ラピスラズリ

  • 国書刊行会 (2003年9月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (237ページ) / ISBN・EAN: 9784336045225

感想・レビュー・書評

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  • 深夜営業の画廊に飾ってあった三葉の銅版画から導かれる、冬を知らない冬眠者たちをめぐる、幻想小説連作集。

    静謐で、歪んだ美しい世界がおごそかに陳列されている。
    ストーリーを説明するのはとても難しい。
    まるで夜に見る夢を小説化したようで、読んでも読んでも腑に落ちることなく、放り出されたまま。
    無駄のない硬質な文章は平易なのに、視点や時制がなめらかに切り替わってどんどん相がズレていき、読み進めることが困難なのだ。

    常識や理性とかいったものは、この作品を鑑賞するのには邪魔になってしまう。
    ただただ瞠目し、耽溺するのみである。

  • 華美な表現や難解な言い回しを用いない、装飾を極力落としたような文体、緻密に書き上げられた硬質な文章から、幻想的というほかない、豊かな世界が生まれ出る。代替不可能な世界を構築しながらも、そこに自己を投影せず、影すら残さない。硬質と感じるのは、作者と作品とのあいだに確固とした距離が横たわっているからだろう。工芸品のような作品集。

  • 文字で組まれたガラス細工のようなエッジのきいた文体。彼女の作品だけは、電子書籍ではなく紙の本で読みたいと思う。装丁がうつくしいこと。サージ生地の感触、その手触りを楽しみながら文字を思う快楽に浸る贅沢よ。

    20230415 再読。
    冬眠者たちの右往左往は、15年の沈黙をへた
    著者のイメージとも重なる。春に向かうところで
    終わるさきにあるのが本作ということか

  • 不思議で独特な構成。1話は語り手が立ち寄った画廊で架かっていた三枚の銅版画。画廊主からそれは小説の挿画として描かれたものであると説明される。2、3話はその銅版画に描かれている世界の物語。4話5話はそれぞれ2、3話と時代、場所も全く異なるが、冬の間冬眠する種族の存在がその世界を繋げている。硬質で緊密でしかも読者への説明が排された文章は、ともすれば読み手がその世界へ没入するのを拒絶する。自分だけなのかも知れないが、もしかしたらそれは額縁に収められた画を、額の外から眺める者の立ち位置なのかも知れないとも思った。

  • すごく楽しみにしていた「飛ぶ孔雀」がなぜピンとこず、山尾悠子ってこうだったかなあと前作を再読。記憶にある通りすごく良かった。

    そう、この硬質な感じ。目眩のするような魅惑的な世界なんだけど、決してわかりにくいわけではない。幻惑的であると同時に、すーっと腑に落ちる感がある。そこがとてもいい。

    「これは落ち葉枯れ葉の物語」というリフレインの効果的なこと。これぞ物語という気がする。繰り返し読んで飽きない、芳醇な世界にうっとり。

    「飛ぶ孔雀」はまた読み返そうと思っているのだけど、初読の印象では、なんだか山尾悠子独特のノーブルな感じが薄れたような気がして仕方がない。猥雑かつノーブルというのが魅力だと思ってきただけに、違和感がある。著者の進化(深化)についていってないオールドファンの繰り言かもしれないが。

  • やばいらしい。

  • わたしの拙い文章力では感想を書くことすら出来ない。
    圧倒的な言葉のイメージにずっぽりと埋もれてしまって。
    それはもう、息苦しいほど…

  • 雪と埃と落ち葉。降り積もっていくもの、落ちてしまったものは覆しようがない。息を潜めていたものたちが、ページをめくるたびにぶわっと撒きあがるような物語。

  • 白銀世界に白く犇めく氷花、
    <塔の棟>の天使窓に羽を休める
    雪の結晶の燦き、冬の眠りの物語。

    魔女の火炙り、地獄の窯のように熱く、
    鉄蓋の奥に夢を飼う、石の大竈の火の囁き、
    秋の落ち葉枯れ葉の物語。

  • すべてが意味ありげで惹き込まれます。そして文章が綺麗。綺麗、って漢字で書きたくなるような独特の硬い質感がありました。

  • 場面場面が心深くに残って、本を読んだというより沢山の写真を見ていたような気がしてくる。

    読み終えたあと心に残るのは、冷たい夜気と 玲瓏な早春の空、この美しい装丁を見たときの期待感を結晶したようなチラチラと光る石のイメージ。

    気品ある言葉で綴られた物語を読めたことに感謝します。


    そして作中に出てくるお料理がまた美味しそうで。カテゴリ分けを「幻想文学」とするか「食」とするか、非常に悩ましかった。

  • 2025/2/26購入

  • 今回は『歪み真珠』や『山の人魚と虚ろの王』ほどはノレなかった。なんだかんだ山尾悠子もこれで四作品目。あとは『飛ぶ孔雀』読んでみたいと思っています。
    感覚としては『夢の棲む街』に近く、夢を見ているかのような転換にはまりきれなかった。彼女の信じている美しいものと私が信じているものが違うのだろうなあという結論。その差として今回新しく感じたのは、最初の「銅板」という話で感じた、山尾悠子ジョット説笑笑、ジョットじゃなくてもよいのですが、中世の絵のようだなという感情がしっくりきています。今までルドンなど、それから本作はワッツの「希望」(ちょうどこの前テートブリテンで見て来たばかりなのでテンション上がりましたが)が使われているものの、私の美的感覚的にはジョットなんですよねえ笑

    最初の三作品の中では「閑日」が好きでしたが、全体だと「トビアス」「青金石」が好きでした。タイトルはラピスラズリですから、最後の「青金石」が一応代表作なのだろうか。「トビアス」はいきなり現代/未来で、山尾悠子って日本の名前の登場人物出せるんだ!(?)という驚き、またディストピア的な設定の中で出てくる冬眠者が好きでした。「青金石」も冬眠者が出てきて、こういう作品の作り方はすてきだなあと思いました。

  • 詩的な幻想文学でした。
    冬眠や流行り病などのモチーフが美しく、また印象的なフレーズにも惹かれて度々メモを取りました。
    4話「トビアス」が読みやすくて好きです。

  • 友人のお気に入りらしくて、積読してあったのを引っ張り出して読んでみた。

    心構えがなくて面食らったんやけど、戯曲的でシュールレアリスム文学やと分かると読み解きやすい。天の一角から舞台を眺めているような多角的な物語で、語り部の我も強い。冒頭からの重苦しさを昇華させる読後感はええんやけど、ザックリ読みたい人には向かんな~とも思う。

    途中からサクサク読んでしもたんやけど、丁寧な描写とか綺麗やから、たまに取り出してパラパラ読み直すと面白いかもしれへんな。

  • 不思議な世界。
    山尾さんの作品は夢みたいだと思って読んでいる、と言った人がいたけれどまさにそんな感じ。

  • 2019.04.19 図書館

  • 短編4編,中編1編
    「銅版」の版画の世界が次の短編,中編に広がっていく.冬眠という体質を持った特権階級の没落が,ゴーストの存在とともに描かれる.考えてみるまでもなく無防備な冬眠は不安の固まりである.それらが中世風の異世界の中で描かれていて,全体的に灰色がかった印象が残る,

  • 2003-10-00

  • 冬眠者と人形のものがたり。

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著者プロフィール

山尾 悠子(やまお・ゆうこ):岡山市生まれ、小説家。同志社大学文学部国文学科卒業。1975年、「仮面舞踏会」(「S-Fマガジン」早川書房)でデビュー。2018年、『飛ぶ孔雀』で泉鏡花文学賞、日本SF大賞、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。小説に『仮面物語 或は鏡の王国の記』、『オットーと魔術師』、『ラピスラズリ』、『増補 夢の遠近法』、『歪み真珠』、『山の人魚と虚ろの王』、エッセイ集『迷宮遊覧飛行』、歌集『角砂糖の日』などの著書がある。

「2024年 『初夏ものがたり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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