エストリールの夏 (野坂昭如コレクション 3)

  • 国書刊行会 (2001年1月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (642ページ) / ISBN・EAN: 9784336042637

感想・レビュー・書評

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  • これまでとは毛色の違う短編が多く、かなり読みやすくなっていた。「本朝淫学事始」エロトピアのノリでへらへら笑いながら読んでいたら(千手観音の指の形って、そうなの!?)やっぱり最後しんみりしてしまう。どうも、屍姦、近親相姦を盛った話よりは、男数人ワイワイガヤガヤ何かやり始めてひっちゃかめっちゃかになっていく話が面白くて、「死の器」はそのパターンに老いの問題も絡んできて、よかった。「サムボディ・インサイド」文字通り、自分の中の誰か。これもとても面白かった。

    しかしこのシリーズ、函も装丁も本当にかっこいい!

  • 面白いや。それだけしか浮かんでこない。エロティックな話がほとんどでそれはそれで非常に面白いのだが、他の系統の話も混ぜられていた方が緩急がつけられて読み易いようにも感じられる。ただ、そんな個人的な好みを除外しても筆者の力強い筆力、描写もそうだが人間観察の鋭さに圧倒され打ちのめさせられるのである。
    テーマとして扱われているのが性ということもあり、人間の風俗を耽美に描き出す事に長けていることが本コレクションを読了してヒシヒシと感じられる。
    しかしながら、作者の他の面、もっと違うテーマでの題材を扱った時にどのようなストーリーが展開していくのか。ということは本書だけでは読み取ることができず、他の小説に手を伸ばす必要があるだろう。
    例えば、火垂るの墓、未読だがそのような話だと記憶している。
    いちゃもん的に文句を書くとするならば、女性視点での深層心理を描き出すのは成功しているように思われるが、女性があまりにも単純に扱われすぎている――成功していた女性が、男にコロッと騙される。その理由も、単純に寂しかったから。と言うのは、個人的には若干の消化不良を起こさせる要因になっている。
    また、戦前、戦後から’70年代まで描き出す作者の観察眼に人生変遷がふと感じさせられてとてもとても感慨深く、酒でも飲みながら想いに浸ってしまうのである。
    誰か酒でも飲みながら本書を語り合ってみませんか?そんなことを言いだしたくなる一冊である。

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著者プロフィール

野坂昭如

一九三〇年(昭和五)神奈川県生まれ。親戚の養子となり神戸に育つ。四五年の空襲で養父を失い、のち、実家に引き取られる。旧制新潟高校から早稲田大学第一文学部仏文科に進むが、五七年中退。CMソング作詞家、放送作家などさまざまな職を経て、六三年「エロ事師たち」で作家デビュー。六八年「アメリカひじき」「火垂るの墓」で直木賞を、九七年『同心円』で吉川英治文学賞を、二〇〇二年『文壇』およびそれに至る文業で泉鏡花文学賞を受賞。そのほか『骨餓身峠死人葛』『戦争童話集』『一九四五・夏・神戸』など多くの著書がある。二〇一〇年(平成二十七)死去。

「2020年 『「終戦日記」を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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