。ウィンターソンらしい奇想天外な話の展開で一気に後半まで読んでしまうのだが、最後に、喧嘩別れした筈の母親のもとへ戻ってくるエピソードに至って、おやっ、と感じてしまうのだ。このエピソード自体はとても平和な雰囲気があり、憑き物が落ちたように静かな大人の女性が描かれているのだが、そのことが反って前半の恨みの深さを強調することにもなっている。そして、どちらかといえば、奇想天外な空想のお話、のように読めてしまう筈だった物語が、この妙に日常的なエピソードをもってして現実味を帯びてしまい、そこに作家の私憤のようなものが透けて見える気がしてしまうのだ。ということで、面白いことは面白かったのだが、全速力で壁にぶつかった後のようなじいんとした感覚も覚えている。

    ウィンターソンの2冊の本とも、あり得そうにない逸話に粉飾されてはいるものの、実は彼女自身の来し方を割と率直に書き表しているものなのかも知れない。そう気づくと、急にウィンターソンの無気味さに身が震える思いに駆られる。女の執念というやつだろうか。おーこわ。

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