ふたつの人生 (ウィリアム・トレヴァー・コレクション)

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  • Amazon.co.jp ・本 (483ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336059178

作品紹介・あらすじ

施設に収容されたメアリー・ルイーズの耳には、今もロシアの小説を朗読する青年の声が聞こえている――夫がいながら生涯秘められた恋の記憶に生きる女の物語「ツルゲーネフを読む声」。ミラノへ向かう列車内で爆弾テロに遭った小説家ミセス・デラハンティは同じ被害者の老人と青年と少女を自宅に招き共同生活を始める。やがて彼女は心に傷を負った人々の中に驚くべき真相を見いだしていく……「ウンブリアのわたしの家」。ともに熟年の女性を主人公にした、深い感銘と静かな衝撃をもたらす傑作中篇2作を収録。

感想・レビュー・書評

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  • ひとが壊れる話ふたつ。

    「ツルゲーネフを読む声」
    各エピソードに新味はなく思い入れられるキャラは誰もいない。なのにどうしてこんなに読ませるのか。文芸。

    正直トレヴァーの長編ロマンスに出てくる男は非力でやさしいだけなので苦手なのだが、肝はヒロインがどうやって不幸な恋を取り扱うかなので、男は刺身のツマのようなものなのかもしれない。

    「ウンブリアのわたしの家」
    一話目で十分にやられたので、おまけ気分で読み始めたのだけれど、実はこちらのほうが鉈で殴られるような攻撃力のある話で、すっかりうちのめされてしまった。

    途中から感じ始める、主人公に対する「この人大丈夫かな?」という気分。でも彼女は何年もたってから、なんのいいわけもなしにあの時間を語りきっているわけで、これはものすごい強さなのか狂いなのか、区別はつかない。

    誰でも自分の人生を物語にする。「わたしの人生はこういうものであった、その結果いまのわたしはこのようにある」という物語。それがまちがっていたとしても、ないと立っていられない。わたしの物語が彼女のもののようでないなんてとてもいえない。「あの人大丈夫かな?」と思われずに済めばいいけれど、これは自分では絶対わからないのだ。

    そういえば、2話とも、お金があれば狂ってもなんとかなるという話だった気がする。つらい。

  • 「ツルゲーネフを読む声」「ウンブリアのわたしの家」の、姉妹のような2編。

    しかしまあ、日頃 ”可哀想” という感情を忌み嫌っている(だってなんの役にも立たないではないか!)私をもってしても、「ツルゲーネフ」のメアリー・ルイーズはもう気の毒で可哀想でたまらない。こんな恋愛、つらすぎる。つらすぎて、でも本人は幸せな陶酔で、もうどうしていいかわからない。泉鏡花「外科室」にも通ずる。

  • 初トレヴァー。なんと軽やかで濃密で、そして食わせものの作品だろうか。まずは栩木さんの翻訳がすばらしい。『ノーラ・ウェブスター』で初めて栩木さんの訳を知り、その美しい日本語に陶然とした。これからも読んでいきたい。

    栩木さんがレコードの両面、と訳者あとがきで評されたように、まったく違う人物ではありながら、共通点もあるふたりの女性の人生。二編に通底するのは「本を読む・書く」ということと「妄想」。

    両方ともとても悲しい人生を送る、女性の話。
    「ツルゲーネフを読む声」は、きれいで若さではちきれんばかりだったメアリー・ルイーズの世界が少しずつ崩れていくのが悲しい。善人ではあるけれど「まったくわかっていない」男で、ちょっとぞぞっとする癖のある夫の描写がうますぎる。気持ち悪い。
    目には見えない重石のような悲しみが少しずつメアリー・ルイーズに積み重なっていき、ひとから見たら奇行にしか見えない彼女の行動も私たちには理由があるのがわかる。

    「ウンブリアのわたしの家」は、反対にドラマティックな人生を送ったけれど、いまは南イタリアに屋敷を構え、ロマンス小説作家としてもそこそこ活躍している優雅なミセス・デラハンティの物語。
    過去に傷はあるけれど、それはもう昔のこと。いまはほとんど悠々自適といってもいい彼女に、またひとつ劇的な事件が起こって深い傷を負う。そこから静かに立ち直る過程を描く…のかと思いきや。とんでもない。
    現実と夢と妄想と書物の中の出来事が自在に入り混じって、わたしたちを混乱させる。どこからどこまでが真実で、嘘で、妄想なのか?主人公のみならず登場人物も謎が多く、アメリカでは映画化されたというのも納得。

  • 中篇2編。対照的な二人の女性、いずれも怖いくらい厳しい人生だが、派手な破滅ではなく、静かな水面の下に潜む「ままならぬまま老いていく」悲哀がひしひしと押し寄せる。
    「ツルゲーネフを読む声」歳の離れた退屈な夫のセックスレスライフから逃避するため、従兄弟との淡い恋愛の記憶にのめりこむメアリー・ルイーズ。
    「ウンブリアのわたしの家」50過ぎた裕福なマダムであるミセス・デラハンティ。彼女が抱えた過去の闇が明かされ、ロマンス小説への逃避が虚しい。妄想と泥酔色仕掛け描写にくらくらする。
    今年トレヴァーは亡くなったが、これからも翻訳は続いていくようで、とても楽しみだ。

  • アイルランドを舞台にした「ツルゲーネフを読む声」と、イタリアを舞台にした「ウンブリアのわたしの家」という中篇小説が二篇収められている。どちらも主人公が女性。『ふたつの人生』という書名は、この二人の人生を意味している。作者のウィリアム・トレヴァーは短篇小説の名手として知られている。短篇では、いろいろな人々の人生のある局面を鮮やかな手際ですくい取るその切り口と人間観察の鋭さにいつも感心させられるが、中篇には、また別の魅力がある。

    かなり長い時間をかけて一人の人間の人生を追うことになるので、単調にならないように構成が工夫されている。「ツルゲーネフを読む声」では、小説内に二つの時間軸が設定されている。一つは、主人公に結婚話が舞い込むところから。もう一つは、それから四十年たって、施設で暮らしていた老嬢が、もと居た家に帰ることになり、夫が迎えに来るところから始まる。

    読めば分かることなので明かしてしまうが、老嬢は主人公メアリー・ルイーズと同一人物。つまり二つの時間は過去と現在を表している。同時進行する二つの話を読み比べながら、読者はメアリー・ルイーズが何故、精神病院に入ることになったのか、その理由をまだ若かったころのメアリー・ルイーズの物語から探ろうとするにちがいない。それが、作家が読者という、長い小説に気乗り薄な馬に、先を急がせるために鼻先にぶら下げた人参である。

    メアリー・ルイーズの夫エルマーは悪い人ではない。妻を愛しているし、勤勉でその暮らしぶりも質素である。ただ、かつての名家も今は落ち目。同居する二人の姉は未婚で跡継ぎが生まれなければ家は遠縁の手に渡ることになる。家柄にプライドを持つ姉たちは農家の娘との結婚を認めたがらず、事あるごとに嫁に辛くあたる。エルマーは二人の姉に頭が上がらず、充分に妻を守ってやれない。メアリー・ルイーズにとって店の休みの日曜日、自転車に乗って実家に帰ることだけが心の慰めだった。

    結婚することは別の家族の一員になること。町で商売をする家と農場を営む家とは世界がちがう。新しい世界に受け入れられず、自らも溶け込むことができないメアリー・ルイーズが見つけた自分だけの世界というのが、いとこのロバートが朗読してくれたツルゲーネフの小説の世界だった。ようやく心が通じる相手を見つけたメアリー・ルイーズを更なる不幸が見舞う。もともと病弱だったロバートの早過ぎる死だ。

    どんどん自分の世界に入り込んでゆくメアリー・ルイーズと、その隠された秘密を知ることのない周りの人々との間に目に見えない高い塀のような物が積み上げられていく。塀の内側にはメアリー・ルイーズの愛する物が集まり、聞こえて来るのはツルゲーネフの小説世界。人物の名はみなロシア風だ。塀の外では現実のアイルランドの生活が営まれる。小説の世界の中では主人公の奇矯な振舞いの理由を知る者はいない。ただ、読者は知っている。この登場人物は知らないが、読者は知っているというところがミソだ。

    メアリー・ルイーズが創り上げた世界は完全な虚構の世界である。傷つきやすい柔らかな内部に入り込んだ異物を、分泌物で包むことで、自分が傷つかないような球状に作り上げてゆく真珠貝のように、メアリー・ルイーズは精神病院に入ることで自分一人の世界を守り続けた。そして、病院を出た後は、現実の世界の中にそれを位置づけようと策略を巡らし、それを成功させるはず。虚構の中に人間の真実を描き出すことにかけて、作家ほど長けた人はいない。メアリー・ルイーズという人格は小説家の隠喩かもしれない。

    「ウンブリアのわたしの家」は、ロマンス小説の作家が主人公。ひと口には言えない人生を送ってきたエミリー・デラハンティは五十六歳でイタリアのウンブリアに家を買う。ホテルに泊まれない旅行者に宿を提供するペンションのようなものだ。そして、夜はロマンス小説を書いている。そのエミリーがミラノに出かけた帰り、列車内で爆弾テロに遭う。多くの死傷者が出た。彼女も怪我をしたが、幸いなことに助かった。ただ、書きかけていた小説は頓挫した。あれほどあふれ出ていた言葉が出なくなってしまったのだ。

    彼女は同じ事件で傷ついた三人の客を自分の家に招待する。退役した将軍は妻と娘とその婚約者をなくした。オトマーというドイツ人の青年は片腕と恋人を失った。エイミーは両親と兄と言葉を失っていた。悲劇に見舞われた者同士が寄り添い、時間をかけて回復していこうと思ったのだ。そうした中、孤児となったエイミーの叔父というアメリカ人学者リバースミスがエミリーの家にやってくる。

    ロマンス小説の作家である主人公は他人の感情や思考を読み取ることができると思い込んでいる。その過剰な思い入れは、他人の事情を勝手に作り上げてしまう。そんなエミリーとリバースミスの実務的な気性とが真っ向からぶつかって起こすちぐはぐさが尋常でない。視点はエミリーに寄り添っているので、ややもすれば、エミリーの語ることを信じたくなるのだが、どこまでが彼女の想像で、どこからが真実なのか読者には知ることができない。もしかするとすべてが妄想かもしれないのだ。

    なにしろ、彼女の頭の中ではテロ事件を起こした、まだ見つからない犯人はオトマーで、時限爆弾は恋人がイスラエルに持ち込む荷物の中にあったことになっている。この「信頼できない語り手」という方法を最大限に生かすことで、この小説は成り立っている。主人公の作家の口を通じて、小説がどのように書かれるかが詳しく語られるのだから、これはもしかしたらウィリアム・トレヴァーの創作方法と重なるのかも、と思いかけて、いやいや、その手に乗るものか、と思い直した。なにしろ、語り手は妄想を膨らませる名人なのだ。

    トレヴァーが亡くなったと聞いた時、ああ、これでもう作品が書かれることはないのだなとがっかりしたものだが、未訳の作品がまだあるらしく、同じ訳者によって準備されているという。新作が読めないのが残念だが、また読めるのはありがたい。これからも楽しみに待ちたい。

  • 4.64/127
    内容(「BOOK」データベースより)
    『施設に収容されたメアリー・ルイーズの耳には、今もロシアの小説を朗読する青年の声が聞こえている―夫がいながら生涯秘められた恋の記憶に生きる女の物語「ツルゲーネフを読む声」。ミラノへ向かう列車内で爆弾テロに遭った小説家ミセス・デラハンティは同じ被害者の老人と青年と少女を自宅に招き共同生活を始める。やがて彼女は心に傷を負った人々の中に驚くべき真相を見いだしていく…「ウンブリアのわたしの家」。ともに熟年の女性を主人公にした、深い感銘と静かな衝撃をもたらす傑作中篇2作を収録。』


    ツルゲーネフを読む声
    (冒頭)
    『五十七回目の誕生日を控えた、やせぎすの、見るからに華奢な女がひとり、片隅の食卓で几帳面にものを食べている。あらかじめ半分に切られた食パンにバターをつけ、目玉焼きの黄身をつぶし、ベーコンを細かく刻む。「そう、これこそが幸せ!」女は声を上げてそうつぶやく。』


    原書名:『Two Lives 』
    著者:ウィリアム・トレヴァー (William Trevor )
    訳者:栩木 伸明
    出版社 ‏: ‎国書刊行会
    単行本 ‏: ‎483ページ

  • どちらも引き込まれるように読んだ。
    でも、はっきり区別するなら、
    『ツルゲーネフを読む声』は好き。
    『ウンブリアのわたしの家』は嫌い。

    【ツルゲーネフを読む声】

    現在と過去を交互に書かれている。
    メアリー・ルイーズにいったい何があったのか。

    特に好きになったわけでもないエルマーと結婚したが、仕事も頑張って良い暮らしができると思っていたメアリー。
    しかし、結婚してからすぐにメアリーの中には何かが違うという感覚があり、それは濃厚になる。
    エルマーの姉二人は意地悪だ。元々エルマーとメアリーとの結婚に反対していた。
    メアリーの姉レティも妬みがありながらも反対していた。

    メアリーはそのまま結婚してしまったが、どうして、この結婚をしてしまったのか。後悔と辛い毎日。

    メアリーの気分の浮き沈みがよく描けていて、ものすごく伝わってくるので、メアリーが家に帰るときの憂鬱な気持ちに私自身も胃がキュッとなったり、泣き出したくなる。
    情景描写も目の前に広がり、映画を観ているようだ。

    それぞれの登場人物がはっきりとした個性を持っていてしっかり伝わってくる。

    せっかくロバートの気持ちも知ったというのにまた不幸が重なり、メアリーが可哀想でならない。

    両親や姉のレティも心配していたが、メアリーは自分を隠していた。

    メアリーは耐えられなくなった。
    屋根裏部屋にこもり、ロバートの朗読したツルゲーネフを思い出し、墓を訪れ、空想にふける。
    逃避をすることで、なんとか生きていく。

    施設に入れられて、ようやく平穏が訪れる。

    最後に事実が若い牧師へ語られる。
    毒を買ったのは、わざとだ。使ってない。エルマーと鬼姉妹を騙すものだった。
    自分の居場所を確保するために。薬も一度も飲んだことがなくトイレに捨てていた。

    施設から出てからは、また屋根裏部屋へ。
    メアリーはエルマーに「お墓を掘り返してロバートを別の墓へ入れて、私が死んだら同じところへ埋めて」と毎日頼んでいる。

    実際はどうなったかはわからない。
    ただ、メアリーから聞いた話から、若い牧師は想像する。

    “彼女はクウォーリー家の三人が死んだ後も生き延びるだろう” “かくして葬式が執り行われ、恋人ふたりはともに横たわる。”

    最後の事実の畳みかけとラストの未来が、ゾクっとした。

    苦しい環境から逃避するために作り上げた妄想の中で生きてきて、最後は一緒になるためにそれを現実にする。

    苦しめられた人たちと同じ墓に入るなんて地獄だものね。

    ツルゲーネフは『初恋』しか読んだことがない。
    『父と子』『その前夜』はまた気が向いたら読むことにしよう。


    【ウンブリアのわたしの家】

    過去に実の親に捨てられて、お金で引き取られたミセス・バラハンティ。
    義父に性的虐待を受けたことがあり、逃げ出し、今では家庭的なホテルを運営。

    ある日、列車に乗って買い物にいくところ、爆破テロ事件に巻き込まれる。

    同じ事件で同じ病院で入院した将軍、ドイツ人青年オトマー、少女エイミーにしばらくホテルに滞在しないかと誘う。

    バラハンティ含む4人と、一緒に切り盛りするクインティ、料理人、お手伝いとの暮らしが始まった。

    ある日、エイミーの叔父ミスター・リバースミスが見つかり、引き取りに来ることに…

    ミセス・バラハンティの妄想と現実が混ざり、ミスター・リバースミスにさまざまな語りをするが、気が狂ってるかのようにも思える。
    妄想が混じり聞かされる方も困惑、不気味に思うしかない。私自身も読んでて、変な女性だと思ったし、イライラさせられるし、でも、リバースミスも冷淡で嫌な感じの人にも思えた。

    だけど、妄想の中にもそれはあり得るかもしれない、可能性はあるかもしれないと思えることもある。
    だから、ややこしくなる。

    ミセス・バラハンティの妄想に反して、エイミーが幸せになってたらいいなと思う。

  • 初めて読んだ作家だが、最初のツルゲーネフを読む声
    はとても印象的だ。
    貧しい娘が都会の生活を夢見て不幸な結婚生活を
    送る内、病弱な従兄弟と自由な時を過ごし癒され
    純粋な気持ちで彼を愛する様になる。
    従兄弟が突然死に、純粋な恋心が彼への思いと思い出
    に囚われていく様を、周りの人々の心情を交え
    なぜ彼女が永く療養施設に居なければいけなかったのか
    謎が解き明かされる。
    もう一つの、ウンブリアの私の家もロマン小説の作家が
    列車のテロに遭いそこで、身内や恋人を亡くした
    老人、若者、子供を自分の宿兼自宅に呼び寄せ
    事故の傷を癒そうと飼って出るが、こちらの主人公の
    女性も現実と妄想が混ざり合い本当には何が真実かは
    分からないと言うオチになっている。
    二編ともやや抽象的で最後が分かりにくい。

  • 二篇ともに苦く、深く、重厚な味わい。どうにもならない歴史の荒波に翻弄される人生を生きた、二人の女性の物語が収められている。私はといえば読了後しばらくの間、心に残ったなんとも言いがたい苦々しい渋みを味わっていた。

    しかし、これがトレヴァーの創り出す物語の不思議なところなのだが、数ヶ月経つうちに胸の中の渋みがまるで、ワインが長い時間をかけて熟してゆくかのように変わっていった。日常の中でふと物語の筋や一場面を思い出し、心の本棚から取り出して胸の中でもう一度組み立ててみる。すると読了直後に感じていた重々しさとは、別の感情が胸に生まれていることに思わず気づく。わずかな時間だけ実現した甘い恋と愛の記憶、そのよすがにすがり生きる二人の女性の思い。それが静かに読者である私の胸にも打ち寄せてくる。

    私がもっとも好きな、極上の切れ味を誇る短編の名手としてのウィリアム・トレヴァーは本書にはいません。(トレヴァー・コレクションの中にも「恋と夏」という至高の恋愛長編がありますが、あちらはもっと爽やかでノスタルジックな雰囲気の一冊です。)しかし、味わい深い愛の物語の紡ぎ手(こんなキザな表現しか思いつきませんが…)としての、少しだけ違った顔を持ったトレヴァーがここにはいます。
    ここ最近、巷に乱雑するありきたりなラブストーリーに物足りなさを感じている方にこそ、お勧めしたい一冊です。

  • 「ツルゲーネフを読む声」と「ウンブリアのわたしの家」の2作品が収録された本です。どちらも主人公は女性で、彼女たちの視点から物語が描かれます。
    2作品とも、過去と現在、現実と想像が交錯する構成でした。最初はそれに読みづらさを感じましたが、物語が進むにつれて全く気にならなくなりました。
    どちらの物語も、最終的には人生の苦さと深さが感じられて、心に残る作品でした。

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著者プロフィール

Willam Trevor Cox 1928-2016.
1928年、アイルランド・コーク州生まれ。
本書はペンギン社版
トレヴァー短編集『After Rain』(1996)の全訳。
邦訳書に、
『同窓』
(オリオン社、鈴木英也訳、1981年)、
『リッツホテルの天使達』
(ほおずき書籍、後恵子訳、1983年)、
『20世紀イギリス短篇選 下 岩波文庫』
(「欠損家庭」(ウィリアム・トレヴァー)所収、
 小野寺健編訳、岩波書店、1987年)、
『フールズ・オブ・フォーチュン』
(論創社、岩見寿子訳、1992年)、
『むずかしい愛  現代英米愛の小説集』
(「ピアノ調律師の妻たち」(ウイリアム・トレヴァー)所収、
 朝日新聞社、柴田元幸・畔柳和代 訳、1999年)
『フェリシアの旅  角川文庫』
(アトム・エゴヤン監督映画化原作、角川書店、皆川孝子訳、2000年)、
『聖母の贈り物  短篇小説の快楽』
(国書刊行会、栩木伸明訳、2007年)、
『密会 新潮クレスト・ブックス』
(中野恵津子訳、新潮社、2008年)、
『アイルランド・ストーリーズ』
(栩木伸明 訳、国書刊行会、2010年)、
『恋と夏  ウィリアム・トレヴァー・コレクション』
(谷垣暁美 訳、国書刊行会、2015年)、
『異国の出来事  ウィリアム・トレヴァー・コレクション』
(栩木伸明 訳、国書刊行会、2016年)、
『ベスト・ストーリーズIII カボチャ頭』
(「昔の恋人 ウィリアム・トレヴァー」所収、
 宮脇孝雄 訳、早川書房、2016年)、
『ふたつの人生  ウィリアム・トレヴァー・コレクション』
(栩木伸明 訳、国書刊行会、2017年)、
『ラスト・ストーリーズ』
(栩木伸明 訳、国書刊行会、2020年)ほか。



「2009年 『アフター・レイン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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