アイルランド・ストーリーズ

  • 国書刊行会
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本棚登録 : 231
レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336052889

作品紹介・あらすじ

稀代のストーリーテラーが優しく、そして残酷にえぐりとる島国を生きる人々の人生模様…O・ヘンリー賞受賞作を含む全十二篇。『聖母の贈り物』につづくベスト・コレクション第2弾。

感想・レビュー・書評

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  • 鴻巣さんのエッセイで、チラリと登場。
    心魅かれて読んでみた。

    アイルランド出身の作者の、
    12篇を収めた短編集

    焦点を当てている部分が暗く辛いエピソード、
    あまりにも重く…
    登場人物も怒りやあきらめを抑えて生きているように感じて、
    「こんなことばっかりじゃないよね」と独り言

    以前私には辛すぎて挫折したオコナーを彷彿とさせたが…

    読み進み、
    このレビューを書くにあたりパラパラと見直してみると
    ああ、そうそうこのお話し!などど
    なぜだか懐かしいような気分、
    すっかり私の中にしみ込んでいるようだ。

    国レベルの対立その他の事情で
    実際の人生に大きな影響が出る、
    と言う体験が無く、

    悩みと言えば身の回りの狭い空間でしか発生しない私は
    あまりにも呑気だ。

    「キャスリーンの牧草地」は身につまされて忘れられない。
    「聖人たち」は何度も読み返したくなる。

  • 2010年刊行のガイブン、という意味では読み遅れたかもしれないが、それは、私にはほとんど気にならない。アイルランドらしいものを手にした、という充実感に満たされている。以後、ちゃんとした感想は可能ならばここに付加しますので、先取り☆5つ、で御勘案くださいませ。ともあれ、とりいそぎ。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜2011年3月12日まだ味読してなかったこの本が目に留まったので、部屋から持ち出した。以来、通読、拾い読み、ただぱらぱらする…、とにかくこの本を中心に1箇月以上を過ごした。淡々としているようで、しかしもちろんそれだけではなくて、残酷だなあと思う瞬間もあるけれど、でもつまりそういうことなんだよな、とか。たいした感想言ってなくてごめんなさい。何度も読める、違うようにも読める、いろんな読み方ができる。とにかくここ2箇月の私にとってありがたい1冊でした。たぶんこれは、いつもわかるところに置いといて、ときどき読み返すと思う、間違いなく。

  • 文学

  • 追悼ウィリアム・トレヴァー。何度再読したかわからない、読書人生を変えてくれた本。この1冊の中に何度読み返しても褪せない深みを湛えた短編たちが詰められている。わずかな頁の中に詩情豊かな筆致で綴られた、私たち人間の醜さ、愚かさと美しさ…話を読み終えた時に確かに感じる、そんな私たちの愚かさを包み込むようなトレヴァーの慈悲に充ちた眼差し…これまでの文学史に名を残してきた短編の名手たちと同じく、愚直に'ひと'を描き続けてきたトレヴァー。そんな彼の作品はこれからも本好きの人々の中で滔々と永遠に読み継がれてゆくだろう。

  • アイルランドというタイトルに惹かれて読んだ。
    政治や宗教の問題。長い紛争の歴史。
    そんな環境に身を置きながら暮らす、普通の人々の日常が綴られており、自分にとってはショッキングでもあった。
    心が憂鬱になる作品が多いのは、人々の背景にある哀しみや葛藤を、作者は見過ごすことが出来ないからなんだろうなと思う。
    繰り返さないように、希望がついえてしまわないように、皆が救われるように‥。
    それを、柔らかい目線で語りかけているように感じた。

  • 他国を移動する人々について書かれた作品を集めたのが近刊の『異国の出来事』。同じ訳者による『アイルランド・ストーリーズ』は、アイルランドに根を生やした人々の姿を描いた作品を集めたものだ。路傍の聖母像の話に始まり奇跡の話で締める。昔のLPレコード・アルバムになぞらえ、A面6曲、B面6曲の全12篇からなる短篇集。訳者のこだわりがわかるのはLP世代だけだろうが、いつまで存在するか分からないデジタル機器に比べ、ほぼ半永久的に復元可能なアナログ音源にトレヴァーをなぞらえたくなる、その気持ちはよく分かる。

    実は数年前に一度読んでいるのだが、初めてトレヴァーの世界に触れたせいもあって、読後の印象がまとまらず、感想を書かずに済ませてしまった記憶がある。それでいて、その重苦しいようでいて何処か切なさを秘めた独特の味わいだけは深く心に残っていた。それ以後、新作が出るたびに読んできて、迂闊なことにようやくこの頃その作品世界が見えてきたというのが本当のところだ。かめばかむほど味が出てくるというとなんだかスルメみたいだが、読めば読むほど味わいが深くなる。言葉をかえて言えば、初読者にはとっつきにくい作家なのではないか。

    その原因のひとつがアイルランドという国についてあまり知らないということがある。『異国の出来事』に出てくるヴェネツィアやパリと比べると、『ユリシーズ』の舞台として知られるダブリンはまだしも、ベルファストやコークといった地名はいかにもなじみがうすい。しかし、アイルランドの人々にとってベルファストは北アイルランドの首都というだけではない重い意味を持つ土地なのだ。以下「訳者あとがきにかえて」を参考に簡略に記す。

    16世紀、嫡子の欲しいヘンリー8世が離婚を許さないカトリックに業を煮やし宗教改革を断行した結果、英国最古の植民地であるアイルランドは多数のカトリック信者を残したまま支配者層だけがアイルランド聖公会(プロテスタント)に改宗する。これが問題の始まり。その後1916年にダブリンで反英武装蜂起が起き、アイルランド共和国軍(IRA)と英国政府が派遣した特別警備隊の間で激しい闘争がくり返される。1921年アイルランドは独立を勝ち取るも、ベルファストを首都とする北アイルランドとダブリンに首都を置くアイルランド自由国のふたつに分裂する。

    国民の大多数がカトリック信徒のアイルランド自由国(1949年英連邦脱退、現在のアイルランド共和国に至る)は教会の倫理規範に沿った政策をとり、それに違反する図書や映画の検閲、離婚や妊娠中絶を法律で禁止するなど厳しい施策を国民に強いた。一方北アイルランドでは、プロテスタントが多数派を占め、少数派のカトリック住民を差別し続けた。その結果カトリック系とプロテスタント系の武装組織の対立が三十年も続く北アイルランド紛争を引き起こし、多くの市民が犠牲となった。

    「見込み薄」のミセス・キンケイドは結婚詐欺師。カモを探してたどり着いた町で農園を営むブレイクリーを見つけ近づく。独り居に慣れた男は容易に心を開かないが次第にその距離は縮まる。男のプロポーズを拒みながら、小切手を書かせるテクニックが見せ場だ。再会を約束し、女は小切手を手に町を去る。男は銀行からの連絡で金が引き出されたことを知る。約束の場所に女は現れなかったが、ブレイクリーは心のどこかに希望が残っているのを感じる、という話。

    ブレイクリーは色とナンバーが酷似していたため誤って車に仕掛けられた爆弾で妻子を亡くした過去を持つ。女の方も親から受けついた下宿屋の収益をフィアンセに騙し取られた苦い過去がある。過去に苦しめられる二人が、少しずつ現在を受け容れようと思うようになる、その背景にあるのがミセス・キンケイドがバスの運転手と話す場面でさらりと触れる<ベルファスト和平合意>だ。長く続いた紛争が、ようやく終わろうとしている。簡単には戻りはしないが、人々は平和への希望を頑固に守ろうとしている。誰もが共通して感じる希望の光、それこそがブレイクリーの根拠のない希望の出所にちがいない。やがてそれはベルファストに暮らすミセス・キンケイドの胸にも届く。

    巧みに展開させるストーリーの背後に、当時の社会がもつ感情や色彩を裏打ちすることで、物語の強度を増す。さほど分量のないトレヴァーの短篇が尋常ではない重量感を保持するのは、表面に出ないこうした工夫があってのことだろう。海外でも読まれることを意識しているのか、トレヴァーの筆は、事情に疎い日本人にも理解できるよう意を尽くしている。初読時にはそれが読みとれていなかった。ナボコフではないが「読書とは再読のことだ」とつくづく思う。

    「哀悼」が扱うのも爆弾テロ。主人公リアム・パットはアイルランドの青年。工務店では使えない奴と思われ、セメントミキサーの番ばかりさせられ腐っている。ロンドンなら、ちゃんとした仕事があると思い、伝手を頼って渡英する。しかし、待っていたのは派遣仕事で、現場ではいじめにあう。そんな時、酒場で知り合ったアイルランド人から仕事を頼まれる。それが爆弾テロだった。今の境遇に不満を持つ若者をリクルートしてテロリストに仕立てる、という極めて現代的な主題がトレヴァーの手にかかると、まぎれもないトレヴァーの刻印が押された極上の短篇となる。

    マイケル・コリンズのような英雄になれると言われ、その気で爆弾を入れたバッグを抱えてバスに乗り込んだリアム・パットは思い出す。父親が新聞を読んで「こんなみじめな英雄ってあるもんか」と言ったことを。一回目の爆弾テロは暴発によって失敗していた。父親が読んでいたのは運び屋の若者の葬式の記事だったのだ。名前も知らない若者が自分と重なり、リアム・パットはバスを降りる。故国を棄ててまで移住した異郷でまた虐げられる若者の切なさが心に痛い。こうしてテロリストは作られていくのか、と腑に落ちた。

    不倫相手と最後の旅に出たベアトリスが旅先のバーで出会ったのは楽しそうに席を囲む一組の老夫婦と念入りに化粧した女の三人連れ。乾杯を交わした時ベアトリスには分かった。老女が男を愛していることを。そして男もまたそれを知っていることを。離婚の許されない時代、妻帯者を愛した女はその愛を心の奥に秘すしかなかった。男もそうした。そのまま歳をとって今があるのだ。それを見てベアトリスは自分のいやしさを恥じる。しかし、ドゥニーには、また別の思いがあった。

    ドゥニーは八十二、三歳。ベアトリスは三十二歳。ドゥニーがベアトリスの年頃、アイルランドの生活様式には「不倫や離婚や明るい茶色の自動車なんてものは含まれていなかった」。自立して間もない国はカトリックであることを精神的支柱に据えた。映画館の案内嬢だったドゥニーは化粧が濃いと神父様に目の敵にされていたのだ。半世紀の時間差をはさんで、ふたりの女が互いの境遇を羨む「パラダイスラウンジ」。南のアイルランド共和国に住む者にも嘆きはあったのだ。

    12篇のどれも、甲乙つけがたい選び抜かれた傑作ばかり。紹介しきれなかった作品にもアイルランドの歴史が色濃く影を落としたものが多い。なかには読むのが辛い話もある。逆に、暗澹とした展開に突然穏やかな光が差し込む「秋の日射し」のような話もあって、折れてしまいそうな心をなぐさめてくれる。シングル盤ではなく、アルバムとした所以であろう。一気読みは避けて、一話一話をじっくり味わうことをお勧めする。

  • アイルランドを舞台にした話。

  • 02/13

  • アイルランドの歴史をざーっとおさらいしてから読むと、更に味わい深い作品集。

  • 「全身翻訳家」で紹介されていたので,借りてみた。
    しみじみした話が多い。

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著者プロフィール

1928年、アイルランドのコーク州生まれ。トリニティ・カレッジ・ダブリンを卒業後、教師、彫刻家、コピーライターなどを経て、60年代より本格的な作家活動に入る。65年、第二作「同窓」がホーソンデン賞を受賞、数多くの賞を受賞している(ホイットブレッド賞は3回)。短篇の評価はきわめて高く、初期からの短篇集7冊を合せた短篇全集(1992年)はベストセラー。現役の最高の短篇作家と称され、ノーベル文学賞候補にもたびたび名前が挙がった。長篇作に『フールズ・オブ・フォーチュン』(論創社)『フェリシアの旅』(角川文庫)『恋と夏』(小社刊)、短篇集に『聖母の贈り物』『アイルランド・ストーリーズ』『異国の出来事』『ふたつの人生』(以上小社刊)『密会』(新潮社)『アフター・レイン』(彩流社)などがある。2016年逝去。

「2020年 『ラスト・ストーリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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