モーフィー時計の午前零時

制作 : 若島 正  若島 正  若島 正 他 
  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336050977

作品紹介・あらすじ

チェス・プロブレム作家でもある若島正セレクトによる本邦初の"海外チェス小説アンソロジー"がついに登場!フリッツ・ライバーの幻想味あふれる表題作ほか、フレドリック・ブラウンの未訳ミステリ、現代SFの巨匠ジーン・ウルフの傑作短篇、ウディ・アレンの爆笑作、ジュリアン・バーンズの観戦記など、SF・ミステリ・幻想文学・ユーモア・青春小説・ノンフィクション等々さまざまなジャンルから選りすぐった傑作チェス小説を、本邦初訳5篇を含む全11篇収録。

感想・レビュー・書評

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  • チェス小説のアンソロジー。小道具的にちょっとだけチェスが出てくるものや、かなりチェスの話がでてくるものまでいろいろある。
    どのはなしが良いかは人によってかなり変わるかもしれない。

  • 【選書者コメント】チェス小説ってジャンルがあるんだ!
    [請求記号]9300:1764

  • 挑戦者ショートvs世界王者カスパロフの話が面白かった。あとは19手の底なし沼プロブレムが付録についててびっくりした。

  • 下手のヨコ好きなんですが、少々頭の運動のつもりで嗜みます・・・
    誰かお相手してくださいませんか?

  • チェスプロブレム作家でもある若島正セレクトの本邦チェス小説アンソロジー。おまけに序文は小川洋子。

  •  やっと読んだ。翻訳ものや日本語で書かれた小説を読むことにあまり時間を取られたくないので、文体の参考程度にするつもりだったが、案の定内容より訳や文体ばかり気になった。

     小川洋子が少年チェス棋士を主人公にした『猫を抱いて象と泳ぐ』(これも読んだが訳あって書評は後に)を書いた縁で序文「チェスという名の芸術」を寄せている。彼女が編者から教えられた「最強の手と最善の手は違う」の真意は何だろう。駆け引き的な意味(セオリー的に最善な手より相手がいやな手の方が最強)か、名局の成立に関して(1手でもメイトを引き延ばす最善の悪あがき防御より、相手の絶妙手を誘発する手の方が最強?)なのか。

     フリッツ・ライバー(Midnight by the Morphy Watch)若島正訳「モーフィー時計の午前零時」。本書のタイトルにもなっている作品だが、ライバーについてはThe Dreams of Albert Morelandを最近読んだ(後に書評する)。これは未訳だそうで、短編は既訳かどうか等が調べにくいので、本書ではこういう情報がたくさん得られてありがたかった。
     本作は、モーフィーが実際に持っていた金時計と金銀製のチェスセットが様々な強豪棋士へと受けつがれていく話である。多くの実在棋士名が出てくるので「編者あとがき」でもプロフィールと棋譜まで紹介されている。実在棋士に関しては予備知識がある方ががぜん楽しめる。私の訳したファインの『チェス棋士の心理学』を事前に読んでおくのもいいだろう(笑)。
     訳に関しては、「金門橋」と書いてわざわざゴールデンゲートブリッジとルビを振ったり、いらかの波、丑三つ時、曼荼羅等、原文がすごく気になる表現が出てくるのが若島さんらしい。すでに雑誌連載で訳されていた(そんな仕事は考えたこともなかった)ものの単行本化。

     ジャック・リッチー(To the Barricades!)谷崎由依訳「みんなで抗議を!」も、雑誌での訳の単行本化で、編者がリッチーの短編にチェスねたがあったと覚えていたから。チェス自体はストーリーのおまけに過ぎないが、スリリングな傑作だ。

     ヘンリイ・スレッサー(The Poisoned Pawn)秋津知子訳「毒を盛られたポーン」は、郵便戦を使った傑作。郵便戦は本人が指しているかどうか分からないからミステリーのテーマになりやすいのだろう。訳は対戦の描写が多いからおそらくチェスが苦手な女性訳者の苦労が忍ばれる。他には、やんちゃ男の一人称語りとはいえ、ここまで浮いた言葉が多いと、大げさに男を演じる宝塚女優のようだ。男も、女言葉語尾でさんざんステレオタイプの女性像を描いてきたのだが。

     フレドリック・ブラウン(The Cat from Siam)谷崎由依訳「シャム猫」は、チェス・アンソロジーの洋書(後に書評する)で持っているが未読だった。チェス自体は全くといって関係ないが、最後のオチがすごいし、この訳はちょっと硬いので私もいずれ訳したい。

     ジーン・ウルフ(The Marvelous Brass Chessplaying Automaton)柳下毅一郎訳「素晴らしき真鍮自動チェス機械」は、数多くの「トルコ人」もの(日本人すらこのテーマで書いている)の1つで、舞台はドイツで文明が過去のものになったという不思議な時代。この手の話を多く読んだわけではないが、かなり変わった「トルコ人」話だろう。訳は、全体的に時代がかっているのはいいとしても、地の文中で台詞だけ太字で強調するのはいかがなものか。元々の雑誌でのレイアウトなのか。

     ロジャー・ゼラズニイ(Unicorn Variation)若島正訳『ユニコーン・ヴァリエーション』は新訳。ユニコーンやグリフォンといった伝説の生き物が出てくる変わった話のわりには、実際のゲームを下敷きにした現実的な対戦が進行する。手順の説明は残念ながら原文か訳のどちらかが間違っているので追いにくいが、「編者あとがき」を見れば分かる。ここでも郵便戦が使われる。

     ヴィクター・コントスキー(Von Goom's Gambit)若島正訳『必殺の新戦法』も新訳。荒唐無稽な話。パッハマンまで出てくる。

     ウディ・アレン(The Gossage-Vardebedian Papers)伊藤典夫訳『ゴセッジ・ヴァーデビディアン往復書簡』。ウディ・アレンまでチェス短編を書いていたのかと思ったが、内容は郵便戦でのののしり合い合戦のみで、断片的な指し手だけではゲームのイメージもわかない。訳も、手紙の文面で慇懃丁寧さを出しているのだろうが、硬い。

     ジュリアン・バーンズ(TDF: The World Chess Championship)渡辺佐智江訳『TDF チェス世界チャンピオン戦』だけはノンフィクションで、1993年のカスパロフ対ショートPCA世界選手権での主にショートの悲惨さを描いている。どういう経緯でこんなマニアックなエッセイが訳されたのか。「編者あとがき」によると編者が、ロンドン在住でこの選手権をテレビで見た訳者と知り合ったからだという。
     それにしてもチェスの裏側を描写した皮肉だらけの凝った文体は、チェス用語と概念だけでも大変な翻訳が功を奏しているとは言いがたい。軽妙さは見事だが修飾範囲の曖昧さが多いのは、訳者自身も分からなくて逃げているようだ。たびたび出てくる「マーケティング」は、明らかにPCAがチェスをもっと金儲けにつなげる試みを指しているから直訳では困る。p267の「番勝負」は「盤勝負」の間違い?
     チェスがしょせん一般人の支持を得られない(チャンピオンが英雄視されるに過ぎない)ことについては、『ボビー・フィッシャーを探して』以来ずっと考えている。今後出版する本の解説とかで触れたい。

     ティム・クラッベ(Meester Jacobson)原啓介訳『マスター・ヤコブソン』は、本ブログにもコメントを寄せてくださる原さんの翻訳は、初文芸作品訳とは思えない名訳。p297「起こりうる結果を示す傾向に過ぎない」といった処理は数学者らしい?
     ヤコブソンの「棋力で劣ってもチェスを真に愛する自分こそが本当の棋士」というコンプレックスは、私から見てもちょっとひねくれすぎているが、本作が本書の最高傑作なのは間違いない(ますます原さんがうらやましい)。郵便戦はここでも代理指しを仕立てる方法として使われる。ポーンのただ捨て手 8...d5?!は現実味がないが、カスパロフがシシリアンのポールセンか何かで放った新手を連想させる。

     ジェイムズ・カプラン(In Miami, Last Winter)若島正訳『去年の冬、マイアミで』は、若島さんにしては訳が冴えないから急いで訳し下ろしたのかと思ったら25歳頃のものだった。p351「都名人戦」のような日本語への移し替えをするわりには、歳の離れたアメリカ人同士の会話がタメ口だったりする。p350「現代チェス序盤戦法」はModern Chess Openingsだろう。The Queen's Gambitにも出てくるが、私は「現代チェス定跡事典」にしている。
     この話でも主人公の棋力のコンプレックスがテーマを成す。作者も下手の横好きだったりするから、その心中と重なるのかもしれない。訳者のかなりお気に入りの作品だそうだが、私はあまり好きになれなかった。それにしてもほとんどの作品は1970年代以降に書かれている。フィッシャーの申し子のように。

     その後ロード・ダンセイニのレトロ風「プロブレム」1題と「編者あとがき」が続く。

     チェス小説も長さやジャンルを問わず訳したいが、「編者あとがき」で未訳作品として触れられているウォルター・テヴィスの長編The Queen's Gambitは半分弱くらいまで訳したまま、優先順位のために放置している。早く『ボビー・フィッシャーを探して』が出版されて、若島さんに読んでもらいたい…。

  • 2011/3/13購入

  • 2009年12月10日読了。チェスについての話がいっぱいで、わからないところもあるが面白かった。

  • 「素晴らしき真鍮自動チェス機械」ジーン・ウルフ
    がとてもいい。

    チェスを知らないでも楽しめる。
    小川洋子の解説つき。
    ところで、通信チェス(手紙で一手ずつ送りあう)ってすごいメジャーなのね。すっごく古きよきのにおいがしてすてき。

  • そんなにいいと思わない作品も多かったけど、ジーン・ウルフの「素晴らしき真鍮自動チェス機械」にぞわっとし、ジュリアン・バーンズの「TDF チェス世界チャンピオン戦」をくすくす楽しみ、ジェイムズ・カプラン「去年の冬、マイアミで」にしみじみ。若島正さんの解説もいい。

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