ソラリス (スタニスワフ・レム コレクション)

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感想 : 70
  • Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336045010

作品紹介・あらすじ

惑星ソラリスを探査中のステーションで異変が発生した。謎の解明のために送りこまれた心理学者ケルヴィンの目の前に自殺した恋人ハリーが姿を現し、彼はやがて悪夢のような現実と甘やかな追憶に翻弄されていく。人間とはまるで異質な知性体であるソラリス。そこには何らかの目的が存在するのだろうか。コンタクト-地球外の知性体との遭遇について描かれた、最も哲学的かつ科学的な小説。広大無辺な宇宙空間において、理解不能な事象と愛の記憶に直面し、人は何をすべきか。タルコフスキーとソダーバーグによって映画化された新世紀の古典、ポーランド語原典からの新訳版。

感想・レビュー・書評

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  • 先日読んだ『読書で離婚〜』で課題図書になってた本。ガチガチSFの古典というイメージで未読だったがかっこいい装画と出だしのサスペンス感で期待。が思ってた以上に頭がついていけなかった‥。訳者沼野さんの解説で少しは理解できたかな。

  • 再読。細部を結構忘れていたので、面白かった!ソラリス学に関する叙述、ソラリスの海の描写が美しくも気味悪くもあって、よかった。何よりもこのスケールの大きさが。映画は観たことがないので、この海や、海から生まれるミモイド、対称体が映像でどのように描かれているのか観てみたい。今回も絵に描いてみたけれど、サッパリだった。そしてまたこのなんともいえない読後感が、精神的には負担だけど、考えさせられる読書ができるということでは非常に有意義だと思う。

  • スタニスワフ・レムの「ソラリス」である。
    タルコフスキーの映画は何度も観ていて、その度に心地よく寝る。でも面白い。「退屈」と「面白い」というのが両立する不思議な映画だ。
    面白い映画なのに寝ることをレム睡眠と言う。嘘です。

    原作のハヤカワ文庫版「ソラリスの陽の下で」のほうは、どうせ小難しくって退屈なんでしょ、と長らく積読状態のまま、どっかにいってしまった。新訳が出た時に買ったものの、やっぱりそのまま…。今回、ディック、ティプトリーと読んだ勢いで手にとる。夏だし、海だし。

    間違ってました。普通に面白いです。

    解説によると、レムはタルコフスキーの映画は気に食わなかったようで「お前は馬鹿だ」と言い放ったとか、ソダーバーグの映画には、「私の書いたのは『宇宙空間の愛』じゃなくて『ソラリス』なんだよ!」(要約)とかなりご立腹。

    でも、作者がなんと言おうとこれは「愛」の物語でしょう。

    ソラリスステーションにやってきたケルヴィンの目の前に現れる10年前に自殺した妻ハリー(しかも不死身)。
    過去の妻ではないとわかっているからこそ、愛している、という主人公。
    そして、自分が偽物だと気づき悩むハリー。
    「自分は本物なのか?」というディックでおなじみのテーマをまったく違ったロマンチックに見せてくれる。
    手紙の署名を一旦書いて塗りつぶすところなんてもう切ない。
    この二人の恋愛が「絶対的他者」とのコミュニケーションのメタファー……じゃないな。

    「人間形態主義」「人間中心主義」として批判されるが、そこからはみ出して理解することはできない(認識することはできても)。そこからはみ出すと「神秘主義」「宗教」になる。あ、だから「欠陥を持った神」の概念か?
    そういえば、タルコフスキーの映画化している「ストーカー」の原作も、絶対的他者としての異星人とのファースト・コンタクトものだった。
    あと、ふと思ったのは、怪談「牡丹灯籠」。

  •  宇宙の本質について、異様なほど幅広く理論的な考察を行いながら時を過ごすと言われる星、ソラリス。そのソラリスを取り巻く海は、人間がコンタクトを図ろうと試みると、その人間の「記憶の中で一番頑強で永続的な痕跡」を意識の底から拾い出し、実体化させる性質を持っている。ソラリスの研究者であるケルヴィンはこの作用により、若いときに自らの過ちで自殺に追い込んでしまった妻と再会。妄想でも本物の人間でもない彼女と、不条理な、苦痛にまみれた愛の日々を過ごすこととなる。
     詩情あふれるタルコフスキー監督の映画『惑星ソラリス』により、広く知られることになった本書だが、著者はこの映画のラストシーンに激怒したと伝えられている。確かに、絶対的他者として描かれたはずのソラリスを、望郷への慰撫に堕した非はタルコフスキーにあるだろう。けれども、おそらくは、彼もまた犠牲者なのだ。
     タルコフスキーはロシアからの亡命者で、54歳の若さでパリで客死した。彼の、「記憶の中で一番頑強で永続的な痕跡」は、明らかに故国であったろう。そのため、本書の圧倒的な世界観に打たれた彼はソラリスの海に呑まれ、自らの作品を感傷に売り渡すことになってしまった。
     原作のある映画では、恣意的な精神活動が起こることがある。これもまた、化学反応の1つなのかも知れない。

  • 発見から数十年経過しても謎に包まれ、基地に送り込まれた人々は不思議な体験を続けている。
    未知ゆえ、ソラリス学なるものも生まれるも解明には程遠い。
    緻密に編み込まれたソラリス学に圧倒される。

  • とてつもなく大きい。自分の想像力を最大限に解き放ったとしても全く及ばない、大きな次元の一端をレムは壮大に描き示してくれる。ソラリスの海が変容し蠢く表情をイメージするのはとても難しいが、未知ゆえの大きな力に巻き込まれ漂う小さな欠片の自分を感じて畏怖した。怖いけど決して不快ではなかった。何のためにこの宇宙は存在し生命は宿るのか。どんなに考えても答えが見つからない残酷な道をこれからどう歩んで行けばいいのか。不分仕舞。けど‥ミステリアスでスリリングな物語の力に助けられて、この難解な化け物を慈しむ気持ちが芽生えた。

  • 人間という存在を見つめなおすこと。
    SFを読むことの、ひとつの醍醐味だ。
    その点において『ソラリス』は第一級の作品だろう。

    想像してみよう。宇宙人は、どんな姿をしているだろう。
    タコ、アメーバ、ロボット、あるいは(これが最もありそうに思われるが)人間に似ているだろうか?彼らは何を考え、どんな言葉を話すだろう?人間に対して友好的だろうか、それとも敵対的?
    こうして私たちの想像する宇宙人像は、どれも地球の、人間の価値観に基づいている。宇宙人は私たちと同じような姿をし、同じように考え、コミュニケーションし、(友好的にせよ敵対的にせよ)人間と何らかの「コンタクト」を行うだろう、と。私たちは無意識に自分と似たような宇宙「人」を仮定しているというわけだ。だが、彼らが人間の想像を遥かに超えた存在であったなら?
    未知なるものとの「コンタクト」は、我々が考えるようなものではないかもしれない。そもそも「コンタクト」自体が可能かどうかも分からない。知的生命体が人間にとって理解可能な存在だという保証はどこにもないのだ。
    この点に深く斬りこむのが、ソラリスの「海」の存在である。

    未知との遭遇というテーマ自体はSF界では定番ともいえる題材だが、『ソラリス』はその切り口が一味も二味も違う。サイエンス・フィクション、いや、サイエンスそのものに対するメタ的な視点が斬新だ。科学とは「人間が」世界を把握する方法のひとつであり、それ以上でもそれ以下でもないということを思い起こさせる。


    主題の示唆性もさることながら、作りこまれた世界観がこれまた素晴らしい。
    作者レムはまるで見てきたかのように惑星ソラリスの世界を描き出す。読者は、赤と青ふたつの太陽に照らされる「海」の星を実際に訪れたような錯覚を味わうだろう。読んでいる間中、私の脳裏には焼きつくような鮮烈な色彩が映り続けていた。一度も目にしたことのないはずのソラリスの世界に、すっかり惹きこまれてしまった。

    読み終わってページから顔を上げると、その瞬間、緑の木々の間をざあっと音を立てて風が吹き過ぎた。図書館の窓辺から見える夕日は懐かしいあの色だ。ただいま、私たちの地球。

  • 惑星ソラリスに着いてから、ほぼステーション内で物語は完結。ステーション内には主人公ケルヴィン含め4人しかいないという、なかなか密度の濃い作品。リアリティが増す要素でもあるけど、ソラリスの「海」についての様々な論文が示されるが、そこが読むのにちょっと疲れた。
    サスペンス要素あり、恋愛要素ありで、楽しめたけど、根底に流れるのは、

    人間は人間以外と対等に関係を持てるのか?人は人の形をしたものを探し求めているだけではないか?
    −人間形態主義(アントロポロムフィズム)−

    という問いかけのような気がした。
    それは、今の陳腐化したAIという言葉の世間での使われ方にも似ているのではないだろうか。

  • 惑星ソラリスでの非日常的世界とのコンタクトと地球人間の恋が描かれる。「海」は簡単には受け入れてくれない。意志をもって「日常」に疑問を抱かせる。狂気と紙一重の人物たちの思考も面白い。ポーランド語からの訳でこなれていて、いい訳だ。解説での著者自身の本作の言及があり、助かった。興味深い。映画化のできには不満もあったようだ。念願かなっての読書であった。

  • SF。ホラー。
    難しそうというイメージで敬遠していた作品。
    思っていたよりも全然読みやすい!
    ホラーとしてもラブストーリーとしても読めるからでしょうか。
    とはいえ、解説の著者のエッセイによると、主題はあくまでも"未知なるもの"とのコンタクト。
    ソラリス学について描写した「怪物たち」「思想家たち」の章は、非常に濃密で、はっきり言って読みにくいが、大事な箇所だと信じて頑張って読みました。この部分で読者の想像力がおおいに試されそう…。
    "人間には理解できない存在"を描き切った、もの凄い作品ということは確かです。

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著者プロフィール

1921 年、旧ポーランド領ルヴフ(現在ウクライナ領リヴィウ)に生まれる。クラクフのヤギェロン大学で医学を学び、在学中から雑誌に詩や小説を発表し始める。地球外生命体とのコンタクトを描いた三大長篇『エデン』『ソラリス』『インヴィンシブル』のほか、『金星応答なし』『泰平ヨンの航星日記』『宇宙創世記ロボットの旅』など、多くのSF 作品を発表し、SF 作家として高い評価を得る。同時に、サイバネティックスをテーマとした『対話』や、人類の科学技術の未来を論じた『技術大全』、自然科学の理論を適用した経験論的文学論『偶然の哲学』といった理論的大著を発表し、70 年には現代SF の全2 冊の研究書『SF と未来学』を完成。70 年代以降は『完全な真空』『虚数』『挑発』といったメタフィクショナルな作品や文学評論のほか、『泰平ヨンの未来学会議』『泰平ヨンの現場検証』『大失敗』などを発表。小説から離れた最晩年も、独自の視点から科学・文明を分析する批評で健筆をふるい、中欧の小都市からめったに外に出ることなく人類と宇宙の未来を考察し続ける「クラクフの賢人」として知られた。2006 年に死去。

「2021年 『地球の平和』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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