H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って

  • 国書刊行会 (2017年11月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784336061775

作品紹介・あらすじ

『服従』『素粒子』で知られる《世界一センセーショナルな作家》、ミシェル・ウエルベックの衝撃のデビュー作、ついに邦訳!
「クトゥルフ神話」の創造者として、今日の文化に多大な影響を与え続ける怪奇作家H・P・ラヴクラフトの生涯と作品を、熱烈な偏愛を込めて語り尽くす!
モダンホラーの巨匠スティーヴン・キングによる序文「ラヴクラフトの枕」も収録。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

作品は、著者の深い愛情と敬意を込めて、ラヴクラフトの生涯とその作品の魅力を探求しています。ウエルベックは、ラヴクラフトの人生や人間性に共感し、彼の作品が生まれた背景を真摯に考察。特に、ラヴクラフトの文...

感想・レビュー・書評

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  • ウェルベックによるラヴクラフトへの愛や尊敬や親近感や執着心を赤裸々に綴ったラブレター。だと、読み終わって感じた。本作はウェルベックのデビュー作らしく、ラヴクラフトマニアであるところの著者が彼の人生を追いながら、作品やラヴクラフトの人物像を探る、というもの。だがそこに、ウェルベックの偏屈さや、作家としての視点、悲観主義が加わることで、ただの「作家研究」には止まらない、「文学性」のようなものを獲得するに至っている。というのは、ウェルベックがラヴクラフトの人生や人間性にある種の共感を示しているからで、お互いつくづくリアリズムに興味がない人なのだということが伝わってくるからだ。
    ウェルベックが言うように、ラヴクラフトの文章は「文学的ではない」。それは彼の視点がもはや人間の生き方だとか愛だとか、そういう根拠に乏しい概念へはほとんど向いておらず、むしろ世界への「恐れ」や「絶望」にこそ信頼を置いていたからに他ならない。
    生来備わっていた気質も関係しているのだろうが、短い結婚生活や、ニューヨークでの貧困や差別的な暮らしからその「傑作群」は生まれたのだとウェルベックは言う。彼の生み出す短編は、ヴァンパイア伝説や、幽霊譚などと言った、何かに再解釈が不可能な領域ーー議論の余地の無い異界であるから、神話となったのだと。
    ウェルベックはラヴクラフトについて知ることで、考察を重ねることで、彼に近づき、共鳴する。混沌に満ちて、輝くほどの絶望を描くこと、それは現実の写鏡であり、世界にも、人生に対しても戦うことをやめないそのラヴクラフトの生涯に。ラヴクラフトこそは抗う者であり、真の詩人だったとする締めくくりは感動的ですらあった。
    一人の男が絶望の淵に沈み、世界に宇宙的恐怖をばら撒く、という流れは主人公が悪堕ちする小説や映画のようですらあってーー

    「生きることに成功しなかった男は、最後には書くことに成功した。苦しみの道のりだった。幾年もかかった。ニューヨークが手助けしてくれた。あれだけ心優しく、礼儀正しかった男が、そこで憎悪を発見したのだ。(P.198)」

    序文にはスティーヴン・キングが寄稿しており、視点や熱量の違いもまた良い。ほか、ラヴクラフトの人種差別がどのように形成され、移り変わって行ったのかを真摯に突き詰めてもいる。

  • ミシェル・ウエルベックのラヴクラフト愛がつよい。
    スティーヴン・キングの序文も愛がありました。愛されてるなぁ。
    面白かったです。
    (些事ですが、ラヴクラフトの綴りを意識したことなくて“LOVE”なんだな…と思いました)

    ウエルベックが小説書く前の、第一作がこの評論とは驚きでした。
    「簡潔な表現が美文」とされてるところに真っ向から対立するラヴクラフトの文章読むと、この文章を使いこなす力量の問題なんだなぁとつくづく感じます。受け取る側の力量でもあるけれど。

    「クトゥルフ神話」という神話世界を創世したラヴクラフトはやはり偉大だなと思いました。生前に評価されてないのが悲しい(ヨーロッパだと思ってたけれど、文ストでアメリカの作家というのを学びました)
    ラヴクラフトもウエルベックもあまり読んでないけれど読もうと思います。

  • ハワード・フィリップス・ラヴクラフト 1890年ー1937年
    エドガー・アラン・ポーと並ぶ、アメリカ怪奇・幻想文学を代表する巨匠。
    「クトゥルフ神話」の創造者として現在に至るまで、小説・漫画・映像作品・ゲームなどの文化に、多大な影響を与え続けている。生前は文通を好み、仲間からは「HPL」と呼ばれていた。

    本書の帯に書かれている文章を転記しました。
    本書はH.P.ラブクラフトさんの生涯と彼の作品に関して愛情深く綴った本です。
    ミシェル・ウエルベックさんのデビュー作であることが帯にも記載されています。
    ミシェルさんの作品はまだ未読なので、いずれ読むことになるのだと思います。
    HPLさん(私も親しみを込めて彼の友人が使っていた呼び名を使わせていただきます)の作品は中学か高校生の時に創元推理文庫で発売されている全集を読んでいます。怪奇・幻想といった分野にハマっていた時期で、このころにエドガー・アラン・ポーの全集も創元推理文庫からの『ポオ小説全集』で体験していました。
    HPLさんの作品はどれも太古の地球でかつては繁栄していた人類とはまったく異なる種族が登場します。見たこともない生物なので、HPLさんが描写する活字から想像を膨らませて読んでいたことを思い出しました。久しぶりに読み返したいなぁと思ったのですが、実家にも残っていないかな?なので、国書刊行会が提供している『新編 真ク・リトル・リトル神話大系』全7巻を読むとするか、はたまた、青心社が提供している『クトゥルー (暗黒神話大系シリーズ)』全13巻を読むか、新潮社の『クトゥルー神話傑作選』3巻(まだ続くのですかね?)にするか、書店でラヴクラフト作品試読会が必要です。
    肝心の本書の感想ですが、再びHPLの作品を読み返したくなりますし、未読の方は読みたくなります。ところどころに作品の一部が引用され、その構成の妙だったり、的確な表現スタイルだという解説が心地よいのです。HPL本人の当時の生活環境が作品にどんな影響を与えたのかという考察も読むことができます。
    もう一つ嬉しかったのが、スティーブン・キングさんの序文が読めること。
    ラヴクラフトの世界が好きな人には、超おすすめです。

  • クトゥルフ神話の始祖、ラヴクラフトの評伝。序文をスティーブン・キングが書いている。自分の作品の評価とか全く気にしていなかったこと、世界に対して諦観していたことなどが綴られている。どちらにしても彼の恐怖の世界はとても惹かれる。

  • ラヴクラフトの人生とその内面にうまく切り込んだ良書でした。
    人種的恐怖と金銭的困難に陥った保守派の白人が作り上げた、宇宙規模の暗い神話群を再読したくなる。

  • ウエルベックのデビュー作。
    クトゥルーの門をくぐりあぐねてる自分には最適な評伝…だったろうか。ズブズブになるであろうしビビっておる。

  • ウエルベックの作品にみなぎる思想がすべて本書に凝縮されている。
    ラヴクラフトが性と金銭を排除した孤高の世界を作り上げたとするならば、ウエルベックは性と金銭の側から孤高へ向かった。啐啄の機とはこういうことを言うのかもしれない。
    つまり親鳥であるラヴクラフトが薄っぺらい卵の殻のような世界を外側から破壊し、ウエルヴェックという雛鳥は、内側から世界を打ち破ろうとした。

    とはいえ、本エッセイで初めてラヴクラフトの一端に触れた者として、ラヴクラフト作品を読みたいという気持ちにまったくならなかったところがすごい。褒め言葉になっているだろうか。
    やはり本作の魅力は、ラヴクラフトを語るウエルベックであり、本論よりも、各節を飾る「見出し」が何とも良い。
    本作がそれほど面白くないのは、ラヴクラフトと同様、ウエルベックは謙虚なことに、ラヴクラフトの系譜に自分がいる輝かしさを差し引いて論じているがためだと思う。

  • ラヴクラフト愛の詰まった一冊。もう、序文のスティーブン・キングからして熱量がすごい。そのスティーブン・キングをして本作は「学問的ラブレター」と言わしめている。
    ミシェル・ウェルベックのデビュー作。
    ちょっと面白かったのがラヴクラフトが作家を志す若い文通者に対して「怪物的な、名状し難い、曰く言い難い」といった形容詞を濫用しないようにと忠告しているということ。本人がすごく使用しているのに!

  • 武蔵野大学図書館OPACへ⇒https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000236859

  • お金や性などの俗物的なものに興味を持たずに全てを諦めていた人間の作品が神話化していく。ネガティブなもの、暗いものは多くの人を救うのだと再認識することができた

  • HPラヴクラフト読もうって思った

  • 正直こんなもんまで翻訳、出版されるのは余程作家に需要があるからなんでしょうなと思った

  • ウエルベックのデビュー作であり、ラヴクラフト(クトゥルフ神話)の評伝。
    ラヴクラフトのクトゥルフ神話体系における「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」という概念、無機質で広漠な宇宙において人類の価値観や希望には何の価値もなく、ただ意思疎通も理解も拒まれる絶対的他者の恐怖に晒されているのだという不安と孤独感、に興味があれば、一読を薦める。

  • 未読でよかったわー。
    いわゆるどんな世界観、どんな人生を
    送ってきたかの入門的なもの。
    あ、あとキング大先生の序文は必読。
    絶対これさ、原文Fワード入ってるだろ(笑)

    彼はジェントルマンであり続けるとともに
    決してこのよのなかではまともに生きることができないことを自ずと理解していました。

    そりゃあ人に関するゆがんだあの
    嫌悪感ですもの…
    あれを抱き続けていろいろ破綻したら
    彼は殺人者になっていたでしょうな。

    少しだけ本文が出ていますが
    何とも言えないまがまがしさ。
    これはいつか邂逅出来る日が来ればいいのぉ。

  • ウエルベックもラヴクラフトも未読の身だったが、なかなかに刺激的な読書だった。ラヴクラフトが金銭およびセックスについてほとんど記述しない作家であったというのが印象に残るが、それ以外の作品を書く際のラヴクラフトのこだわりといったものを、同じく作家であるウエルベックが分析し語っているのが面白い。どちらも読みたくなったけれど、いつになるか…。

  • ・ミシェル・ウエルベック「H・P・ラヴクラフト」(国書刊行会)を読む。ウエルベックは「服従」の作家だと思つてゐる人間には、にはかには理解し難い作家論であらう。さう、ウエルベックが作家論としてラブクラフトを対象として書いてゐるのである。ウエルベックにかういふ趣味があつたのかと思ふ。たぶんない。本書は1999年に初版が出て、更に2005年にスティーブン・ キングの序文付きで出た。しかし、実際には30代初め、つまり1991年に本書を出してゐるから、私がウエルベックはHPLとは無縁だと考へる方がまちがひだと言ふべきであらう。小説を初めて出したのがその3年後である。彼にとつてHPLはむしろ親しくもまた近しい存在であつたらしい。といふことは、ウ エルベックにかういふ趣味があつたと言ふべきなのであらうと改めて思ふ。
    ・本書は最初にステェーヴェン・キング「ラヴクラフトの枕」といふ言はば<頌>を置いて、以下本文が続く。「序」に続いて「もう一つの世界」 「攻撃の技術」「ホロコースト」の三部からなる。三部といつても第二部が少し長い程度であつて、他は短い。大体、本書は「序」を含めて本文170頁弱、しかも各章には必ず扉がつく。つまりはかなり贅沢な設計の書である。詰めることをしない。これには原書の<小ささ>が関係してゐるのであらうが、評伝でこれだけゆつたりした組み方をしている書はなかなかお目にかかれない。少なくとも私は知らないのだが、それでもその中にこれだけの内容を詰め込 んだのはなかなか見事と言ふべきかもしれない。私はラヴクラフトの評伝の類を読んだことがない。以前はそれこそ作品解説がその主なるものであつた。ところが最近はさうでもなくなつてゐるのではないか。私は相変はらず読んでゐないのだが、それでも以前よりはラヴクラフトを論じる人が増えたやうな気がする。その点からすれば、本書はどうなのであらうか。90年代初めといふのが古いのかどうか。古いとしても、その見方が<正しい>のかどうかである。 「ホロコースト」の中にソニア・グリーンとのことが出てくる(155頁)。ソニアはラヴクラフトの妻であつた。初めは熱々だつたが、後に関係は冷えて行き、結局、離婚するに至る。ウエルベックの文章からすれば、これがラヴクラフトの人生に決定的な影響を与へたやうに見える。実際にさうかもしれない。あるいは、さうではないかもしれない。私には分からない。さういふこともあらうかと思ふ。同様なのが人種主義者といふものであらうか。これなどはもしかしたら 正しいのかもしれないと思ふ。「ラヴクラフトは実のところ、つねに人種主義者だった。」(173頁)さうかもしれない。「若い頃は(中略)人種的偏見の軌を超えるものではない。」(同前)それがニューヨーク生活を機に変はつたといふ。「そこで、これでもかというほどの憎悪、嫌悪、恐怖といったものを知る」 (174頁)ことによつて、「彼の人種主義的見解が本物の人種差別神経症に変化」(同前、「見解」には傍点付き)したといふ。これはありさうである。本来的にさういふ人間であつても、それが「神経症」になるにはそれなりの経緯が必要である。これまでかういふ指摘がなされてゐたかどうか。とまれ、本書に於け る「攻撃の技術」の様々は「ホロコースト」以上におもしろい。細かい数字にかこだはるとか、ほとんどいきなり恐怖譚が始まるとかの指摘もあつたかどうか。 「熱烈な偏愛を込めて語り尽くす!」(帯)その偏愛の程度を知りたいと思ふと同時に、「世界と人生に抗って」といふからにはラブクラフトは本当に「世界と人生に抗っ」たのかと思ふ。

  • ラヴクラフトについての解説は創元版の解説などをはじめとして、多数出ているが、ウェルベックがラヴクラフトの人物的本質から彼の作品の特徴と絡めて彼の作品とラヴクラフト自身に熱く「語った」本。
    現在、ラヴクラフトの世界観は「クトゥルフ神話」の名の下に広まっているが、ラヴクラフトの表したかったモノは理解し得ない「何か」であったはず。その意味では彼の作品をよに知らしめたとはいえ、ダーレスらの「クトゥルフ神話」の作成による体系化と、今日の「クトゥルフ神話」周辺における商業的な活用のされ方はラブクラフト自身の追い求めるものとは真逆であったというよう。

  • ミシェル・ウエルベックのデビュー作。ラヴクラフト論であるが著者も言うようにある種小説として読める。ラヴクラフトを主人公とし、主人公しかほぼ出てこない小説として。
    ラヴクラフトの作品が徹底的に性や金といった生臭く人生に横たわる要素を徹底的に排している理由が非常にわかりやすく書かれている。
    資本主義、経済効率、セックスetcをガンガンに作品に盛り込むウエルベック各著作はラヴクラフトの作品を裏返したものだったのだとこの著作によって証明されたと見方もできるであろう。

  • 『服従』などで知られるミシェル・ウエルベックによる、ラヴクラフトの評伝。
    評伝自体はまるで小説を読んでいるようで、ラヴクラフトに対するかなり強い思い入れを感じる。ウエルベックが書いたと言われると凝ったものを想像してしまうが、本書に関してはかなりストレートだった。
    また、スティーヴン・キングの力の入った序文も読み応えがある。

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著者プロフィール

1958年フランス生まれ。ヨーロッパを代表する作家。98年『素粒子』がベストセラー。2010年『地図と領土』でゴンクール賞。15年には『服従』が世界中で大きな話題を呼んだ。他に『ある島の可能性』など。

「2023年 『滅ぼす 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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