求む、有能でないひと

  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336046192

感想・レビュー・書評

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  • 世の中の矛盾を如何に捉え考えるべきか。ネットの社会になればなるほど有能で才能ある人々が多数の意見を飛び交合うと矛盾も創出する。その中で自分としての考え(発想の転換)をしっかり持ち、伝え、教えれることになることは世の中をうまく生きていける術かもしれない。そんな転換をミステリー作家のチェスタントンが記述した項目は参考になる。特に政治家、権力を持つ人々に対するメッセージとしても面白い。 「未来の労働力は国の金儲けのための事業に利用される」

  • みんな大好き「ブラウン神父」シリーズでは猫かぶってたのか!と思わざるを得ない、知性と毒気が全開なチェスタトンのエッセイ選集。実際、推理小説は余技で書いてたとの話が後書きにあり、信心と理性に皮肉をまぶし、世相をぶった切るチェスタトンがここでは楽しめる。テーマは多岐に渡っているが中でも資本主義批判の箇所は身につまされる事が多く、そうだよな、安月給で使われて金持ちの利益になる娯楽で束の間の消費を楽しんでる身って完全に奴隷だよな、と思わず全力で頷いてしまう。そう、カトリックは元来信仰と理性が共存する宗派であった。

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    復古でない革命はいまだかつて一度もなかった。歴史上未来にたいしてほんとうになにかを為した人物は、みな過去に目をむけていた。未来ばかりに目をこらすクセがどうもあやしいのは、なによりもこの事実があるからだ。30

    未来そのものを考えようとすれば、精神は無限にしぼんでバカになる。31
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    王権神授説はなにも観念論のたぐいではない。むしろ現実論であって、できそこないの人間のあいだにルールを確立するための実際的な手段だった。いわば信仰心のプラグマティズムである。王の子なら信用する、ではなく、人の子なら信用しない、というのが政治の基本信念である。65
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    広告宣伝についても同じ、その低俗さは無教育な人間のせいではない、少数のお上品な連中のせいである。街中の壁や建物に醜悪な絵をはりつけるのは、自宅の壁に精妙高価な絵をかける連中である。現代の生活が下品なのは、高学歴の支配者側がそうさせるからだ。86

    資本主義では「書く」ことができないし、「闘う」こともできない。祈るのも結婚もジョークも、その他人間らしいことはなにひとつできない。87
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    その演説は非常に理路整然として明瞭である。自分が言おうとすることとそのつもりのないことをはっきりと区別して、それを的確に表明できる彼ほどの才能は稀である。彼は自分の考えを知っている人間だった。

    彼が黒人奴隷制に反対ではあっても、そのために戦争しているのではないことを説明したくだりはみごとだった。まさにそこだけでも自分の意図を心得た人間と、自分の欲しいものしか知らないサルのちがいがわかる。リンカーンは切実に奴隷制廃止を望んでいたが、当時はそのつもりがなかった。自分がそれをすべきだとも考えてなかった。105
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    社会退廃の原因は、モラルの退廃ではなく知力の退行衰弱にある。107
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    金持ちの利益を意図した貧乏人の娯楽はあるけれども、金持ちの利益にはなりえない貧乏人の娯楽はありますか。110
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    軍隊の感情は崇高かもしれないが所詮は群集心理である。114

    われわれは、ただひとりのその男を見て幻想から覚める。ひとりきりの「兵士」の目を覗きみれば、その魂がかなたにとび去っているのがわかる。115
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    自分の国について手応えのある実態として、神聖な国土として考えられなければ、それは自分の国とはえいない。しかし、そう考えられるなら、それがあなたに愛されるのと同じくらいに他からは憎まれる可能性を認めるだろう。149
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    さながらトルコ人がトルコを旅した話をするごとく、仏教徒が仏教を研究した話をするごとくに語るが、トルコ人のために戦う気はないし、仏教に殉ずる気もない。さまざまに旅をして、さまざまな発見をしたとしても、いちばんすばらしいものを発見しない。自分よりも大事なものだけは決して発見しない。151
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    人間をクルわすのは、穏健であってはならないときに穏健なこと、保守してはならぬことが保守されるときである。155
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    話すのはどんな場合にもいちばん実際的なことで、たたいたり引っぱたいたりすれば子どもの悲鳴は引き出せるが、赤ん坊から言葉を引き出すにはじっくりと待たなければならない。そうして聞かれる言葉は、あなた自身が仕込んだ言葉ではないか。174
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    彼らは羊飼いのいない羊ではなく、むしろ大勢の羊飼いに大声で呼びかけられる羊である。学校にできることがあるとすれば、まさに、新聞や広告、新薬や新式学問など、耳目を引くあらゆる近代型大法螺に対して屈しない態度ではないか。

    暗愚を克服する光明を否定する必要はないが、いま求められるのは光を克服する光ではないか。181
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    宗教よりも教育のほうに関心が向くようになると、教育より野心が大事になってくる。

    人々が他人を凌いで自分の有利をはかることに専心する世の中になる。独学であろうが、国の教育であろうが、教育があることは単なる虚栄でしかなくなる。195
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  • 土屋賢二さんか内田樹さんの本を読みたい、と思って本屋さんへ行きましたが…こちらの書きっぷりのほうがはるかに役者が上なんじゃないかと思ってしまい、手ぶらで帰ってきました(笑)。

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