自伝の小説 (新しい台湾の文学)

  • 国書刊行会 (2004年10月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (350ページ) / ISBN・EAN: 9784336043849

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  • 台湾現代文学。台湾の共産党トップの座についた女性、謝雪江の生涯を描く小説。1901-1970の生涯はアジアの20世紀を体現しているとも云える。日本植民地→国民党白色テロ→中国に亡命して遭遇した文革、3つの時代を生きた活動家。この史実を追うだけでも勉強になる。
    度重なる謝雪江の性愛描写は、本作の特徴のひとつで、濃密。これらは、センセーショナルを際立たせる目的ではなく、家父長制からの解放という台湾の女性独立問題を語って雄弁であり、ひとりの女性のエネルギッシュな生のほとばしりとしても感動的。

  • 台湾を代表する女流作家、李昂(リーアン)、1999年の作品。戦後国民党政府により長く続いた戒厳令が解かれて、政治意識の発露から取り上げたがかつて台湾共産党のリーダー謝雪紅だった。

    日本統治下から国民党支配の時代、長く抑圧されてきた台湾の民衆のなかでもさらに抑圧されてきた女性の立場。父の葬儀代の肩代わりに身売りをされた経験をもちながらも、男尊女卑という旧い因習や植民地としての民族支配を乗り越え、女性として革命家として、自らアイデンティティーを獲得していき台湾共産党のリーダートップまで上り詰めた謝雪紅の生涯を描く。

    本来、フェミニズム文学として価値がある作品なのだろうが、戦前の日中台の共産党の状況、「渡政」(わたまさ)とか「山川イズムや福本イズム」が出てくるところが面白かった。

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著者プロフィール

1952年、台湾彰化県鹿港生まれ。本名は施淑端。中学2年で小説を書き始め、高1の作品「花の季節」が新聞文芸欄に採用され、『1968年短篇小説選』に選ばれ作家デビュー。1970年台北の文化大学哲学部に入学、75年アメリカのオレゴン州立大学演劇学科大学院に留学、78年台湾に帰国後、創作活動を再開。78年、『愛情試験』で聯合報文学賞佳作、81年「誤解」で時報文学賞佳作、「別可憐我,請教育我」で報導文学賞、83年 『殺夫』(邦題『夫殺し』)で聯合報中篇小説賞主席を受賞。2002年第11回台湾頼和文学賞、04年フランス文化部の芸術文化勲章、12年第35回呉三連文学賞受賞。16年台湾中興大学名誉文学博士を取得。現代女性の内面や性、社会の伝統との葛藤をテーマに創作を続ける。邦訳書はほかに、『迷いの園』(国書刊行会)、『自伝の小説』(国書刊行会)いずれも藤井省三訳。作品は日本語のほか、英・独・仏・蘭語など各国語で翻訳刊行されている。

「2018年 『海峡を渡る幽霊 李昂短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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