たけこのぞう

著者 :
  • 国書刊行会
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336056665

作品紹介・あらすじ

「フラオ・ローゼンバウムの靴」「浴室稀譚」ほか、夢と現、幻視と写実が交錯する、無気味で不思議な味わいの幻想譚6篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 気に入った作家の作品はわりと全部制覇したいタイプなので、大濱普美子を遡っています。といっても寡作な作家なので今読める単行本は全部で3冊、遡って最後のこれがデビュー作。これもとても好きだった。

    「盂蘭盆会」のみアンソロジーで既読だったけれど、最初に読んだときのうっすら幽霊がいる(お盆なので帰ってくる)ことについての印象よりも、語り手の姉への嫉妬や執着、いびつな愛情のほうが今回は怖かった。

    好きだったのは「浴室稀譚」と「たけこのぞう」。前者は、風呂屋の二階に住む、作家を目指しながら塾講師をしている40代女性が風呂屋で知り合った同年代の女性といつのまにか同居する話。この著者は大人の女性二人の交流を描いた作品が結構ある気がする。

    表題作はエキセントリックな絵描きの母・松子についての娘の猛子(たけこ)による回想。何かホラーなことがおこるのかと思いきや、思いがけずハートフル(?)なラストで後味が良い。

    「フラオ・ローゼンバウムの靴」や「水面」は海外が舞台になっており、どうやら海外生活が長く、連れ合いもフランス人?(『陽だまりの果て』に「連れ合い徒然」というエッセイのような作品があった)のせいか、ちょっと多和田葉子っぽい雰囲気もある。

    それにしてもとにかく細部の描写が細かくて、建物の間取りや家具の位置などがとくに詳細なのだけど、そういった細部が書き込まれれば書き込まれるほど、リアリティよりも幻想性が増す不思議。

    ※収録
    猫の木のある庭/フラオ・ローゼンバウムの靴/盂蘭盆会/浴室稀譚/水面/たけこのぞう

  • 『十四番線上のハレルヤ』が良かったのでこちらも購入。日本橋の丸善に1冊だけ残っていた。
    初版の発行は2013年。5年後に第2作が出たことになるが、1作目は、ジャンルとしては純文学の範疇に含まれると思う。但しこの頃から幻想的なものに対する指向ははっきりとしていて、その結果が5年後の『十四番線上のハレルヤ』になったのではないか。

  • ややホラー要素ありの純文学短編集。ほんのり怖いような怖くないような、くらい。落ち着いた筆で描かれた静かな物語たちだった。

  • 日常の中に潜む不思議。
    彼岸と此岸がゆがんでつながっているような妖しさ。
    紡ぐ物語は独特の異世界。
    国語を教えながら、小説も書いているという女主人公と著者のイメージが重なる。
    「たけこのぞう」がよかった。

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著者プロフィール

1958年、東京生まれ。慶応義塾大学文学部文学科フランス文学専攻卒。パリ第七大学修士課程修了。著書に『十四番線上のハレルヤ』、『陽だまりの果て』(第50回泉鏡花文学賞受賞)がある。

「2023年 『猫の木のある庭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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