書物の王国 1 架空の町

著者 :
制作 : 東 雅夫 
  • 国書刊行会
3.67
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本棚登録 : 169
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336040015

作品紹介・あらすじ

古今東西テーマ別文学全集。ユートピア、隠れ里、異界…幻想の市街地図。

感想・レビュー・書評

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  • 頭がくらくらしました。
    この書物の中には、この世ではない何処かにある町や国が押し込められていて、ページを捲ったら最後、町のざわめき、あるいは静寂の彼方へ連れ去られてしまいます。
    とにかく読み終えて一番はじめに感じたことは、『架空の町』はそんなに幸せそうな場所ではないなと 笑 
    この町は狂気の一歩手前、はたまた阿片や麻酔によるエクスタシイの向こう側に本来は眠っているものなのかもしれません。

    長い旅の途中。町のなかで迷い込んだ路地裏や知らない横道。部屋の片隅に忍び寄る夜の気配・・・。架空の町への入り口は意外と何処にでもあるようです。けれど行ってやろうと狙って行ける場所はひとつとしてないです。気まぐれのように訪れる日常とのほんの少しのズレに、思いがけず同化したものだけが、そのチャンスを与えられるようです。
    そしてお決まりのように大体の処には二度と行けません。だから、他の人に話しても笑われる、信じてもらえない。厄介な場所です。逆に何度も行けるところほど実は恐ろしいもののようです。欲に目が眩んだり妖しさに取り憑かれたら最期、その世界から二度と生きて帰れないことが多そうですね。
    でも、まあ、そんな体験するはずがないと思っている人は沢山いるでしょう。それでは一度、身近にある『架空の町』として、萩原朔太郎の『猫町』そしてつげ義春の『猫町紀行』ぜひ読んでみてください。『猫町』は散歩好きの方にオススメだと思います。
    例えば、いつもとほんの少し違う行動を起こしたとき(散歩の道順をかえたり、横道にそれたり、迷子になったり!)あれっ?て思ったことありませんか。見慣れているはずの場所が不思議と知らない場所のように感じたり、今まで気づかなかったお店に出会ったり、雨上がりの町が輝いていたり。
    例えば、行きたいのにどうしても辿り着けない目的地があるとか、そこに行くまでに数々の障害にあたって、なかなか辿り着けないとか。まるで自分が足を踏み入れるのを拒んでいるような。そんな経験したことありませんか。
    そこにはもしかしたら、あなたが開くべき運命の『架空の町』への扉が眠っているのかもしれません・・・なーんてね。

  • 本屋さんの隅で目にした学生時代から早十数年、ついに書物の王国シリーズを手に取ることが叶いました。
    ”架空の町”というテーマで最初に収録されているのが、陶淵明の「武陵桃林」なのが秀逸。桃花源記と言った方が聞こえが良いだろうか。
    桃源郷伝説のものがたりで書物の王国の扉が開き、我々はこの世との国境をまたぐ。いざ、始まりはじまり。

    マルセル・シュオッブの「眠れる都市」はさすがの気味の悪さ。
    海賊の冒険譚がこうもディストピア小説になるとは…。

    奇怪な挿絵があまりにも有名なジョン・マンデヴィルの「東方旅行記」から、かの有名でひと際ファンタジックで奇妙な異形の人々を描写した「ドゥンデヤ諸島」のエピソードも収録。
    改めて読むと、あまりに奇想に眩暈を起こしそうになる。

    アンリ・ミショーの「アク族の国にて」
    あまりにも荒唐無稽、なのに、もしそうなら…とぞっとする。
    暴力と刑罰と狂乱に満ちた国を垣間見る旅行者の恐ろしさよ。
    思い起こせば、皆川博子も「絵小説」でミショーを引用していたっけ。
    やはり違う異世界の国を見ている才人がたどりつく場所は同じようだ。

    架空の町といえばやはり。
    H・P・ラヴクラフトの「サルナスをみまった災厄」。
    「サルナスの滅亡」のタイトルの方が著名か。
    旧支配者・水蜥蜴神ボクルグを崇拝した太古の異形の知的生物たち。
    その容貌はさながら両生類で、緑色の体色をし、目は膨れ上がり、声も出さない。
    時代は移り変わり、その地へと足を踏み入れた人類に彼らは駆逐され……。
    クトゥルフ神話初心者でも夢中になる、おぞましくも魅惑的な異形神話の幕開け。

    中井英夫「街の中にタイムトンネルを見つけた」。
    なんでナチュラルにエッセイ風掌編が入っているのか…??
    そうだね、中井英夫だからね。

    掉尾を飾るのはプリニウスの「博物誌」地理の巻より、「幸福の島」の引用。
    数々の美しく豊かな自然の島々の描写。
    その後、最後の一行で突き放される書き口に背筋を凍らされる。
    東雅夫氏の編集の妙…。

  • ラブクラフトが入っているので読む。

    「サルナスをみまった災厄(さいやく)」
    これがまたよかった。ムナールという土地の湖沿いにある邑々の繁栄と崩壊。どこか西アジアの乾燥地帯の平原かなと想像した。最初の邑イブは”みるもいやらしい生物”が住む石造りの邑で、水蜥蜴ボクラグをかたどった緑色の石造があった。のち人類がやってきてサルナス邑を滅ぼし、サルナスは繁栄と享楽の時を貪る。だがイブ陥落1000年祭のさなか、サルナスはあとかたもなく消滅し、あたり一体は湿原と化し、ただ緑色の蜥蜴が這いまわるだけとなり、ただ水大トカゲボクラグをかたどった緑色の石造があるのみとなった。

     ・サルナスをみまった災厄(さいやく)(The Doom that Came to Sarnath 1920発表 同人誌「ザ・スコット」44号)

    1997.10.15発行 図書館

  • 20171220読破

  • 既読話がけっこうあるけど同じシリーズの夢よりは面白かった。山尾悠子「遠近法」城昌幸「ママゴト」稲垣足穂「薄い街」あたり味わいが好き。

  • 山尾悠子すごい

  • 「ここではない、どこか」を熾烈に思い描くことから、なべての神話伝説や幻想譚は幕を開ける。ユートピア、隠れ里、異界…架空の町をテーマにした、古今東西の物語を集めたアンソロジー。

  •  全20巻 揃  第1巻

    鴎外・鏡花・シェイクスピア・バルザック等はもちろんのこと、ギリシア神話、中国の怪談、インドの説話、江戸の随筆、そして現代文学まで、時間と国の枠を超えたまったく新しい文学シリーズ!! 古今東西の文学作品に繰り返し現れる、不思議で魅力溢れるテーマ別に各巻を編集。従来のアンソロジーではほとんど視野に入らなかった日本の古典文学も、現代語訳で多数収録。

    『書物の王国1 -架空の町』
    『書物の王国2 -夢』
    『書物の王国3 王侯』
    『書物の王国4 月』
    『書物の王国5 植物』
    『書物の王国6 鉱物』
    『書物の王国7 人形』
    『書物の王国8 美少年』
    『書物の王国9 両性具有』
    『書物の王国10 同性愛』
    『書物の王国11 分身』
    『書物の王国12 吸血鬼』
    『書物の王国13 芸術家』
    『書物の王国14 美食』
    『書物の王国15 奇跡』
    『書物の王国16 復讐』
    『書物の王国17 怪獣』
    『書物の王国18 妖怪』
    『書物の王国19 王朝』
    『書物の王国20 義経』

  • 文体が古いし、合わない小説が多かったので読むのが大変でした。

  • どこかにあるかもしれない、まち。

    あるテーマごとに古今東西の書物の中から抜粋して集められた集大成。
    色々なテーマがある中、この「架空の町」に惹かれたためここから手を付けた。
    ・・・までは良かったのだが、どうもこの文章は読む気にならない。
    3分の1程度読んだところで音を上げてしまった。

    著者は様々・・・にもかかわらず読み通せなかった。既読の『猫町』ですら。

    機会があればまた読む事もあるだろう。

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