ピエール

  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336041913

作品紹介・あらすじ

「ピエール・グレンディングよ!あなたはかの父の一人子ではありません…この文を綴る手はあなたの姉のものなの。そうなの、ピエール、イザベルはあなたをあたしの弟と呼ぶ身なのです!」由緒ある家柄グレンディング家の若き後継者ピエール。美しき母とともに優雅な田園生活を送る彼の前に、異母姉と称する謎の女イザベルが現れる。濡れるような黒髪とオリーブ色の頬をした彼女の不思議な魅力に取り憑かれた彼は、イザベルを救うため、母も婚約者も捨てて彼女とともに都会へと旅立つ。やがて二人は、運命の糸に操られるまま、闇の世界へと迷い込んでいく…。あの『白鯨』の作者が人間の魂の理想と矛盾と葛藤を描いた、怪物的作品。

感想・レビュー・書評

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  • 所詮、人間の頭で考えたことは神の領域にはたどり着けず、どんなに策を弄したところで事態は裏目に出る。
    物語は公の下で正々堂々と誰からも自分とその行いを認めさせようとするために取った行動が仮面や自分の本性を現さない形で表に出ることになる。母は姉、姉は妻、恋人はいとこへ。その真正ではない役割でどんどん深みにはまっていく。だけど、人は辛い不幸な立場へと自分を導くのが好きな生き物だろうかと思わずにもいられない。どんなに愛しているかわからないほどの心はその対象を命の限りに憎むこともできるのだ。真実はどんどん変化する一方で嘘は変化しないのだそうだ。
    作中でピエールの作品はまったく売れるはずもないものらしいが、この小説は当時、本当に全く売れなかったらしい。そのことを思いながら読んでいると本当に切なくて苦しい。

  • 息苦しいくらいの不安感。
    ピエールがその為に地上の至福全てを犠牲にしようとした「イザベル」とイザベルの持つ「真実」。しかしそれは回転する台座に立つ像のように無限の変容をみせ、彼には「イザベル」も「真実」も掴みきれない。己の犠牲の崇高さを信じきれなくなったピエールを待つのは破滅のみ。
     
    物語を覆うインセスト的雰囲気にすっかりのまれてしまった。坂下昇氏の訳とメルヴィルフリークっぷりが楽しめる訳注、素晴らしい笑。

  • 2015/5/23購入

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著者プロフィール

1819年-1891年。ニューヨークに生まれる。13歳の時に父親を亡くして学校を辞め、様々な職を経験。22歳の時に捕鯨船に乗り、4年ほど海を放浪。その間、マルケサス諸島でタイピー族に捕らわれるなど、その後の作品に影響を及ぼす体験をする。27歳で処女作『タイピー』を発表。以降、精力的に作品を発表するものの、生存中には評価を受けず、ニューヨークの税関で職を得ていた。享年72歳。生誕100年を期して再評価されるようになり、遺作『ビリー・バッド』を含む『メルヴィル著作集全16巻』が刊行され、アメリカ文学の巨匠として知られる存在となった。

「2012年 『タイピー 南海の愛すべき食人族たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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