氷の城 (タリアイ・ヴェーソス・コレクション)

  • 国書刊行会 (2022年4月12日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (348ページ) / ISBN・EAN: 9784336072504

作品紹介・あらすじ

私はこの誓いを絶対に忘れない。

雪に閉ざされたノルウェーの田舎町。11歳の少女シスの通う学校に、同じ年の少女ウンが転入してくる。ためらいがちに距離を詰め、運命の絆で結ばれたふたりの少女が、それぞれの思いを胸に、森深くの滝の麓につくられた神秘的な〈氷の城〉を目指す……類稀な研ぎ澄まされた文体により、魂の交歓、孤独、喪失からの再生を、幻想的・象徴的に描き上げたヴェーソスの代表作。

凛とした切なさを湛えた、出会いと別れの物語。

【英ペンギン・クラシックス収録の20世紀世界文学の名作】
【1965年度北欧理事会文学賞受賞作】

Is-slottet(1963)

***

【推薦のことば】
大人になっていくことの残酷さとイノセンスからの解放を、こんな風に鮮烈に描いた物語を他に知らない。
――山崎まどか(コラムニスト)

誰にも会いたくない日に読んだ。静かな言葉で書かれるからこそ、少女二人の燃えるような気持ちが胸にぎゅっと迫ってくる。
――朝吹真理子(作家)

なんと平明で、繊細で、力強く、類のない小説なのだろうか。唯一無二の、忘れがたい傑作だ。
――ドリス・レッシング(英・ノーベル文学賞作家)

世界で一番有名でないことが不思議な本をもし選ばねばならないなら、それはタリアイ・ヴェーソスの『氷の城』だろう。
――マックス・ポーター(英・作家)

私がこれまで出版した最高の小説
――ピーター・オーウェン(英・ピーター・オーウェン社社主)

感想・レビュー・書評

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  • 11歳の少女、シスとウン

    親密な友となった翌日にひとりは氷の城へ閉じ込められ、
    もう一人は自身のなかへ引きこもる

    寒い寒いノルウェーの物語

    新しい物語だと思っていたら’63年の作品だった
    いま再評価されてるのも納得

    著者はあとがきで「…心で感じることしかないものもあっていいのだ…」と。
    本を読むことに近道してはいけないのだ。
    著者は読者を信じて物語を託しているから。

  • 記念すべき感想100個目。それはさておき。
    なんて運命的で、幻想的で、儚い物語……
    読了後、はぁーっとながーいため息をついた。
    あまりにも物語にのめり込みすぎて、自分が吐いたため息にまで氷の結晶がまざり凍えているのではないかとさえ思えた。夏も近づく頃なのに。

    この物語の舞台はノルウェーのとある田舎町。
    学校の中心人物であり11歳の女の子シスは、謎めいた、それでいて凛とした空気を醸し出す同い年の転校生の少女ウンに不思議に強く惹かれた。
    それはウンの方も同じだった。
    とうとうウンの家にシスが遊びに行こうという時の、2人のそれぞれの高揚感、期待、明るい未来。
    2人の不思議なまでに互いに惹かれ合うさまは、運命としかいいようがない。
    それでいてもどかしい。が、
    私は2人の明るい未来を期待して、2人が寄り添って笑い合って抱きしめ合って一生を共にするのではないか、そしてタイトルから氷の城とやらで何かワクワクの冒険を2人でするんじゃないのかと思った。
    でも違った。
    この物語は幻想的ではあるが冒険譚ではなく、出会いと別れと成長の物語だった。
    シスが遊びに行った翌日、ウンは学校ですごいぞと噂になっていた氷の城に一人で行き、そのまま行方不明になってしまう。
    ウンは一体どうなってしまったのか……最後までハラハラしながら読む。
    ウンを思う村の人たちの心情はもちろん、ウンがいなくなってしまってからのシスの、ウンとの秘密を、ウンを守るがゆえの周囲を避ける行動や、自分を押し殺さなければならないほどのウンへの強い思い、ウンへの誓いが、痛々しいほどに伝わってくる。シスとウンへの思いが、読みながら強くなっていく。
    …ウンが氷の城に囚われてしまっているように、シスもウンに囚われてしまっている。
    しかしそのラストは…………
    儚い、とも、希望とも、悲しいとも、未来があるとも、どれか一つには決して絞れない、胸がわななくラストだった。

    シスとウンにも強く惹かれたが、名もなき他の村のひとたちもみな愛おしい。
    それだけ人物の心理描写が素晴らしいということだ。
    しかしシスとウンの姿の具体的な描写…たとえば髪の色や瞳の色、背丈など、詳しい描写はない。私は読みながら頭の中でぐにゃぐにゃと登場人物たちの姿の想像を変えていった。
    そこら辺特徴的な書き方をするなと思った。しかしそんな具体性は必要ないのかもしれない。
    それに、そんなのなくてもとても読みやすい。
    速い人なら数時間も経たずに読めてしまえるほど読みやすいが、やっぱりこの物語はじっくり噛み締めるように、静謐さを保つように読みたい。

    本文中には、最後まで明かされない不思議な部分がたくさんある。
    あとがきには、ヴェーソスの描く世界…それら理解しきれないことを、読者はそのまま受け入れなければならない。とある。
    たしかに理屈で考えるよりも、その理解しきれない不思議を心でそのまま感じる方が味わいがある。
    愛おしくなる。
    またあとがきでは、舞台となったノルウェーの気候や文化、なぜ氷の城に村の人々はみな興奮するのか、ノルウェー人である作者、故ヴェーソスについての解説もあり、物語を読み終わった後に読むととても面白い。
    ちなみにウンが氷の城に魅了され次から次へ奥へ奥へと部屋を探検していく描写について、読者のみなさんはどう感じたか?と問われている。
    …私はとても恐ろしくハラハラした。
    しかし恐ろしさと同時に、それでもなお氷の城は魅力的にも映るのだ。うん、やはり恐ろしい。

    なんでこんな素敵な物語が今まで邦訳されていなかったんだろう!?
    書かれたのは1963年なのに。
    作者は何度もノーベル文学賞にノミネートされたらしいのに!?なんで知らなかったんだろう悔しい。でも今読めて嬉しい…。
    ヴェーソスの他の作品も邦訳されるとのことで調べまくったが、まだいつ出版されるとかの詳細がよくわからない。はやく読みたいよ〜〜〜この氷の城があまりにも魅力的だったから、まだ一作しか読んでないのにヴェーソスにめちゃくちゃハマりそう………
    読みたい……ヴェーソス作品もっと読みたい……っっ

    あとこの装丁素敵すぎてズルくないですか!?(ズルくない)
    北欧調であり、幻想的で光を通しきらない分厚い氷のような水色基調。
    そでの作者の写真の装飾枠もとても素敵でカッコいい。物語も装丁も全部私のツボをついてくる…………
    ぜひたくさんの人に読まれてほしい…!!

  • 11th ノルウェー読書会 翻訳者・編集者による『氷の城』講演会のお知らせ - norwaybooksのブログ
    https://norwaybooks.hatenablog.com/entry/2022/03/09/075301

    氷の城|国書刊行会
    https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336072504/

  • 北欧ノルウェーの凍てつく冬、11歳の少女2人の儚い友情の物語。
    シスは転校生・ウンと仲良くなるがある日彼女は忽然と姿を消してしまう。

    冬のある朝、1人の少女が登校中に姿を消す。捜索をしても見つからない恐怖と諦め。その前日に会っていた
    少女の誰も救えない後悔と喪失がひしひしと伝わってきます。

    この物語の根幹は、その雄大で容赦ない自然でしょうか。1人の少女が導かれるように
    その冬の氷による自然の煌めきの奥へ奥へと進んでしまい、神様に隠されてしまう。
    読んでいて久々に自然への畏怖を覚えました。自然は怖いという当たり前のこと。

    最近は「正しく怖がる」という考えが広まり、自然もそのひとつとなってきていますが
    このような自然の怖さを伝える物語も必要だと感じました。
    #氷の城 #NetGalleyJP

  • 「白く若い額が暗闇を突き進んでいく。十一歳の少女。シス。」
    こんな書き出し引き込まれちゃうな。
    ファンタジー作品かと思って読んだのでちょっと残念ではあったものの。
    あらすじを雑に書くと「憧れの大好きな子が亡くなったという経験をした主人公が少しずつ立ち直る話」なんだけど、そこまでの道のりが丁寧に静かに、時に冬の風みたく鋭く、氷の中を覗くようにどこか幻想的に描かれています。
    大人になりかけだけどまだまだ子供の十一歳の世界は広いようで狭い。シスはクラスの中心にいるような女の子で、ウンは一匹狼の孤高の人。シスはそんな気高く見えるウンが気になって仕方がない。あるあるですね。
    読みやすいけれど微妙にとっつきにくい文章で、夢か幻か判別せず、シスとウンの世界は読み解くのが難しく感じたりもする。だけどすぐに物語から目が離せなくなった。シスがウンを見る目、ウンがシスを見る目がキラキラ輝いていて、ほんの一瞬の心のつながりなのに美しく描かれていて、二人のこの先に幸せがあるよう祈りたくなる。だけど、夢のような、禁断の秘密の時間はあっけなくプツンと終わる。
    人の命は思いも寄らないことで無慈悲に終わることを大人の私は知っている。日本より厳しいノルウェーの冬はなおのこと。だけどシスと一緒に、どうか奇跡が起きますようにと祈りながらページをめくらされてしまう。
    「私、天国に行けないかもしれない」…ウンの独白ですが、同性愛者であることを示唆したのかなと思ったけど作者の考えはそうじゃなかったらしい。もしくは、性的なトラウマがあるか。シスは「誰にも話してはいけないことだ」と気づいたからこそ黙っていたし訊ねられるごとにパニック起こして嫌がったのだと思ったんだけど、ウンの名誉のために追及するべきポイントではない気もした。
    シスの心を守るためにみんなウンのことを一切言わなかったと後に明かされるけれど、シスにとっては語られないということはウンを忘れたと同じで、またそこのすれ違いが切ない。
    誓いは守られなければいけない。でも誓った相手がもういないなら、それに縛られすぎるなとシスに諭すウンのおばさんが切ない。彼女もまた大切な姪を失った人ではあるけど、シスを立ち直らせようと優しく接するのがまた悲しい。
    それでもウンとの誓いから開放されたシスは年上の男の子との会話でほのかな恋のようなうれしさを感じる描写があり、少しホッとできる。だけど、シスとウン以外の人の名前はそれでも一切出てこない。それがまた、シスの閉じた世界で余計なものを全部削ぎ落としているかのようで悲しくすらある。ラスト近くでシスが仲良くなる女の子や時々気にかけてくれた男の子の名前もない。大切な人を亡くした喪失ってこんな感じなんだろうと思う。
    シスは長い時間をかけてみんなのところへ戻る。誓いは消え去った。ウンを失った痛みは完全に癒えたわけではないけど希望に満ちた終わりで良かった。シスを見守る周りの人たちが温かくてよかった。
    ウンが秘密にしたかった、でもシスにだけはどうしても言いたかった「あのこと」も永遠に融けて消えた。ウンの一生があまりにも切なく儚いことを思うと、シスが立ち直って良かったとホッとする気持ちと共に、キリキリ胸が痛む。シスも読者もウンのことは何一つわからないまま終わってしまったけど、それで良かった気もする。
    ノルウェーの雪に閉ざされた闇の中不吉なことをささやく魔物の姿を幻視する描写や、氷の城を探検するウンの描写が、死に向かっているというのに、悲しいはずなのにきれいだった。

  • 決して難しくは無いけれど、描かれている世界に自分から踏み込んでゆかないと、よくわからないままに読み終わってしまうような作品。どれほどの寒さで、どれほどの硬さで、どれほどの美しさで、どれほどの巨大さなのか、想像を超えるような氷の城。その城の魔力に人も鳥も惹きつけられて意思も自由も失ってしまう。ノルウェーにはきっと、本当にそんな寒さが有り、そんな氷の城があるのだとおもいながら読んだ。少女たちの心や周囲の人々の思いを頑張って追いかけながら読んだので、読後は、しっかり文学を読み終えた気がした。決して説き明かされないなにかを周辺からとにかく描いて描いていくこれは、やはり文学作品なのだろう。

  • 正直言ってよくわからなかった。
    寓話ではないし、リアルな物語でもない。
    ぼんやりとした書き方だが、意図して隠しているわけではない。
    一応ストーリーはあるが、全体的につかみどころがない感じ。
    ウンが氷の城に入っていき、様々な部屋を見ていくシーンは幻想的で美しく、ちょっと怖い。
    そこが一番印象に残った。
    ノルウェーの冬の夜の長さが、不安をかきたてる。
    11才の子どもが凍りつくように寒く真っ暗な中(時間は遅くないのだが暗くなるのがとても早い)、一人で友だちの家に行ったり家に帰るのが心配にもなった。

    良さが今一つ味わえなかったのは、あとがきにもある通り読むのを急ぎすぎたのかな。

  • 途中までドキドキしながら読んで、後半はしんどかった。11歳でいくら親友を失い傷ついたからといって、こんな態度とり続けてもクラスメイトから愛され見守られ続けるなんて成熟した社会であるノルウェーだからなのかなあ。日本だったらふつうにハブられて居場所無くなりそう。主人公が恵まれてるのに頑固過ぎてイライラした。ウンやおばさんは素敵だった。

  • これは物語じゃなくて、散文詩のような。

  • 深く通じ合えたばかりなのに行方不明になった友人ウンをいつまでも思い続けるシス。
    2人以外は家族もクラスメイトも名前で表されないことが2人の特別な絆を高めている、のか?

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著者プロフィール

20世紀ノルウェー文学を代表する作家・詩人。1897年、テーレマルク県ヴィニエ生まれ。主にノルウェーの自然豊かな田舎を舞台に、孤独や不安といった、根源的で普遍的な人間の感情を平易な文体で描き、独特な神秘の世界へと誘う作品を手掛ける。
代表作は『風』(1952)『鳥』(1957)『氷の城』(1963)などで、作品はすべてニーノシュク(ノルウェーの公用書き言葉のひとつ)で執筆した。北欧理事会文学賞、ヴェニス国際文学賞などの数々の文学賞を受賞し、ノーベル文学賞に幾度もノミネートされた。1970年逝去。
現在、世界的に再評価が進み、ペンギン・クラシックスをはじめ各国で作品が翻訳刊行されている。

「2022年 『氷の城』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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