- 本 ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336041944
感想・レビュー・書評
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図書館
倉橋由美子『聖少女』と森茉莉『甘い蜜の部屋』についての考察が書かれているようだったので読んでみる。
作者の本は他に『ゴシックハート』を読んだきりだけど、
なぜだか個人的に文章が読みにくい。テーマはすごく気になることが多いから読んでしまうけれど....
『甘い蜜の部屋』について、もうこれ以上の少女小説はない感じの説明はすごく興味深かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
少女を無意志、無力、無垢という非人格的状態に留めてきた従来の男性的視点ではなく、意志、可能性、判断力を持ち、両性具有的で、自由でありつつ魅力的な存在であろうとする、自由と高慢の要求を満たす「少女型意識」。その少女型意識の発生を、マニフェストである野溝七生子『山梔』、少女型意識の解放、龍膽寺雄 『放浪時代』、少女型意識の展開する川端康成『浅草紅団』、異なる世界の可能性の追求、尾崎翠『第七官界彷徨』、『山梔』以前の文学に表れる「少女」の意味合いの例としての室生犀星『或る少女の死まで』、わざと少女の姿を借りる事により性別そのものに批判的な稲垣足穂『菟』、父を共犯者とする事によって少女の自己愛が保証され、高慢が可能になる構造の倉橋由美子『聖少女』、森茉莉『甘い蜜の部屋』、「カワイイ」を超えるものとしての「凛々」という観念を提唱した中森明夫『オシャレ泥棒』、男性ジェンダーの獲得に依らない自尊心の形成、少女型意識の夢見る究極の自己像、松浦理英子『ナチュラル・ウーマン』、文字通りの「少女型意識体」大原まり子のSF作品『ハイブリッド・チャイルド』までの小説11作品を読み解く。阿字子から始まる阿字子の末裔の系譜。
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本書は野溝七生子『山梔』に始まる「少女型意識」の変遷を追っていく、ある種の「物語」です。これは、室生犀星の『或る少女の死まで』や当時のジェンダー見解(男性的価値観)とも比較しながら、「少女型意識=少女領域」を探究していく本書自体の「意識」も含めて、自由で高慢な物語とも読める、ということです。なんにせよ、『少女領域』の名に劣らぬ一冊です。
もちろん、評論としてもとても興味深く読めます。だって取り上げている作品がまず魅力的ですからね。三大「少女」小説として名を連ねることも多い尾崎翠『第七官界彷徨』、倉橋由美子『聖少女』、森茉莉『甘い蜜の部屋』に関する言及はもちろん、大原まり子のSFにまで視野があるのはさすがとしか言いようがありません。
あと、これは完全に私見かつ余談なのですが、わたしの場合、本書と、同じく高原さんの著作の『ゴシックハート』『ゴシックスピリット』との親和性が非常に高かったです。(なので感想を投稿しているまであります。)相補的、と言うと語弊がありそうですが、とにかく、わたしに「意志」を与え、「自由と高慢」という魅惑的な考えを教えてくれたのが本書であり、わたしのゴシックハートの重要な系譜となったのでした。 -
少女を、ものいわぬ欲望の対象ではなく、行動する主体としてとらえた画期的な評論。
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未読。ちゃんと読んでおきたい。
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この本をスルーして「少女」について語ってはならない。必読書。
※ランク付け反対のため常に★5
著者プロフィール
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