限りなき夏 (未来の文学)

制作 : Christopher Priest  古沢 嘉通 
  • 国書刊行会
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レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336047403

感想・レビュー・書評

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  • 『夢幻諸島から』に比べるとこちらに収録の〈ドリーム・アーキペラゴ〉ものは官能的なイメージが強いかな。『夢幻諸島から』で感じたモヤモヤは解消されるどころか、ますます深まったのだがそれが心地よい。お気に入りは「火葬」かな。

  •  プリースト初の日本版短編集。

     えええ、プリーストって今まで日本で短編集出てなかったんかいと、あらためて驚いた。

     70年代のイギリスSFを代表する作家として、ベイリー、ワトスン、プリーストと並べて名前が出ることが多いけれど、ワトスンとかベイリーの短編集はずいぶん前に出てるのにねって、これはどちらも早川からで、プリーストはSF方面では早川から冷遇されていたことにも気付く。プリーストの(SF)長編は、サンリオと創元だからなぁ。
     それにしてもサンリオの『逆転世界』カバーには、続刊予定として『昏れゆく島へのフーガ』川本三郎訳、が告知されてて、あと少しがんばってくれればなぁと…。

     で、実は僕もあんまりプリーストは好きでなかったのだった。ベイリーやワトスンに比して、アイデアが世界を律するという傾向が強くなく、この人が書きたいのはSFとはちょっと違うんではないかなぁという偏見があったのだ。誰か、ワトスンとプリーストの間で行われた「アイデア」×「スタイル」論争をまとめてください。
     ま、プリーストのやっかいなところは、にもかかわらずアイデア自体は非常にSF的大技として魅力があるものだったりするということなんだけど。

     で、これまで刊行されるや即買いだった『未来の文学』の中では例外的にだらだらと引き延ばしたあげく購入。表題作は時間SF。『20世紀SF 70年代篇』で既読だった。でも大丈夫、すっかり忘れていたので。

     これ『時の娘』とかに収録されてたら、やっぱりプリーストは違うねぇと絶賛していたかもしれないな。SF的なガジェットはあるんだが、そんなことはお構いなしに失われた恋人の周辺をひたすらウロウロするだけの主人公がなんとなくバラード。ただ、バラードは女の尻を追いかけてるだけでもSFになるんだが、プリーストはなんだか違うんだよなぁという気もしないでもない。

    「青ざめた逍遥」はやはり時間SFで、単体で読むといい作品のはずなんだけど、表題作から続けて読むとややもたれる。

    「逃走」はデビュー作。収録作品の中では、圧倒的に早い時期の作品。時代の雰囲気の影響を受けてる感じだ。

    「リアルタイム・ワールド」は非常にストレートなSFで好感。既訳のある長編とかとどこか似たテーストがあって居心地がいい。


     ここからは「ドリーム・アーキペラゴ」連作。
     冒頭の「赤道の時」の世界描写が鮮やかで、これは〈夢幻群島〉の舞台を素描したものであり、ストーリーはまったくないのだけれど、上空からの視点で情景を書くプリーストの筆がのっている。
     読んでる最中から「誰に絵を描かせるか」とか、そんなことを考えてた。集中一番好き。

    「火葬」は、うーん、ホラーだよ。「奇跡の石塚」は世評が高いのだが、なんとなくピンと来なかった。あわただしく読んでしまったかもしれない。プリーストはそういう読み方をする作家ではないのだ。あと、このタイトルは田中啓文がなんかやりそうだなという気がした。

    「ディスチャージ」は軍を脱走した兵士が、群島に散らばる娼婦たちのネットワークの助けを借りながら、芸術家としての自分を取り戻していくという筋で、終盤のややサスペンスじみた展開は蛇足だと思うが、非常に面白かった。

     んー、こういうの読むと、やはり「ドリーム・アーキペラゴ」で一冊にまとめて欲しくなるよね。


     さて、本書の中でもっとも印象に残ったのは、古沢嘉通氏の訳者あとがきの安田均の翻訳SFへの貢献を確認する文章だったかもしれない。当初、プリーストを訳していたのは安田均だったし、ベイリーの日本における紹介を先導したのも彼だったと言っていいだろう。
     両者を読んだことがある人なら、この二人に同時にアンテナを立てることは難しいということが分かるはずだ。
     僕が中学生くらいの時にはすでに安田氏は「ゲームの人」だったわけで、遡行して海外SFについて調べ始めてから、SFに残した足跡の大きさに気付いたわけである。そのときにまいた種は、古沢氏の言うとおり、今になって芽吹いているとも言える。とはいえ、またSFの仕事もして欲しいなと思うわけだ。

  • 瀬名秀明氏の書評を見て。「火葬」など雰囲気のある作品もあったが、今ひとつ面白さがわからない。

  • デビュー作の「逃走」(1966)や<夢幻諸島(ドリーム・アーキペラゴ)>もの4編ほか、計8編を収めた日本オリジナル短篇集。美しく痛切な表題作(1976)と続く「青ざめた逍遥」(1979)が素晴らしい。抑制の効いた筆致によってロマンティシズムがいっそう引きたつ。そして「火葬」は絶叫もの。最悪の悪夢を見るようなおぞましさ。夢幻諸島シリーズ、島名索引がほしいところです(1966-2004)

  • てっきり短編集の文庫本も出てるものだとばかりと思って、探してしまったよ~(/_;)
    短編でもミスリードされてしまうのが悔しいやら、嬉しいやらなグラマー

  • 2017/5/2購入

  • C.プリーストは新作が出れば読みたくなる作家だが、「夢幻諸島から」は別格。「限りなき夏」の中のアーキペラゴのエピソードは、どれもがちょっと嫌な感じ系の物語で、久しぶりに背中がぞわぞわする思いを味わった。ピュスライムの「ピュ」の語感とか寒気します。
    「限りなき夏」別のアンソロジーで既読。ボートの3人男の1シーンが入っている。美しい物語。
    「青ざめた逍遥」タイムトラベルもの。これ表題作にしてもよかったのでは。この前見た映画「STAND BY ME ドラえもん」何となく思い出した。
    「逃走」デビュー作だそう。一読目はふーんという感じだったが、スライム的な要素も今思うと感じる。
    「リアルタイム・ワールド」あーこれも面白い。ニュースのありかた考え方、これメモっておこうと思ったんだけど、後半の夢幻諸島シリーズですっかり忘れてた。
    「赤道の時」掌編。
    「火葬」最後が酷い…。食べない方がいいと私も思ったんだよ。。。
    「奇跡の石塚」訳者解説を読むとプリーストの体験が濃厚に反映されていることが分かる。石塚の話は「夢幻諸島から」でも何となく印象に残っていた。
    「ディスチャージ」面白い!スティーブン・キングっぽい。

  • プリーストってSF作家だったんだとつくづく感じた。最初の2作が好き。

  • Dream Archipelago って響きだけでご飯3杯いけます。もったいないのでずっと積読状態だったけど、読み始めたらあっという間だった。ちょっともったいなかったかも。どうやらシリーズを何本か続けてから後付で構想したらしい「赤道の時」が、派手な事件は何も起こっていないようで現象的にはいちばん派手で壮大なビジュアルを喚起させるのもいい感じ。わりとストレートなホラー風味もあったりするけど、全体の印象はやっぱりプリーストっぽい静謐で屈折した大人向けのSF。おすすめ。

  • 収録作
    「限りなき夏」
    「青ざめた逍遥」
    「逃走」
    「リアルタイム・ワールド」
    「赤道の時」
    「火葬」
    「奇跡の石塚(ケルン)」
    「ディスチャージ」

    表題作は『20世紀SF』で同じく古沢嘉通が訳したものを読んでいたけど、相変わらずの名作っぷり。最後のヴィジョンは頭にこびりついている。

    どこか迂遠していく描写や展開、遠まわしな会話、現実感の消失といった特徴が、作品にとって面白く読めるときもあれば、読むのがだるくなってしまうときもあったので個人的にはバラつきの多い短編集。

    また、他にも特徴として、何らかの誘惑とそれに対する大きく揺れ動く気持ち、そして選択、というのが何度も登場していて、その部分の描き方が非常に独特で上手い。読んでいて、だいぶ引っ張られてしまった。持ち味ってやつなのか。

    「限りなき夏」はもちろんだけど、「奇跡の石塚」が好み。
    ありきたり云々なんて批判はプリーストには通じないのではないか。至るまでの過程と至ってからの効果が、濃密に描写されていて、物語が語る意味の上でも不可欠だと思う。

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