デス博士の島その他の物語 (未来の文学)

制作 : Gene Wolfe  浅倉 久志  柳下 毅一郎  伊藤 典夫 
  • 国書刊行会 (2006年2月1日発売)
3.74
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336047366

作品紹介

「だけど、また本を最初から読みはじめれば、みんな帰ってくるんだよ…きみだってそうなんだ」孤独な少年の元に物語の登場人物が訪れる-ウルフの代表作にして不朽の名作「デス博士の島その他の物語」、治療を目的とした島における少年たちの非情な運命を詩情豊かに描き出すネビュラ賞・ローカス賞受賞作「アイランド博士の死」、冷凍睡眠から目覚めた男を待ち受けていたものは…「不死」のテーマをサスペンスフルに展開する「死の島の博士」、文明崩壊後のアメリカでの謎と幻惑に満ちた彷徨を流麗な筆致で綴る「アメリカの七夜」、目の見えない少年が繰り広げる夢と奇蹟と冒険の物語「眼閃の奇蹟」、そして限定本に付された著者による「まえがき」を特別収録。「もっとも重要なSF作家」ウルフの傑作中短篇を集成。

デス博士の島その他の物語 (未来の文学)の感想・レビュー・書評

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  • 2/16 読了。
    美しいが奔放な母親と利害が絡んだ大人たちに囲まれて暮らす孤独な少年のもとに、冒険小説の登場人物たちがおとずれる「デス博士その他の物語」。問題を起こした子どもたちを再教育するために作られた人工島と、そこに送られてきた少年少女たちの物語「アイランド博士の死」。服役とともに冷凍保存されて40年眠っていた男が、かつて自ら開発した本の読み上げシステムに介入してディケンズのキャラクターを氾濫させる「死の島の博士」。以上のdeath/doctor/island並び替え三部作に加え、文明が衰退し、かつての中東やエジプトのようなエキゾティシズムの対象となった亡国アメリカをおとずれたイランの御曹司が記した、デカダンス幻想旅行譚「アメリカの七夜」と、遺伝子操作によって超能力を手にしたが、網膜を焼かれて盲目になった少年の逃避行「眼閃の奇跡」の二編を収録。

    想像の世界と現実の世界の、はざまに生きることを描いた作品群。「デス博士」の主人公は現実を拒絶して小説の世界が消えていくのを悲しみ、「アイランド博士」の主人公は考えたことがそのまま"島"という現実に反映される世界に住んでいる。「死の島」の主人公は40年を隔てた世界を現実として受け入れることができない。
    このテーマを端的に表しているのは「眼閃の奇跡」のラスト。盲目の超能力少年はオズの魔法使いの登場人物たちに導かれてさまざまな奇跡を起こすのだが、最後の導き手として主人公のメアリーが登場し、少年はニッティと再会することができる。少年はニッティにメアリーを紹介するが、ニッティは「メアリーなんて僕には見えないよ」と困惑する。そこで盲目の少年はこう返す、「だけど、僕にはニッティが見えないよ」。ここでは現実と空想の可換関係が示唆されている。

    ジーン・ウルフははじめて読んだけれども、ハイコンテクストな文章で頭をフル回転させてくれるファンタジーの書き手で面白い。「アメリカの七夜」はいろんな仕掛けがあるらしく、まだまだ読み込みが足りないけど、サラ〜ッと読むだけでもフローベールのエジプト旅行記などの立場を反転させたパロディのようでお洒落。

  • 満足感はある。でも、1回で理解しきるのは無理…。また読みなおそ。

  • SF作家として評価が高いジーン・ウルフ氏。氏の作品で評価が高かった別の作品に『ケルベロス第五の首』というのがあるんですが、そちらを読んでみたところ、もう何が何だかワケ分からんという感想だったので、じゃあこっちはどうよ、と思って読んでみました。表題作を含め、100ページ弱の中編が5つ、収載されてます。

    結論。
    どうも俺は、SF小説というジャンルそのものとの相性があまり好くないらしい。もうちょい細かく言うと、SF作家が描き出す、作家の頭の中の虚構の世界を楽しめないというか、その世界に浸って同じ景色を見られない、というか。

    ただ、そんな読書スタイルの自分であっても、表題作である『デス博士の島その他の物語』と、最後の作品である『眼閃の奇蹟』は楽しめました。他の3つは、ちょっとまだ理解できなかったという感じ。

    とはいえ、いずれの作品も「SF」=「宇宙や未来を舞台にした、派手な戦いや人生ドラマがある作品」という固定観念からは大きく外れていて、登場する人物の「身の回りの不思議なこと」を淡々と、かつ美しく描く筆致は素敵だなと思いました。
    ひょっとしたら、遥か遠くの宇宙のどこかで今、実際に起こっているかもしれないストーリー、という気もします。そして、自分のようなSFオンチでさえそのような感想を持てると考えたら、やはり凄い作品なのかもしれません。

  • 設定は未来、カテゴリーはSFなんだろうけどノスタルジックで幻想的な美しい物語たち。現実と虚構が交錯しその狭間に“何か”が隠されているのでは?とイマジネーションを刺激する。まだまだこの本の真髄は理解できていない。でもあせることない。何度も読み返していこう。その度にきっと“その他の物語”が発見できるに違いない。

  • 乱視読者のおススメで読んでみた、ジーン・ウルフの Archipelago 3 部作 + 中編二編を編んだ日本独自の中編集。

    うーん、これは堪能した。一番のお気に入りは表題作の The Island and of Doctor Death and Other Stories。百回読みたい。次いで、こっそり忍ばされた短編 Death of the Island Doctor か。

  • 文字を追う楽しさと、「きみ」と呼ばれ体験する喜びのりょうほうがある。言葉の魔術師が形容のなかに仕舞い込んだタネに惑わされ、妙な余韻とともにひっかかり続ける言葉に翻弄される快感もあるけれど、『眼閃の奇蹟』のラストはずるい。
    バターのような黄色に染まった線路の枕木を歩く終盤から最後の一行にかけての流れは、「完璧。」と言いたくなるうつくさとそれに勝る作者の視点のあたたかさにやられた。
    doctor,island,death 三部作もすばらしい。

  • 表題作が良かった

  • H.G.ウェルズ「ドクター・モローの島」へのオマージュを核とした連作と、その他の作品。
    連作三編のタイトルには、いずれも"doctor" "island" "death"の三語が含まれる。

    「デス博士の島その他の物語」
     母親とその恋人と共に暮らす少年が、
     本を読み、空想を膨らませて孤独を紛らわせていると、
     いつの間にか本の登場人物が傍らにいて語りかけてくる。
     二人称小説であり、
     少年に「きみ」と呼びかけるのは、後年、大人になった彼自身では?
     という指摘が解説にあるが、
     最終行、デス博士のセリフ「きみだって同じなんだよ」は、
     少年も所詮は物語内の一人物に過ぎないことを表していて、
     メタフィクションとして纏まっている。

    「アイランド博士の死」
     火星より遠くに位置する透き通った人工衛星を満たす海に浮かぶ島=
     アイランド博士の療養所で過ごす少年と少女。
     p.123-125の、魚の獲り方を教えてやるというイグナシオとニコラスのやり取りが、
     キリストとシモン・ペテロの対話を連想させる。
     ダイアンの死は利他的である故に、
     少年たちを治療する「アイランド博士の死」と呼んで構わない――と、
     博士は語るが、それは同時にニコラスの左脳=半身の死でもあった。
     島は脳のメタファーか?

    「死の島の博士」
     書籍にプログラムを仕込んで自動で本文を読み上げさせる発明をした男が、
     仕事上のパートナーである友人を殺害した――が、
     癌と診断されたため、コールドスリープに付され、40年以上後に刑務所で目覚めた。
     彼が出所するまでの様子が、彼の生み出した「話す本」によって語られる。
     但し、回路の故障で、ディケンズの著作中のキャラクターたちが、
     ある種の病の感染のようにファイルを移動し、入り乱れてしまい、彼にも干渉し始める。
     読み上げプログラムのせいで識字率が下がり、
     統治者に都合のいい世の中になるっていうのが怖い。

    「アメリカの七夜」
     「その他の物語」の一つで、未来の荒廃したアメリカへ降り立った異邦人の手記。
     「島医者」三部作より明快な幻想恐怖譚。
     ちょっとラヴクラフトの諸作に近い感触。
     語り手が「一人ドラッグ入り菓子ロシアンルーレット」で遊んでいるので、
     ハズレを食べた日の記述は正確なもので、
     当たりを引いてしまった一日だけが幻覚に彩られた、
     現実から遊離した内容になっている……はず。

    「眼閃の奇蹟」
     弱者に過酷な超管理社会をさまよう盲目の少年。
     表面的なものが目に入らないからこそ、実は彼には逆に何でも視えている。
     孤独な少年に寄り添う優しいおじさんの存在にホッとするが、
     彼もまた社会的マイノリティなのだった。

    先に読んだ『ケルベロス第五の首』もそうだったが、「島医者」三部作も、
    主人公が隠された真実に触れたときに受けるダメージを描いているようで、
    読んでいて、その痛みで胸が苦しくなるけれど、クセになる旨味みたいなものがある。
    それから、舞台を構成する都合からか、ジャンルとしてはSFであっても、
    紙面に展開するのは信頼できない語り手による叙述トリックミステリ風の世界なのがイイ。
    一番好きなのは最も短くわかりやすい「デス博士の島その他の物語」。
    デス博士は黒いアイパッチ着用……な気がする(笑)

  • 2012/7/26購入
    2015/4/6読了

  •  短編集で連作かと思ったらそれぞれの話は独立。それぞれが消化不良の感じがするおとぎ話。ずいぶんと期待したんだけれど、イマイチ乗り切れずに流し読み。

     エログロではないから、読みにくいわけではないが、作者の世界に入り込めなかったということか。落ち着いてじっくりと再読したら感想は異なるかもしれないが、今回の評価は低いなぁ。私だけではなく、けっこう読み手を選ぶ作家さんだと感じた。

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