夢の遠近法 山尾悠子初期作品選

著者 :
  • 国書刊行会
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336052834

作品紹介・あらすじ

山尾悠子が二十代に執筆した短編小説の中から、『遠近法』『夢の棲む街』『月齢』『眠れる美女』等、みずから選んだ11の傑作を収録。巻末には書き下ろしの「自作解説」を併録した、山尾ワールド入門への最良最高の一冊。付録・単行本初収録エッセイ4編。

感想・レビュー・書評

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  • 高価な『山尾悠子作品集成』の廉価版。
    同書から選ばれた11編を収めた、
    お財布だけでなく手(腕)にも優しい軽量タイプ。
    エッセイ4編が収録された別冊(中綴小冊子)が付いていて
    得した気分。
    初めて読むはずなのに既視感たっぷりで頭がクラクラした。
    きっと作者の文章で酔っ払ったせいだろう。
    幻想文学というより、奇想ギャラリーといった印象。
    結構、皮肉に溢れているので、
    幻想やファンタジーなどの単語から、
    キラキラしたロマンティックな風景や人物を思い浮かべる人には、
    毒気が強いからお薦めしない。
    甘くない嗜好品のようなもの。
    そんな中で唯一、
    我々が暮らす現実世界と繋がっている「月蝕」が個人的ベスト。

    *****

    【2020/02/11 付記】

     収録作は、

     夢の棲む街
     月蝕
     ムーンゲイト
     遠近法
     童話・支那風小夜曲集
     透明族に関するエスキス
     私はその男にハンザ街で出会った
     傳説
     月齢
     眠れる美女
     天使論
     (自作解説)

     +

     エッセー抄本*夢の遠近法 栞
     ・人形の棲処
     ・頌春館の話
     ・チキン嬢の家
     ・ラヴクラフトとその偽作集団

    • 佐藤史緒さん
      こんばんは〜(*゚▽゚)ノ
      追記のおかげで分かりましたー。
      ちくま文庫版には、
      「パラス・アテネ」
      「遠近法・補遺」
      のふたつが余...
      こんばんは〜(*゚▽゚)ノ
      追記のおかげで分かりましたー。
      ちくま文庫版には、
      「パラス・アテネ」
      「遠近法・補遺」
      のふたつが余分に載ってます。
      パラス・アテネはアジア大陸みたいな世界が舞台のファンタジー(勿論ぜんっぜん甘くないヤツ)、
      「遠近法・補遺」は「遠近法」から5年後に書いた後続作だそうです。
      _φ(・_・ メモメモ
      2020/02/11
    • 深川夏眠さん
      おお、ありがとうございます。
      うう、文庫を買うべきか……ぐぬぬ
      おお、ありがとうございます。
      うう、文庫を買うべきか……ぐぬぬ
      2020/02/11
  • とにかく寡作の人なので、チビリチビリ、なめるようにしながら半年くらいかけて読み終えた。
    「夢の棲む街」のラストでは、情景が脳内にスローモーションで再生され、「遠近法」の“腸詰宇宙”に圧倒される。「透明族に関するエスキス」は、「デジスタ」の年間大賞を獲るような上質の短編映像を見た思い(と思ったら、作者自身による解説で、CGのようなイメージがまずあってそれを描写した、というようなことが書いてあり、納得)。

    山尾悠子の作品を読むたび、こんなビジュアルを描く力が自分にもあったのかと、驚かされる。もの凄く凝った質の高いアトラクションを楽しむような感覚。その乗り物のレールを敷いたり、動かしたりしてくれるのは彼女の文で、自分はコースを進んでいくだけだけれど。それでも、これが自分の頭の中だと思うと、不思議だし、ちょっと嬉しい気分でもある。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「質の高いアトラクションを楽しむような感覚」
      ちょっと人を寄せ付けないような、硬質で冷たい感じが、読む時に緊張を強いられるようで。とっても刺...
      「質の高いアトラクションを楽しむような感覚」
      ちょっと人を寄せ付けないような、硬質で冷たい感じが、読む時に緊張を強いられるようで。とっても刺激的です。
      2013/02/07
  • 『言葉を用いて架空の世界を構築しかつ崩壊させること』
    言葉の無限を視る。
    計算され尽くした言葉の配列は結晶となって、人と街を形成している。鋼鉄のように張りつめた神経が隅々まで行き渡っている硬質にして巧緻なる世界。
    けれどもそれは突如として見るも無残に砕け散り、崩れ落ち、血に染まり、水に呑まれてしまうから、残像と残光を瞼に焼きつけ、残骸を胸に抱き、残響を頭蓋で増幅させ、何度でも美しく完璧な世界を再構築しようと試みる。書物の扉を開いて夢幻世界を拓く。そう、何度でも。

    【遠近法】、【ムーンゲイト】、【私はその男にハンザ街で出会った】が特に気に入った。
    《2014.05.07》

  • 小冊子画像
    http://nyankomaru.tumblr.com/post/97331320847/4

    『第4回 ジュンク堂書店文芸担当者が選ぶ この作家を応援します!「山尾悠子さん」』フェア開催!|国書刊行会
    http://www.kokusho.co.jp/news/2014/08/201408011535.html

    山尾悠子さんサイン会|ジュンク堂書店 大阪本店|丸善&ジュンク堂ネットストア
    ジュンク堂書店 大阪本店
    開催日時:2014年10月18日(土)15:00 ~
    http://www.junkudo.co.jp/mj/store/event_detail.php?fair_id=6358

    国書刊行会のPR
    http://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336052834/

  • 行間から、はらはらほろほろと真珠の粒が、絶える間も無く零れ落ちてゆく
    様な幻覚を視る。
    それでいて、決して装飾的では無い
    文体はラベルの楽の音の様・・ ・。
    古風な漢字と、その横に付された流れるようなルビが文章の雰囲気を形成
    して美しい。
    文体の余韻、ページの余白、これこそ
    夢の遠近法かも知れない。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「文体はラベルの楽の音」
      ナルホド、、、
      「文体はラベルの楽の音」
      ナルホド、、、
      2014/03/10
  • もしこの人の作品に出会わなかったら、自分の人生は違ったものになっていただろうと思える作家は多くない。
    これまでの人生を振り返っても、幼少期のアーサー・ランサム、思春期の光瀬龍、そして山尾悠子くらいしか思い浮かべることができない。

    20歳を過ぎてからはそこまでの出会いが一度もないという事実を思うと、幸福な読書の楽園から永久に追放されてしまった気分になるのだが、それはさておき。

    「夢の棲む街」「ムーンゲイト」「遠近法」といった初期の短編には、純粋に言葉だけで構築された世界がある。それは、若い日の自分が焦がれ続けて、どうしても手に入れられなかった世界でもある。

  • 読むのに時間がかかりました…。見たことのないものをイメージしながら読むし、読んでる間どっぷり浸かってるので心に余裕のあるときしか読めないし。休日の起き抜けとかがいい。いろんなイメージが交ざりあって、山尾さんの世界が広がっている。「童話・支那風小夜曲集」が一番読みやすく、楽しい。「月齢」は書き出しに痺れたし、「夢の棲む街」「眠れる美女」は崩壊のイメージに酔う。「透明族」は頭のなかにアニメーションが浮かぶね。「天使論」「月蝕」は京都の学生生活がなつかしい。
    何となく、作者の息遣いが伝わるような作品ばかり。ある人の頭の中にあるイメージが、そのままのかたちでないにしても、他人に伝わるってすごいな。それも、あえて言葉をもってして。

  • 幻想小説はやっぱり苦手だった。月蝕だけ読めた。あとは不思議すぎてよくわからなかった。

  • 気になりつつも耳にしていた評判に慄いて手を出せずにいたが遂に借りて来る。初期作品集ということで比較的読みやすい?
    とは言え緊密で硬質な文章は何の気なしに読んでいると、上滑りして全然頭に入ってこない。読む側にも集中力を求め、叙述された世界をしっかり再構築する必要を感じる。それでも作品の世界の理を理解出来ている訳でもなく、どれ程享受出来たかも怪しい。
    「夢の棲む街」「ムーンゲート」「遠近法」想像力で世界を構築するというのはこういうことかと思わせる。言語による世界の構築に対するフェティッシュな欲望というか。温もりを排した鉱物的な冷厳な世界。
    「夢の棲む街」の<脚>の踊り子や天使、人魚のイメージはグロテスクにして鮮烈。猥雑なのに静謐な世界観。
    「月蝕」が大学生と小学生の姪の凸凹コンビの76年京都の街の彷徨譚という感じで、作者も「何ともお気楽」と記しているが読みやすく楽しい。姪の女の子がコケティッシュで小悪魔。というか彼女は誰だったんだろう?
    「童話・支那風小夜曲集」は雰囲気のある作品。
    「透明族に関するエスキス」面白いけど実際いたら汚れと悪臭で迷惑そう。
    「眠れる美女」ブラック。ヒドイ。

  • 2010-10-27

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著者プロフィール

山尾悠子(やまお・ゆうこ)
1955年、岡山県生まれ。75年に「仮面舞踏会」(『SFマガジン』早川書房)でデビュー。2018年『飛ぶ孔雀』で泉鏡花賞受賞・芸術選奨文部科学大臣・日本SF大賞を受賞。

「2021年 『須永朝彦小説選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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