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Amazon.co.jp ・本 (568ページ) / ISBN・EAN: 9784336076571
作品紹介・あらすじ
欲しいのは、変化、休息、人生。
女性初のピューリッツァー賞作家であり、19世紀末から20世紀にかけてのアメリカ文学史上に名高い、〈短編の名手〉ウォートンによる、本邦初訳を含む待望の作品集。
予想もつかない展開と結末。
豊かな教養と想像力が生んだ、極上の14作。
【目次】
満ち足りた人生
夜の勝利
鏡
ビロードの耳当て
一瓶のペリエ
眼
肖像画
ミス・メアリ・パスク
ヴェネツィアの夜
旅
あとになって
動く指
惑わされて
閉ざされたドア
〈幼子らしさの谷〉と、その他の寓意画
訳者あとがき
感想・レビュー・書評
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「満ち足りた人生」
人生の終わりの日、その終わった瞬間、彼女の目の前に現れる幻影とも思われる人物。そこは彼岸でもあるようだ。そなたの人生はどうだったのか? と問われる。おおむね満ち足りてはいたようだけど、主人とはどうもダメだったと。しかしその時、男性が現れる。その人も満ち足り合う相手を探している幻影のようだ。二人は気が合うかにみえたが、男性は去ってゆく。女性が気にしていたのは、表面だけをみている夫と足音を立てるブーツ。彼女は音のしないブーツをさらに求める。
解説に作品ごとの説明あり。
「満ち足りた人生」The Fullness of Life 1893雑誌Scribner’s発表
死後の世界で、不満ばかりだった結婚生活を過ごした夫のことを思い出す妻。ウォートンの結婚観が現れている作品というには、あまりにも満ち足りた結婚ではないだろうか。 とある。ウォートンの結婚が満ち足りていた、と言う意味?
イーデス・ウォートン:Edith Wharton, 1862年1月24日 - 1937年8月11日)は、アメリカ合衆国の女性小説家、デザイナー。1905年に『歓楽の家』(House of Mirth)を発表、自然主義を近代化した洗練された作風で上流社会の恋愛風俗を風刺的に描いた。『エイジ・オブ・イノセンス』(1920年)でピューリッツァー賞受賞。短編の名手でもあり、「ローマ熱」は特に名作とされる。
2024.9.24初版第1刷 図書館
「ローマ熱」は「アメリカ短編ベスト10」に入っていて、以前借りたことがあったが読まなかった。ので読んでみた。こちらは娘時代から仲良しの女性二人が、年頃の娘をもつ頃になって再会し、お互いを錯覚して認識していた。とても残酷な事実が最後につきつけられる。ドラマチック。・・が雰囲気としては「満ち足りた人生」が好きだなあ。 -
怪奇幻想や奇妙な味の短編が収録された綺譚集。表題作「ビロードの耳当て」は偏屈な教授が訳の分からない発言の女性に翻弄される話。モフェット「謎のカード」を思わせるような展開でとても面白かった。「満ち足りた人生」は結婚を寓意に満ちたストーリーで語る。「鏡」は美醜に取り憑かれた女性の哀しくも不思議な話。
「旅」は死期の近い夫との最期の時間をえがく物語ですが妻の夫を守る気持ちがこじれてしまい身につまされます。「あとになって」は構成の巧みさが光る。結末を見てから再読しました。
値段も分厚さもすごいですが海外短編の面白さが詰まった佳作揃いの綺譚集といえます。
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怪奇幻想、というにはやや穏やかな印象。でもまぎれもない怪奇のエッセンスはそこかしこにある幻想短編集です。幽霊が出てこないのに、たしかにゴーストストーリーだと思える物語があったりもするのが、面白いところ。こういう手法もあるのね。
お気に入りは「一瓶のペリエ」。沙漠の館で外出中の友人の帰りを待つ主人公。のんびりしているようで、外界から閉ざされた感じのあるこの場所の雰囲気が嫌。途中からはなんとなく結末に予想がつきますが、なんともいえない不吉な予感がじわじわと強まってくる感覚がたまりません。
「ミス・メアリ・パスク」は一見オーソドックスなようで風変わりな幽霊譚。幽霊となってしまったメアリ・パスクの孤独感がひしひしと胸に迫る作品でした。 -
イギリスは嫌い、文学も映画も・・と言いつつも、詰まるところ、一番、芸術的に長い時間、大量に触れてきた記憶がある。
訪れて、滞在した日数が一番長いのもこの国だし。
好むと好まざるとにかかわらず、近代世界史の感となっているというのが適格なのでは・・:とこの分厚い短編集を読み終えて思えた。
掲載されているのは14篇。
何れも折り紙付きレベルの短編∼さすが名手と謳われるだけある。
おや?と思ったことは、筆者・・「無垢の時代」でピューリッツァー賞を女性初で受賞→映画【エイジ・オブ・イノセンス】の作者っていうこと。
ダニエル・ディ・ルイスの馬面の顔とまだるっこい上流社会独特の皮肉っぽいせりふのやり取り、ウィットにとんだ会話の数々・・この短編集に流れる空気感そのものっていう事だ。
100年前の女性作家・・米国に生まれながら名門という家庭環境もあって、家庭教師による欧州風教育で培われた彼女。
大富豪と結婚し、長らくイタリアに住んだ経験体験が作品にふんだんに登場するのもむべなるかな。「ローマの熱」が名作と謳われているだけに、読んでみたい。
結婚歴としては12歳上の夫とは上手く行かず、40歳代のおわりに離婚した・・事を見ると「満ち足りた人生」で呟く彼女の空気の【ある】萌芽を感じさせられた。
帯にある「欲しいのは」変化休息人生∼筆者が意図する予想もつかない展開と結末は読み手に取ってしたら良くも悪くも同じテイストに感じられた。
546頁という膨大な分厚さを異ちぃわずつ読めなかった今回(他館よりの貸し出しは14日限定、延長不可)条件が悪かった。
暇とはいえ、とっても、ゆっくり読む気になれない。
住まいに、頁を開くのも気だるくなって。
微かにビクトリア朝の空気を醸す、そして豊富な体験と教養の裏付けられた作品群は素晴らしいと認識。
次回は、これまた、筆者の得意とする幻想怪奇作品集にターゲットを絞って読みたいな・・本の入手困難となっている今の時間、だからこそ、熱望。
14編、それぞれ語るのは煩雑~
個人的にグーだったのは
①満ち足りた人生:結婚歴からして筆者の前半生の満ち足りた体験からすると「死後の世界で亡くなった夫の事を追憶する妻」の結婚観がウォートンと被る。
⓶ビロードの耳あて:表題だが、案外内容は軽い。
ほぼ一人の男性の主観が延々と「ヒステリックな女性」に向けて呟かれる。こういった男性から見た女性観はウォートン作品によく出てくる。
③一瓶のペリエ:エキゾチック感が愉しく、欧州人から見る現地人や雇われ人への蔑視的感覚も いか煮もの感じを受けた。
長い読書の時間を経て思ったことは「時も社会も全て生生流転だなぁ」という得も言えぬ思い。
この作品群が執筆された100年前とは良くも悪くも怒涛の変化が押し寄せた。
変わることは軽佻浮薄に流れるとか、情感を理解しえぬ動物になって行くとか、名作は決して色褪せぬとか。。多々言われるけれど、少なくとも日本で新たに翻訳された作品が少ないという事は商売にはならないという事だろうか。
100年前は彼女はアメリカを代表する女流作家だった・・今はマーガレット・アトウッド・・だと私は思う。
繰り返すが時は流れて行っている。
著者プロフィール
イーディス・ウォートンの作品
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