心は高原に (ショート・ストーリーズ)

  • 小峰書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (63ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784338133029

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  • 『心は草原に』
    ぼくの家の前にラッパ吹きのおじいさんがやってきた。おじいさんは「お若いの、心を草原においてきたこの年寄に、水を一杯、いただけんかな」って言ったけど、ぼくはおじいさんを質問攻めにした。
     どこの草原なの?おじいさんの心はその草原で何をしているの?おじいさんのお母さんやお父さんもその草原にいるの?

    そこに詩人のお父さんが出てきた。「お年寄りを困らせるのはやめなさい。早く水をあげて、お店に行ってパンとチーズをもらってきなさい」でもお父さんはお店のコサックさんに払うお金がなくてずっとずっとつけにしていて、コサックさんからは毎回「これっきりだ」って言われてるんだ。

    ぼくはコサックさんのお店に行って言ったんだ。「ねえ、おじさんは故郷から5千マイル離れてるんだ。パンとチーズをくれるクリスチャンの人の助けが必要だと思わない?」

    ラッパ吹きのおじいさんはしばらくぼくたちの家にいて、その間近所の人達にラッパを吹いてあげてたくさん食べ物をもらったよ。
    でもおじいさんがいなくなったらまたまた食べ物がなくなっちゃったんだ。またまたコサックさんのところに行ってやっと鳥の餌用の種をもらってきた。
    でもお父さんは「鳥の餌で、いったいどうやって偉大な詩をかけっていうんだ」なんていうんだよ。あーあ。

    ==
    なんというかこうやってお金がなくても仕事しなくてもお互いに暮らしていけたんだなあ。
    父親は働かなくても父親で、子供はかなり口が達者。みんなの会話がちょっとずつズレていて、傍から聞いたらかなりシュールな感じだろう。


    『キングスリバーのいかだ』
    とても仲が悪いというわけではないけれど、けんかばっかりしている両親。
    優等生でぼくの大好きな兄さんは、ある日「ぼくは家を出る。もう帰ってこないよ」って言う。
    ぼくは兄さんと一緒に川に浮かべるはずだった筏のところに行く。ぼくが完成させなくちゃ。兄さんの分もぼくが一人で川を下らなくちゃいけないんだ。
    兄さんは、陸にあるその筏にのった。まるで川を下っているかのように。
    <ぼくはなにもかもを、学校からではなく兄さんから学んだ。そして、その兄さんは、すべてを父さんから学んでいた。でもぼくらはなにを知っていたのだろう?父さんは何を知っていたのか?兄さんは?そしてぼくは?P48>

    やがて兄さんから手紙が届いた。サンフランシスコで大学も仕事も決まりとても幸せだって。
    父さんはクリスマスにぼくを兄さんのところに連れて行ってくれた。ぼくはやっぱり兄さんと一緒に筏で川を下りたかったけど、兄さんにとって、家を出る日にいかだに乗ったことでけりが付いているんだ。

    今ではぼくにも妻と息子がいる。息子はぼくたちがけんかをする事を気にしている。大したけんかではないのに。いつか息子は出ていくだろう。ぼくたちは、息子がやがて飛び立っていく心の準備をしておかなければいけないんだ。ぼくも、息子も、つまらない人生など決して送っていないのだから。

    ==
    親の立場である私には身につまされる。
    家を出たけど家族断絶ではない。つまらない人生ではない。こうやって繰り返されていく。

  • なんだかすっきりしない感じ。
    でも、もう一度読みたくなる感じ。

    サローヤンっぽいかな、と。

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