- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336063045
作品紹介・あらすじ
鬼才高原英理三十年の軌跡。これを知らずに幻想文学を語ってはならない。
鉱物、結晶、月、星、夢、夜、夏、少年少女、世界改変、書物、詩。いくつものモティーフを重ねつつ、ときに重厚、ときに軽妙、それぞれが全く異なる現代日本幻想文学の至高点。幾多の具眼の士から絶賛された珠玉の既発表作10篇に遊び心あふれる書き下ろし中篇『ガール・ミーツ・シブサワ』を加える。
感想・レビュー・書評
-
軽いタッチの幻想小説が収録された短篇集。
気になった作品にコメントを。
「青色夢硝子」…長野まゆみに「アレフ」を接続したような話。初出87年なので長野まゆみのデビューより早い。
「林檎料理」…雪舟えまっぽい感覚手渡し系の文体で、作風としては本書のなかで一番面白かった。大手拓次のほか、いろんな近代詩のコラージュのようになっている。
「ほんたうの夏」…賢治SF。これも長野まゆみっぽい。プログラムの構造はぼんやりしてるところとか(笑)。長野まゆみなら絶対兄弟にするけど、この作品は兄妹だからこのあと二人で子を作るのかな、とか考えだすと「瓶詰の地獄」。
「出勤」…これが一番よかった。ディストピアの日常系というジャンルは珍しくないけど、孤独のグルメ的「これでいいんだよ、これで」精神で全部済ますのが笑える。乱歩特集の雑誌に掲載されたのだそうで、他に中井英夫特集に書いたという作品もあったけど、こっちのほうが中井英夫っぽいと思う。
「ガール・ミーツ・シブサワ」…この読書遍歴で2001年にゴスに目覚めた人が、嶽本野ばらに言及しないことある?とか、矢川澄子も澁澤の元妻としてしか触れず著作を読んでないふうなのはなんでとか、このシーンは絶対澁澤軍歌うたってるでしょとか、無限にツッコミを入れてしまう。『森娘幽界異聞』を引き合いにだされちゃうと、笙野頼子って面白くって偉大だよなぁ。ゴスロリにとっての<救世主シブサワ〉は興味あるテーマだけど、ここはご自分と同じ性別と年齢の語り手を設定するべきだったんじゃないでしょうか。
嫌いじゃないし上手だと思うんだけど、『月光果樹園』を読んでツボが違うかもと思ったのを再確認した感じ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『ゴシック文学入門』のトリが著者だったので、この機会にと積ん読崩し。光沢のあるナイトブルーの函が素敵。中身は軽くもしっかりとした作りで、上品な存在感がある。美しい。
「青色夢硝子」「林檎料理」「憧憬双曲線」「石性感情」「猫書店」「ほんたうの夏」「出勤」「穴のあいた顔」「ブルトンの遺言」「ほぼすべての人生に題名をつけるとするなら」「ガール・ミーツ・シブサワ」を収録。
ひとつひとつが同じスペクトラムのどこか別のところに位置しているイメージ。どれも似たり寄ったりというのではなくて、それぞれ独立した作品でありつつ、そのすべてがどうかすると重なる位相にいて、相互に交信可能であるような。重さ軽さを感じさせるポイントと、その程度のグラデーションがそう思わせるのかなと、のっけの「青色夢硝子」に幻惑された衝撃にふわふわしながら思った。
物語世界、それを知覚する世界、さらに遥かな超現実へ突き抜けていく次元旅行に内臓が浮く「青色夢硝子」、宙を踏むような感触が不思議で楽しい「林檎料理」(大手拓次、ちょっと気になる)、月夜に部屋を訪れていたら、あるいは尚も夢を追っていたらと想像してしまう「憧憬双曲線」等々、どれも味わい深く面白かった。重さ軽さのポイントのひとつであろう筆致も、その時々でけっこう好み。「出勤」の何気ない描写の中の、「これは絶対やばいやつ」感はなんなんだろう(案の定やばかった)。「ほぼすべての人の人生に題名をつけるとするなら」の社会のグロテスクさも。
ちょっと異色な「ガール・ミーツ・シブサワ」は「(色々思うところはあるけど)澁澤龍彥に愛を叫ぶ」。澁澤龍彥を読むのはこれからのいつかだけど、すでに私も思うところはけっこうある。主に矢川澄子とのこと。
「猫書店」にはびっくりした。読んだことあるなと思ったら、別の筆名も使っていたのね。 -
短編集。
著者はどちらかというとアンソロジスト、評論家としての方が有名のような気がするが、小説も面白かった。特に書き下ろしの『ガール・ミーツ・シブサワ』はコミカルなタッチでその他の短編とは一線を画している。この先も小説を書き続けて欲しい。
著者プロフィール
高原英理の作品





