- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336075949
作品紹介・あらすじ
むかし澁澤龍彦と多田智満子を経由してシュオッブを識った。「睡れる市」「大地炎上」の眠りと滅び、ほの暗い架空世界の有り様はその後ながく私の創作の指標となった。シュオッブの名を密かに識る者は幸いである。その名は書物の森のもっとも秘密めく径の最奥手、ポオやボルヘスやコルタサルや――の隆々たる奥津城が火影を伸ばすあたりの行き止まりにある。(山尾悠子)空前絶後の豪華翻訳陣による、マルセル・シュオッブの絢爛たる幻想短篇20数編。初の単行本化となる渡辺一夫訳の『架空の伝記』をはじめ、上田敏、堀口大學、日夏耿之介、日影丈吉、澁澤龍彥、種村季弘ほか12人の訳者。バルビエやジョルジュ・ド・フールのカラー装画ほか、挿絵も多数収録した豪華愛蔵版。【目次】絵師パオロ・ウッチェロ 渡辺一夫訳犬儒哲人クラテース 渡辺一夫訳神となつたエンペドクレス 渡辺一夫訳小説家ペトロニウス 渡辺一夫訳土占師スフラア 矢野目源一訳大地炎上 矢野目源一訳モッフレエヌの魔宴 矢野目源一訳卵物語 矢野目源一訳尊者 矢野目源一訳081号列車 鈴木信太郎訳黄金仮面の王 松室三郎訳骸骨 青柳瑞穂訳木乃伊つくる女 日影丈吉訳ミレーの女達 日影丈吉訳睡れる市 日影丈吉訳吸血鳥 種村季弘訳浮浪学生の話 上田敏訳遊行僧の話 堀口大學訳癩病やみの話 上田敏訳法王の祈禱 上田敏訳三人の子供の話 山内義雄訳三人童子の話 日夏耿之介訳エンペドクレス(抄) 澁澤龍彦訳パオロ・ウッチェロ(抄) 澁澤龍彦訳解題
感想・レビュー・書評
-
タイトル通り、マルセル・シュオッブの名作名訳集。一種のアンソロジーで、ポイントはなんといっても「名訳」の部分。錚々たる翻訳者、詩人の研ぎ澄まされた名文で珠玉の短編を読める至福…!
ボードレールやフローベールの翻訳者・渡辺一夫の序盤4作(絵師パオロ・ウッチェロ/犬儒哲人クラテース/神となつたエンペドクレス/小説家ペトロニウス)は『架空の伝記』からの翻訳。
矢野目源一訳は、アラビアンナイトのアラジンに魔法のランプを奪われる占い師「土占師スフラア」、終末もの「大地炎上」、偶然にも魔女のサバトに同行してしまった男の話「モッフレエヌの魔宴」、童話風教訓話で稲垣足穂味もある「卵物語」など、ストーリーや題材的には一番好きな系列。
作家としても大好きな日影丈吉訳の3作も良かった。既読だけど、エジプトの墳墓の地下でおこなわれる儀式「木乃伊つくる女」、古代イオニアのミレー市で乙女たちがどんどん自殺しはじめる「ミレーの女達」、海賊が上陸した町で人々の時間が止まっている睡れる市など、どれも全部好み。
堀口大學訳「遊行僧の話」と上田敏訳「浮浪学生の話」は実は同じ話。どちらもフランス語翻訳詩人なので散文詩のよう。山内義雄訳「三人の子供の話」と日夏耿之介訳「三人童子の話」も同じ話(「少年十字軍」の一部)で、これらを読み比べられる贅沢。
種村季弘はもちろん吸血鬼ものの「吸血鳥」、彼と最後に収録されてる澁澤龍彦だけは時代が少し新しいので読みやすい。澁澤が訳した「エンペドクレス」「パオロ・ウッチェロ」はどちらも抄訳ながら渡辺一夫訳の『架空の伝記』と同じもの。
挿画もジョルジュ・バルビエが収録されていたりしてお耽美。やはり名作は名文で読んでこそ、と思わされる1冊でした。
※収録()内は翻訳者
絵師パオロ・ウッチェロ/犬儒哲人クラテース/神となつたエンペドクレス/小説家ペトロニウス(渡辺一夫)
土占師スフラア/大地炎上/モッフレエヌの魔宴/卵物語/尊者(矢野目源一)
081号列車(鈴木信太郎)
黄金仮面の王(松室三郎)
骸骨(青柳瑞穂)
木乃伊つくる女/ミレーの女達/睡れる市(日影丈吉)
吸血鳥(種村季弘)
遊行僧の話(堀口大學)
浮浪学生の話/癩病やみの話/法王の祈禱(上田敏)
三人の子供の話(山内義雄)
三人童子の話(日夏耿之介)
エンペドクレス(抄) /パオロ・ウッチェロ(抄) (澁澤龍彦)詳細をみるコメント0件をすべて表示