デ・ラ・メア幻想短篇集

  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336049568

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  • 「そこで七人の子供たち、アン、マチルダ、ジェイムズ、ウィリアム、ヘンリー、ハリエット、ドロシアは、おばあさまと一緒に暮らすことになりました。」

    最初の頁をめくった瞬間から強烈な目くらまし。「そこで」ってまだ何も聞いてないんだけれど、などと思う間もなく言葉は連なっていく。あたふたとしている読者をデ・ラ・メアはどんどん置き去りにする。

    一般的な意味での物語はここには存在しない。何も筋道だって語られている訳ではないのに、あるいはそれだからこそ、ぐるぐると回る渦巻の中に絡めとられていってしまう。その渦巻きに目が回る。その強烈な文章に、酔う。幻想的、とはまさにデ・ラ・メアの文章のためにある言葉であると意識する。

    ところで、デ・ラ・メア、とこの不思議な文章を成すものを呼んでみると、その幻想的な趣がより一層増すように思うのは気のせいだろうか。試しにオリジナルのタイトルと思しき英文の通り、「ウォルター・デ・ラ・メアの幻想短篇集」と口に出して音にしてみると、その不思議さはほんの少し常識的な色合いを帯びてくるように自分は感じる。実は、この音による誘導、目くらまし、のようなものがこの本には溢れているようにも思うのである。言葉が頭の中で音になった瞬間に感じる違和。言葉と言葉をつなぐ論理のすり替えのようなものが、音によって巧みに導かれる。その妙。恐らく原文ではもっとそれが顕著であろうと、訳文からも想像される程に。しかし原文では言葉の二重の意味を掴み損ねてしまうのだろうが。そんなところに気持ちが引っかかってしまって、ますます音になった言葉たちがいつまでも頭の上をくるくると巡って落ち着くことがない。

    だんだんにその言葉の重さに脳が悲鳴をあげ始める。くっくるしい。

    でもこれは苦しいと解っているのに何度も繰り返してしまう息止めに感じる痺れに似た、自虐的な愉悦でもある。

    デ・ラ・メアは面白い。

  • 不理解の恐怖。

    以前他の幻想短編集を読み、それが面白かったものだからつい手に取ってしまった。
    短い話も多いが、どれも「ん?」と思うズレを感じる。
    謎は謎のまま残され、後には何も残されない。そんな印象。

    エンターテイメントとしての物語ではなく、ただ、不思議な感覚を残していく。

  • デラメア短篇集11篇
    「謎」
    「悪しき道連れ 」
    「五点形 」
    「三人の友」
    「ミス・ミラー」
    「深淵より 」
    「絵 」
    「ケンプ氏 」
    「どんな夢が 」
    「家」
    「一瞥の恋 」
    老婆に預かられた7人兄弟が次々と箱の中に
    消えていく「謎」と
    幽霊屋敷が舞台なのであろう「深淵より」など

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