夢の遠近法 山尾悠子初期作品選

著者 :
  • 国書刊行会
4.40
  • (46)
  • (22)
  • (11)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 360
レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336052834

作品紹介・あらすじ

山尾悠子が二十代に執筆した短編小説の中から、『遠近法』『夢の棲む街』『月齢』『眠れる美女』等、みずから選んだ11の傑作を収録。巻末には書き下ろしの「自作解説」を併録した、山尾ワールド入門への最良最高の一冊。付録・単行本初収録エッセイ4編。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 高価な『山尾悠子作品集成』の廉価版。
    同書から選ばれた11編を収めた、
    お財布だけでなく手(腕)にも優しい軽量タイプ。
    エッセイ4編が収録された別冊(中綴小冊子)が付いていて
    得した気分。
    初めて読むはずなのに既視感たっぷりで頭がクラクラした。
    きっと作者の文章で酔っ払ったせいだろう。
    幻想文学というより、奇想ギャラリーといった印象。
    結構、皮肉に溢れているので、
    幻想やファンタジーなどの単語から、
    キラキラしたロマンティックな風景や人物を思い浮かべる人には、
    毒気が強いからお薦めしない。
    甘くない嗜好品のようなもの。
    そんな中で唯一、
    我々が暮らす現実世界と繋がっている「月蝕」が個人的ベスト。

    *****

    【2020/02/11 付記】

     収録作は、

     夢の棲む街
     月蝕
     ムーンゲイト
     遠近法
     童話・支那風小夜曲集
     透明族に関するエスキス
     私はその男にハンザ街で出会った
     傳説
     月齢
     眠れる美女
     天使論
     (自作解説)

     +

     エッセー抄本*夢の遠近法 栞
     ・人形の棲処
     ・頌春館の話
     ・チキン嬢の家
     ・ラヴクラフトとその偽作集団

    • 佐藤史緒さん
      こんばんは〜(*゚▽゚)ノ
      追記のおかげで分かりましたー。
      ちくま文庫版には、
      「パラス・アテネ」
      「遠近法・補遺」
      のふたつが余...
      こんばんは〜(*゚▽゚)ノ
      追記のおかげで分かりましたー。
      ちくま文庫版には、
      「パラス・アテネ」
      「遠近法・補遺」
      のふたつが余分に載ってます。
      パラス・アテネはアジア大陸みたいな世界が舞台のファンタジー(勿論ぜんっぜん甘くないヤツ)、
      「遠近法・補遺」は「遠近法」から5年後に書いた後続作だそうです。
      _φ(・_・ メモメモ
      2020/02/11
    • 深川夏眠さん
      おお、ありがとうございます。
      うう、文庫を買うべきか……ぐぬぬ
      おお、ありがとうございます。
      うう、文庫を買うべきか……ぐぬぬ
      2020/02/11
  • とにかく寡作の人なので、チビリチビリ、なめるようにしながら半年くらいかけて読み終えた。
    「夢の棲む街」のラストでは、情景が脳内にスローモーションで再生され、「遠近法」の“腸詰宇宙”に圧倒される。「透明族に関するエスキス」は、「デジスタ」の年間大賞を獲るような上質の短編映像を見た思い(と思ったら、作者自身による解説で、CGのようなイメージがまずあってそれを描写した、というようなことが書いてあり、納得)。

    山尾悠子の作品を読むたび、こんなビジュアルを描く力が自分にもあったのかと、驚かされる。もの凄く凝った質の高いアトラクションを楽しむような感覚。その乗り物のレールを敷いたり、動かしたりしてくれるのは彼女の文で、自分はコースを進んでいくだけだけれど。それでも、これが自分の頭の中だと思うと、不思議だし、ちょっと嬉しい気分でもある。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「質の高いアトラクションを楽しむような感覚」
      ちょっと人を寄せ付けないような、硬質で冷たい感じが、読む時に緊張を強いられるようで。とっても刺...
      「質の高いアトラクションを楽しむような感覚」
      ちょっと人を寄せ付けないような、硬質で冷たい感じが、読む時に緊張を強いられるようで。とっても刺激的です。
      2013/02/07
  • 『言葉を用いて架空の世界を構築しかつ崩壊させること』
    言葉の無限を視る。
    計算され尽くした言葉の配列は結晶となって、人と街を形成している。鋼鉄のように張りつめた神経が隅々まで行き渡っている硬質にして巧緻なる世界。
    けれどもそれは突如として見るも無残に砕け散り、崩れ落ち、血に染まり、水に呑まれてしまうから、残像と残光を瞼に焼きつけ、残骸を胸に抱き、残響を頭蓋で増幅させ、何度でも美しく完璧な世界を再構築しようと試みる。書物の扉を開いて夢幻世界を拓く。そう、何度でも。

    【遠近法】、【ムーンゲイト】、【私はその男にハンザ街で出会った】が特に気に入った。
    《2014.05.07》

  • 行間から、はらはらほろほろと真珠の粒が、絶える間も無く零れ落ちてゆく
    様な幻覚を視る。
    それでいて、決して装飾的では無い
    文体はラベルの楽の音の様・・ ・。
    古風な漢字と、その横に付された流れるようなルビが文章の雰囲気を形成
    して美しい。
    文体の余韻、ページの余白、これこそ
    夢の遠近法かも知れない。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「文体はラベルの楽の音」
      ナルホド、、、
      「文体はラベルの楽の音」
      ナルホド、、、
      2014/03/10
  • もしこの人の作品に出会わなかったら、自分の人生は違ったものになっていただろうと思える作家は多くない。
    これまでの人生を振り返っても、幼少期のアーサー・ランサム、思春期の光瀬龍、そして山尾悠子くらいしか思い浮かべることができない。

    20歳を過ぎてからはそこまでの出会いが一度もないという事実を思うと、幸福な読書の楽園から永久に追放されてしまった気分になるのだが、それはさておき。

    「夢の棲む街」「ムーンゲイト」「遠近法」といった初期の短編には、純粋に言葉だけで構築された世界がある。それは、若い日の自分が焦がれ続けて、どうしても手に入れられなかった世界でもある。

  • 読むのに時間がかかりました…。見たことのないものをイメージしながら読むし、読んでる間どっぷり浸かってるので心に余裕のあるときしか読めないし。休日の起き抜けとかがいい。いろんなイメージが交ざりあって、山尾さんの世界が広がっている。「童話・支那風小夜曲集」が一番読みやすく、楽しい。「月齢」は書き出しに痺れたし、「夢の棲む街」「眠れる美女」は崩壊のイメージに酔う。「透明族」は頭のなかにアニメーションが浮かぶね。「天使論」「月蝕」は京都の学生生活がなつかしい。
    何となく、作者の息遣いが伝わるような作品ばかり。ある人の頭の中にあるイメージが、そのままのかたちでないにしても、他人に伝わるってすごいな。それも、あえて言葉をもってして。

  • 気になりつつも耳にしていた評判に慄いて手を出せずにいたが遂に借りて来る。初期作品集ということで比較的読みやすい?
    とは言え緊密で硬質な文章は何の気なしに読んでいると、上滑りして全然頭に入ってこない。読む側にも集中力を求め、叙述された世界をしっかり再構築する必要を感じる。それでも作品の世界の理を理解出来ている訳でもなく、どれ程享受出来たかも怪しい。
    「夢の棲む街」「ムーンゲート」「遠近法」想像力で世界を構築するというのはこういうことかと思わせる。言語による世界の構築に対するフェティッシュな欲望というか。温もりを排した鉱物的な冷厳な世界。
    「夢の棲む街」の<脚>の踊り子や天使、人魚のイメージはグロテスクにして鮮烈。猥雑なのに静謐な世界観。
    「月蝕」が大学生と小学生の姪の凸凹コンビの76年京都の街の彷徨譚という感じで、作者も「何ともお気楽」と記しているが読みやすく楽しい。姪の女の子がコケティッシュで小悪魔。というか彼女は誰だったんだろう?
    「童話・支那風小夜曲集」は雰囲気のある作品。
    「透明族に関するエスキス」面白いけど実際いたら汚れと悪臭で迷惑そう。
    「眠れる美女」ブラック。ヒドイ。

  • 2010-10-27

  • 「幻想小説」と呼ばれるものは概して苦手なのだけど、ごくたまに心をわしづかみにされるようなビジョンを描き出す作品に出会うことがある。その筆頭が、本書にも収められている「遠近法」だ。SFのアンソロジーで読んだとき、そのイメージ喚起力に完全にノックアウトされた。

    「作品集成」にはちょっと手が出なかったのだが、これならばと買いこんでみたものの、最初の「夢の棲む街」がどうにも苦手な部類の「幻想小説」で…。「遠近法」だけ読み返して積んであったのを、なんとなくまた読んでみることにしたのだった。

    「夢の棲む街」は、やはり好きとは言えないけれど、独特の硬質な世界に圧倒される。これが大学生の時のデビュー作とは。著者が巻末の「自作解説」で「すべてがここにある」と語っているのに納得した。グロテスクな要素もあり、血や粘液が流れる描写もあるというのに、冷え冷えとしたノーブルな空気に支配されている。

    圧巻はなんといっても「遠近法」。何度読んでもすばらしい。SF的想像力で作り上げられた異世界には傑作が数々あるが、この「腸詰宇宙」は紛れもなくその一つだと思う。無限に続く塔の内側に階層としてある世界。その中を巡る太陽と月。《蝕》という現象。まさにめくるめくようなイメージで、ため息が出るばかり。断片的な記述を重ねるスタイルも効果的だ。世界の真実を求め、九万階上方の回廊を目指した人々の挿話が、残酷で、美しい。ラストの「ウロボロスの蛇」でとどめを刺されてしまう。「語り手」を揺らしてあるのも浮遊感を高めているのだろう。

    本書ほど「自作解説」が役に立ったことはない。「月蝕」や「童話・支那風小夜曲集」は解説のおかげで、なるほどねえと楽しむことができた。著者は自分より少し年上なのだが、同じ京都で学生生活を送ったことを初めて知り、にわかに親しみも湧いた。初期の作品は京都で書かれたものも多いようで、さり気ない書き方ながらその頃への愛着が伝わってきた。

  • 間違いなく私の読書歴の頂点に位置する作家になりそう。

    『夢の棲む街』★
    『月蝕』★
    『ムーンゲイト』★
    『遠近法』★
    『童話・支那風小夜曲集』
    『透明族に関するエスキス』
    『私はその男にハンザ街で出会った』★
    『傳説』★
    『月齢』★
    『眠れる美女』★
    『天使論』★

    付録
    『人形の棲処』★
    『領春館の話』★
    『チキン嬢の家』
    『ラヴクラフトとその偽作集団』★

    記憶に強く残っている作品に星をつけようと思ったが、
    そんな試みもくだらないくらいにそれぞれが強い印象を残す。
    ここまで鮮烈で確固としたイメージを植えつけられるとは。
    驚愕に近い。

全37件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

山尾悠子(やまお ゆうこ)
1955年、岡山市生まれの小説家、歌人。寡作ながらその幻想文学は極めて高い評価を受けており、執筆中断期間もあったことから「幻の作家」「伝説の作家」と言われることもある。
同志社大学文学部国文科に入学し、高校までに読んできていた泉鏡花を専攻(のちに泉鏡花文学賞受賞という機縁もある)。大学在学中の1973年、「仮面舞踏会」が『S-Fマガジン』SF三大コンテスト小説部門の選外優秀作に選ばれたことをきっかけに、1975年11月号の「女流作家特集」で同作を掲載し20歳でデビュー。
1980年に書き下ろし長編『仮面物語』、1982年歌集『角砂糖の日』を刊行。1985年以降は出産・育児で発表が途絶えていたが、1999年に復活、2000年に国書刊行会から『山尾悠子作品集成』を、2003年には2作目の書き下ろし長編『ラピスラズリ』を刊行。
2018年刊行、15年ぶりの長編となった『飛ぶ孔雀』が第46回泉鏡花文学賞を受賞した。日本文藝家協会会員。

山尾悠子の作品

夢の遠近法 山尾悠子初期作品選を本棚に登録しているひと

ツイートする