夢 (書物の王国)

著者 :
制作 : 東 雅夫 
  • 国書刊行会
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本棚登録 : 98
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336040022

感想・レビュー・書評

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  • これは夢の話です。未来へ希望に燃えた夢の話ではありません。眠っているときにみる夢の話です。

    面白い夢を見たとします。夢を見ているときはとても面白いのに、朝目覚めて他人に話してみると、なぜかそれは面白くなくなっています。何がそんなに可笑しかったのかちっとも訳が分かりません。そんなことはないでしょうか。わたしは度々そんな気まずい雰囲気に陥ってしまいます。話してる方がそうなのだから、他人の夢の話を聞いている方はもっとつまらないでしょう。まして目覚めときに覚えている夢はほんの稀で、夢は夢の世界に置き去りになっています。

    それでも、悪夢は別物です。悪夢は時として目覚めたあとにも追いかけてきます。そして、繰り返し見ることもあります。わたしは幼い頃に見た悪夢を大人になった今もしっかりと覚えています。悪夢はひっそりと現実世界に種を蒔いているようです。ふとした綻びから芽を出し、思わぬ時に人を恐怖に陥れます。悪夢はなかなか忘れることが出来ません。昼間忙しくしていても、ふとした瞬間思い出してはどきっとしてしまいます。
    そんな悪夢は他人が聞いても恐ろしいものです。聞けば他人の悪夢が今夜自分の夢に浸食してくるようで耳を塞ぎたくなります。それでも幼い頃にゾクゾクしながら聞いた怪談話のように、聞きたくないのに聞きたいような、そんな気持ちにさせてしまいます。

    ここには、他人の悪夢があちこちに散らばっています。悪夢が活字になると訳の分からない不穏な文章になって益々幻想的な不気味さを醸し出します。こんな話ばかり読んでいては白昼夢に脅かされるのは時間の問題です。もちろん、悪夢の話ばかりが収録されているわけではないのですが、印象に残ったのはやっぱり・・・悪夢の話でした。

  • 本作も随所に編者の妙を感じる…。
    佐川ちかの「童話風な」で、読者は”現実と夢の境目を見失う。

    幻惑と脅威の夢を渡り歩く中、多田智満子の「初夢」にかすかに穏やかなまどろみを覚えて小休止。金色のみかんの中に入ったことが、きっと誰しもあるはず。

    須永朝彦訳の『摂津国風土記』より「夢野」は、妾の女鹿を慕い海を渡る牡鹿による町名の由来話。こういう逸文が読めるのが、アンソロジーの面白い部分だな…と実感。

    同じく須永氏訳の『兎園小説』より「夢の朝顔」もとても好きな雰囲気だった…。夭折の娘と朝顔…おかかさま、花が咲きました…。

    『捜神記』より「蟻の穴の夢」も、短文ながら非常に幻想的でとても好みだった…やっぱり中国文学はいいね…。”審雨堂”という語の美しさよ…。

    人の見る夢を通り過ぎ、辿りついたのは半神半人の王の見る夢であった。まさかギルガメシュ叙事詩まで収録してくるとは…東雅夫氏の他分野に及ぶ本棚の広さよ…。
    『ギルガメシュ叙事詩』より「ギルガメシュとエンキドゥの夢」しかもこの部分を収録するとは…。これがかの有名な…フンババ退治にイシュタルの求婚…不老不死を求める旅…。あまりにも長く短い夢のような、唯一の友と過ごした王の時間。幸せな思い出が悲劇であるほどに、夢は醒めないのだ。

    澁澤龍彦「夢ちがえ」、最近めっちゃ澁澤龍彦よみたかったから嬉しかった…。めっちゃ好みだった…。耳しいた姫が恋焦がれた若武者…恋敵を討とうと暗躍する女と、その女を寵愛する姫の異母弟…。もうこれだけでたまらない…。黒いおとぎ話…呪術…舞踊…天狗…生首…ドラコニア・ロマネスク…最高だ…。

  • 夢がテーマの積読を崩す試み。最初の1冊は書物の王国。やはりアンソロジーは魅力的。
    「童話風な」「果樹園」「ゆめ」「初夢」カフカ「夢」「夢野 『摂津国風土記』逸文」「死後」「夢の朝顔 『兎園小説』」「夢の体」「帰途」「夜のバス」「夢の話」「竜の道」「蟻の穴の夢 干宝『捜神記』」「幻しの幼児」三橋一夫「夢」「死の刻限」トゥルゲーネフ「夢」「「人生」という名の家」「たった一人」「ギルガメシュとエンキドゥの夢 『ギルガメシュ叙事詩』」「ヤコブの夢 『創世記』」「ヨハルネト=ラハイのこと」「<病める紳士>の最後の訪問」「円環の廃墟」「夢ちがえ」「夢の検閲官」「悪夢志願」「夢の姿」「睡眠中の現象若干について」を収録。

    夢の不思議、夢との付き合い方、夢判断、夢と現実との関係など多種多様な作品が目白押し。神のお告げであると考えられたということで聖書の断片まで入っている(ボルヘスの『夢の本』を踏まえているらしい)。日本でも、自分に懸想している人が夢に現れるというし(「夢ちがえ」でも描かれている)、「夜の衣を返してぞ着る」なんてこともあるから面白い。
    まず美しく醜く理不尽な逃れられない夢、死に直通の眠りに攫われる心地の「ゆめ」が素敵。はじめから見えている落ちの呼ばわる声が聞こえるようなカフカの「夢」もよかった。最後の一文にはほっとしたような、恨みがましい気持ちを覚えたような……。現に等しい夢を生きる「死の刻限」も好き。
    夢と現実の関係というところでは、夢見る者と夢見られる者の円環世界を描く「円環の廃墟」が際立つ。前の「<病める紳士>の最後の訪問」が多層世界なら、この配置はアンソロジーの醍醐味かも。熱帯の密林、瞑想の夢がデザインしていくホムンクルスに魅せられたのち、夢が破れて現が崩壊するのに震えた。とても端正で、趣向のところでも随一に美しいと思う。
    真面目なスラップスティック、「夢の検閲官」も面白かった。夢の舞台とその主を俯瞰し涙ぐましく職務をまっとうする検閲官達と、劇中を「この小説」と言って別次元から解説する仕組みがシュールで可笑しい。筒井康隆による夢のアンソロジーも気になってきた。

  • 夢に関するさまざまな話が集められているが既読の話が多かった。印象に残ったのはサヴィニオ「人生という名の家」。

  • 宮部みゆき「たった一人」、筒井康隆「夢の検閲官」、ボルヘス「円環の廃墟」、カフカ「夢」など、夢の文学に照準を絞り、古今東西より拾い集めた30篇を収録

  • 第2巻 全20巻

  • エンキドゥが都に来たのは大晦日のこと & 彼が王様に戦いを挑んだことに民草は驚いたが救われたという思いがした。っていう記述がありました。

  • 宮部みゆき「たった一人」が素晴らしかった。他に澁澤龍彦、筒井康隆、ダンセイニなど秀逸。やはりこのシリーズは面白い。

  • 「書物の王国」は、一冊ごとに「架空の町」「吸血鬼」などユニークなテーマを設けて集められた短編小説集のシリーズ。
    "書物の"と守備範囲の広そうなタイトルではあるものの、実態はほぼ幻想小説のオンパレード。
    何故か第二巻から挑戦してしまった。この巻のお題は「夢」。

    シュールな話が多いのでファンタジーぽさを求めて読むとしばし唖然とします。しかし古代の詩から現代幻想小説まで色々とりそろえてあって最終的には面白かったです。特にボルヘスを知ることができたのは大した収穫でした。編者に感謝。

    でもテーマ的にはどんぴしゃな気がする「夢十夜」(夏目漱石)がまるでスルーされているのは何故だろう…

    (2006年 6月)

  • 書物の王国シリーズの第2巻 (全20巻)

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著者プロフィール

ツイッターやインスタグラムで恋に悩む女性にむけて優しく背中を押す言葉を投稿している。著書に『だから、そばにいて』(ワニブックス)、『好きでいて』(セブン&アイ出版)、『何度も諦めようと思ったけど、やっぱり好きなんだ』(KADOKAWA)などがある。ツイッター @kafuka_monchi インスタグラム @kafuka022

「2020年 『だから、そばにいて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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