少女領域

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  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336041944

感想・レビュー・書評

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  • 図書館

    倉橋由美子『聖少女』と森茉莉『甘い蜜の部屋』についての考察が書かれているようだったので読んでみる。
    作者の本は他に『ゴシックハート』を読んだきりだけど、
    なぜだか個人的に文章が読みにくい。テーマはすごく気になることが多いから読んでしまうけれど....
    『甘い蜜の部屋』について、もうこれ以上の少女小説はない感じの説明はすごく興味深かった。

  • <うつくしい、物語としても見ることのできる少女評論>


     川端康成や尾崎翠、稲垣足穂、大原まり子等の小説を通じて、高原さんが描く少女画。それは少年のようでもあり、中性的で年齢不詳にして変幻自在で、境界に降り立ちます★

     ここで<少女>と言うのは、肉体の性別や年齢を超えた、意識として、精神としてのそれです。
     仮に、男性優位社会から与えられる役割を引き受け、社会から望まれる「女性らしさ」を体現することでうまく立ち回るのが、「大人(の女性)になる」ことだとしましょう。
     そんな役回りは甘んて引き受けたりなんかせず、誇り高い自意識をもたげるのが<少女>なのです☆

     現代でさえ、実生活において、<少女>は敗色濃く見えます。けれども勝算にかかわらず、ことに文学の世界では古典の時代から、<少女>は愛されている。時代を飛び超えて、どこまでも変身変化を遂げながら生きのびている。

     高原英理さんが標す(しるす)少女の系譜は、そう告げているのです★

     枠にとらわれない意識(自由)、型にはまらない概念(高邁)、それが少女性。
     一般的な「少女らしさ」というイメージも、すでに幼く甘たるく、あらかじめ不快に汚されています。そんなお着せの「女らしさ」「少女らしさ」をジェットで飛ばして、真に少女のための物語を探究する書物と出遭うことができた。幸福に思いました。

     どちらともつかない、ということをグレーゾーンと言うけど、グレーは光の波長の捉え方次第でプラチナになる☆ ここに銀色の光の帯が視えてくる。
     ついには<少女>という呼び方にも捕らわれないというように、それは消え失せ、銀色の粒子が四方に飛び去っていく……☆ うつくしいイメージのわく評論でした。

    「今の時代に、これを評論とは呼ばない」と著者自身は述べたけど、こういう物語のような評論・書評とこそ、多く出遭いたい。書籍の宣伝の一環ではない評論活動が、少女のように自由にくり広げられることを願います★

  • 少女を無意志、無力、無垢という非人格的状態に留めてきた従来の男性的視点ではなく、意志、可能性、判断力を持ち、両性具有的で、自由でありつつ魅力的な存在であろうとする、自由と高慢の要求を満たす「少女型意識」。その少女型意識の発生を、マニフェストである野溝七生子『山梔』、少女型意識の解放、龍膽寺雄 『放浪時代』、少女型意識の展開する川端康成『浅草紅団』、異なる世界の可能性の追求、尾崎翠『第七官界彷徨』、『山梔』以前の文学に表れる「少女」の意味合いの例としての室生犀星『或る少女の死まで』、わざと少女の姿を借りる事により性別そのものに批判的な稲垣足穂『菟』、父を共犯者とする事によって少女の自己愛が保証され、高慢が可能になる構造の倉橋由美子『聖少女』、森茉莉『甘い蜜の部屋』、「カワイイ」を超えるものとしての「凛々」という観念を提唱した中森明夫『オシャレ泥棒』、男性ジェンダーの獲得に依らない自尊心の形成、少女型意識の夢見る究極の自己像、松浦理英子『ナチュラル・ウーマン』、文字通りの「少女型意識体」大原まり子のSF作品『ハイブリッド・チャイルド』までの小説11作品を読み解く。阿字子から始まる阿字子の末裔の系譜。

  • 本書は野溝七生子『山梔』に始まる「少女型意識」の変遷を追っていく、ある種の「物語」です。これは、室生犀星の『或る少女の死まで』や当時のジェンダー見解(男性的価値観)とも比較しながら、「少女型意識=少女領域」を探究していく本書自体の「意識」も含めて、自由で高慢な物語とも読める、ということです。なんにせよ、『少女領域』の名に劣らぬ一冊です。
    もちろん、評論としてもとても興味深く読めます。だって取り上げている作品がまず魅力的ですからね。三大「少女」小説として名を連ねることも多い尾崎翠『第七官界彷徨』、倉橋由美子『聖少女』、森茉莉『甘い蜜の部屋』に関する言及はもちろん、大原まり子のSFにまで視野があるのはさすがとしか言いようがありません。
    あと、これは完全に私見かつ余談なのですが、わたしの場合、本書と、同じく高原さんの著作の『ゴシックハート』『ゴシックスピリット』との親和性が非常に高かったです。(なので感想を投稿しているまであります。)相補的、と言うと語弊がありそうですが、とにかく、わたしに「意志」を与え、「自由と高慢」という魅惑的な考えを教えてくれたのが本書であり、わたしのゴシックハートの重要な系譜となったのでした。

  • 野溝七生子『山梔』
    龍膽寺雄 『放浪時代』
    川端康成『浅草紅団』
    尾崎翠『第七官界彷徨』
    室生犀星『或る少女の死まで』
    稲垣足穂『菟』
    倉橋由美子『聖少女』
    森茉莉『甘い蜜の部屋』
    中森明夫『オシャレ泥棒』
    松浦理英子『ナチュラル・ウーマン』
    大原まり子『ハイブリッド・チャイルド』

    好きなものが好き、という出発点から、これほどに美しい評論にして成長の物語が書けるとは驚愕。


  • 少女を、ものいわぬ欲望の対象ではなく、行動する主体としてとらえた画期的な評論。

  • 未読。ちゃんと読んでおきたい。

  • この本をスルーして「少女」について語ってはならない。必読書。
    ※ランク付け反対のため常に★5

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著者プロフィール

高原英理(たかはら・えいり):1959年生。小説家・文芸評論家。立教大学文学部卒業、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。85年、第1回幻想文学新人賞を受賞。96年、第39回群像新人文学賞評論部門優秀作を受賞。編纂書に『リテラリーゴシック・イン・ジャパン 文学的ゴシック作品選』『ファイン/ キュート 素敵かわいい作品選』、著書に『 ゴシックスピリット』『少女領域』『高原英理恐怖譚集成』『エイリア綺譚集』『観念結晶大系』『日々のきのこ』ほか多数。

「2022年 『ゴシックハート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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