- Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336039637
感想・レビュー・書評
-
「精霊たちの家」が面白かったので、イサベル・アジェンデの「最高作」といわれる「パウラ」を読んでみた。
28歳で突然昏睡状態になった娘パウラを看病しつつ、娘が目覚めたときに自分がなにものかわかるように、イサベル・アジェンデ自身の物語を書き残していったノンフィクション。
本は、パウラの病状と医師たちの動き、アジェンデの家族と自身の物語、そして、チリやラテンアペリカの政情が並行して進んでいく。
ノンフィクションではあるのだけど、フィクションとの境目は、もう意味がない感じ。
事実は小説より奇なり、ということか。
小説はもっともらしく真実らしくなるように一定の歯止めがかかるのだが、事実のほうは、それを超えて、奇妙なシンクロニシティで話が絡まっていく。
後半は、パウラの変化が少なくなってくることもあってか、作家の自伝的な記述が多くなる。
サルバドール・アジェンデ(イサベル・アジェンデはサルバドールの姪)政権の成立とクーデターの発生、ピノチェト政権の恐怖政治というなかで、イサベルの亡命生活、そして最初の小説(「精霊たちの家」)の執筆、作家としての成長の話が語られていく。
その筆致は、淡々としたものだが、作家のとてもパーソナルな話が、ラテン・アメリカの近現代史とそこでのさまざまな人生にスポットライトが当たっていく感じ。
つい最近まで、こういう全体主義的な恐怖政治が存在していたんだな(現在でも他のところでは存在する)と感慨を覚える。
そして、最後のところで、話はパウラに戻り、人が生まれること、人を生むこと、そして死んでいくという普遍的なところにつながり、強い感動をよぶ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自分が産んだ子が自分より先に逝くことほど、悲痛なことはない。愛おしみ、どこまでも寄り添いながら、娘が少しずつ死にゆくことを認めていかねばならない悲痛。
世に闘病記や死の記録は数々あってどれも涙なくしては読めず、どれも悲痛ではあるが、ここまで昇華されずっしりとした重さを持って生や死や魂や愛について迫ってくる記録があっただろうか。
パウラは生き切った。そして魂は死を越える、と、これを読むと信じられそうな気になってくる。
アジェンデ、凄し。 -
ばななさんのエッセイで。
「年齢的にも経験的にも霊能力でも文でも人として負けた」と心からいさぎよく思うのが、イザベル・アジェンデ。前に英文でちょっと読んだら、訳文ではわからないおそろしい言葉のニュアンスの渦が襲ってきて驚いた。 -
須藤元気『レボリューション』つながり。
-
吉本ばななさんのエッセイで、感動したという感想を読み
気になって借りて読みました。
初めての彼女の作品でしたが
めくるめく過去の出来事と、現在の状態が
あまりにもくっきりした印象がありました。
時々、息苦しくなります。
最後は号泣しました。
本で号泣したのは、記憶の中ではもしかしたら始めてか
二度目か・・・。
-
他の作品と比べてかなりヘビーだと思う。それくらい真に迫っていて、彼女の悲しみや憔悴が伝わってくる。