蓑虫放浪

  • 国書刊行会 (2020年10月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784336066817

作品紹介・あらすじ

幕末から明治にかけて北は青森、南は鹿児島まで全国津々浦々を自由に旅した漂泊の画人、蓑虫山人。東に名所あると聞けば行って絵にし、西に遺跡あると聞けば行って掘り起こし。絵と書を好み縄文遺物の発掘まで手がけた風狂の人の足跡を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 蓑虫山人‥‥ 。絵の技術にはムラがあり、立派な人物でもなければ有名でもない。定職にも就かず、各地で人の好意に甘え、勝手に遺跡を発掘し、変な格好をして変な行動をして、ー死に方に立派もなにもないものだがー風呂上がりにのぼせて死んでしまったような人物だ。(28p)

    何故、こんな人物のために、こんな立派な書物を作ったのか?図版と写真が非常に豊富。雑誌「Discover Japan」連載をまとめた。

    要は好奇心の塊なのである。旅が好きで、たまたま出会った縄文遺物が好きで、勝手に発掘する中で、明治20年、亀ヶ岡遺跡の最初の紹介者にもなる。あの国宝級の遮光土器(宇宙人の姿をしたヤツ)が出た遺跡である(おそらく蓑虫山人が発掘者)。そういうわけで、縄文時代のフリーペーパーを10数年前から作ってきた望月昭秀さんにしてみれば、他人のようには見えないのだろう。私も、とても親近感が湧いた。

    幕末、岐阜県の豪農の家に生まれ、家を飛び出し、放浪の人生を送る。池大雅や渡辺崋山、鉄斎などの南画を見様見真似で描いていて、絵日記を残している。俳諧も好きだった。若き日は勤王の志士の真似事?もしている。大ボラ吹きなので眉唾モノなのだけど、西郷隆盛と月照の心中を助けたのは自分だと言っているらしい。でも絶対ウソとも言い切れない。ともかく、現代ユーチューバー顔負けの「やってみよう」精神に溢れている。また、南画の絵はお世辞にも美術品とは言い難いが、味があり、現代流行りのマンガエッセイのように感じる。読んでいくうちに誰でも蓑虫山人を好きになってゆく。不思議な本だ。

    後書きを読むと、意外にも写真家・田附勝さんの方から企画を持ち出したのだという。放浪して、地方の素封家と仲良くなって、観光地をプロデュースして、博物館を作る夢を生涯持つ。対象者の懐に飛び込むことを常とする写真家の田附さんとしては、なんとなく通じるところがあるのかもしれない。

    有名ではないけど、無名じゃない。
    あゝこんな風に人生を送れたら、どんなに良いだろ。

  • おもしろかった。江戸は天保、岐阜で生まれ幕末明治を生きた土岐源吾のバイオグラフィー。大変魅力的な変人。おしゃれな写真と軽いタッチの文章でとてもリッチな娯楽本。読了後に気づいたが、ディスカバージャパンという雑誌の連載だったらしい、確かにティピカルにグラビア雑誌の記事的。学術書ではないので、誰にでもとっつきやすく楽しめると思う。逆に濃い正確な情報が欲しい人には、欲しい情報がとても少なく、写真がお洒落すぎて見たいところが見えず、ちょっとモヤっとすると思う。
    まあ、軽くて気分転換に良い。多くは望むな。

  • ほがらかで素敵な絵、文化や風俗を残すという歴史的価値(著書が言うには不正確だったり、盛った内容も多いよう)、シュールでコミカルなストーリーによるおもしろさと人間らしさ、すべておもしろい。

    東北、岐阜から京都、九州など行きたくなった。というか行く。

  • 大変面白く読んだ。今年のベスト候補。
    こんな人物がいたのだなぁ。好事家にして奇人(放言癖あり?)。でもなにか一分の筋を通っている感じがしたな。筆者の愛が伝わってくるような文章の故か。
    プロの観光家とかサブカルポップ仙人、インフルエンサー蓑虫なんて言葉に大爆笑。なんだ俺らのパイセンなんだ…

  • 明治の初めに自分で日本初(?)の縄文展を開いてしまう蓑虫山人さんステキです。掛け軸や絵日記の絵も明るくて、実物をぜひ見てみたい!

  • 描く人間がいつもふにゃっと笑っているところ、かわいい人形を懐に抱いて旅をしていたところ、世間的地位に関係なく自分が好きと思った人と仲良くなるところ。蓑虫さんが生きていたら、今すぐ会いに行って「好きですー!」と伝えたい。

    蓑虫さんほどじゃないにしても、日本各地にはこういう「地元では有名」な人たちが、一部の郷土史家の間でしか知られないまままだたくさん埋もれていると思う。
    こんなふうに読ませる文章と美しい写真で、そうした奇人/変人/偉人がこれからもっともっと紹介されるようになるといいな。

  • 蓑虫山人
    この名が素晴らしい
    幕末から明治にかけて
    日本の諸国を「観光」のために
    放浪し、各地で「絵」や「書」を遺した
    自由人
    こんな人が
    その当時にいたのだ
    と思うだけでも 楽しい

    この蓑虫山人の足跡を
    「蓑虫放浪」と名付けて
    この世に出してくれた
    著者、編者、出版社が
    あることも また 楽しい

    経済成長とは 真逆の
    経済効率とは 真逆の
    人生を辿った先人が
    確かに いた
    それを思うだけでも
    なにか 救われる気がする

  • 蓑虫山人は夢を成し遂げていない。だけど、人生をかけて夢を追いかけていた。
    夢を成し遂げるためには、寄り道ばかりのように見える。だけど、その寄り道こそが蓑虫山人に惹かれるところでもあるのだと思う。行きたいところに行って、気に入れば長居して、欲しいものは手に入れて、会いたい人に会って、宴会したり絵や書をかいたり、好きなように、思うように、気ままに。
    好きなもの、人、景色、雰囲気、日常を取りこぼさないように生きたからこそ、夢半ばだったのかもしれない。蓑虫山人が蓑虫山人のまま夢を成し遂げるには人生は短すぎた。蓑虫山人は永遠に生きるつもりで生きていたんじゃないか、なんて思う。

    だけど決して偉大な人物じゃない。本を出すほどに蓑虫山人に惹かれた著者にすら、ホラ吹きだと全部を信じてもらえない。そんな胡散臭さも、魅力の一つ。めちゃくちゃカッコいいことしてるのに、描く絵はゆるいし、呆れてしまう一面もある。なんとも絶妙なバランスにどツボにハマる。蓑虫山人が愛おしくて仕方なくなってしまった。

  • 蓑虫山人の絵を知って、もっと知りたくなって読みました。蓑虫山人のファンになりました。

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著者プロフィール

『縄文ZINE』編集長。1972年、静岡県静岡市生まれ。ニルソンデザイン事務所代表。書籍の装丁や雑誌のデザインを主たる業務としながら、出来心で都会の縄文人のためのマガジン『縄文ZINE』を二〇一五年から発行し編集長をつとめる。著書に『縄文人に相談だ』(国書刊行会/文庫版は角川文庫)、『蓑虫放浪』(国書刊行会)、『縄文ZINE(土)』、『土から土器ができるまで/小さな土製品をつくる』(ニルソンデザイン事務所)など。現代の縄文ファン。

「2023年 『土偶を読むを読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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