8分音符のプレリュード (Y.A.Books)

  • 小峰書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784338144261

作品紹介・あらすじ

その少女の奏でのピアノはきっと孤高の極みで、その透明感のある澄んだ音楽を世界に響かせていたにちがいない。天才ピアニスト透子とふつうに暮らしていたふつうの女の子果南の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 2020年11月21日
    シイナがいい味出している。
    あっちもこっちも自意識の固まり。
    思春期そのもの。
    通ってきた道。
    ヒリヒリする。

  • 優等生の果南は担任から転校生の世話を頼まれる。転校生は天才ピアニストと呼ばれた透子。しかし透子は事故のせいでピアノが弾けなくなっており、周りを拒絶するような態度を取るのだった。

    アイデンティティの喪失と再生がテーマなのかと感じました。果南は勉強もクラスの仕事も部活もきちんとこなし先生の覚えもいい「優等生」としての自分を自負していたし、透子は雑誌にも取り上げられるほどの「天才ピアニスト」だった。しかしそのアイデンティティが崩れた時、少女たちはどうするのか。

    透子の登場により自分が薄っぺらな存在に思えてしまえた果南。しかし一度手放したアイデンティティは、自分にとって無価値だったのではないかと思う。透子の達観した(ように見える)態度を模倣することにより、自分の姿と他人の姿を見直すこととなる。そのことにより再び優等生としての自分を取り戻すが、それは他人を意識した行動でなく自らの想いによる行動となる。

    透子もまた、剥き出しの感情をぶつけてくる果南によって動き出すこととなる。
    全く合わないであろうふたりが出会ったことにより、自分を見つめ直し新たな自分(でも前と変わらないかもしれない自分)へと移り行く姿を青春と呼ぶのかも知れません。

    クラスメイトによる仲間はずれ、教師の裏切り、嫉妬、重いテーマがごまかさずに書かれています。その中でお調子者の男子シーナの存在が、一服の清涼剤ともなるでしょう。

  • (No.13-33) 児童書です。

    『中学2年生の秋山香南は、勉強もクラスの仕事も手を抜かない真面目な優等生。先生からも褒められ、それを嫌っていやみを言うクラスメートや、香南に任せておけばいいやと日直の仕事もしないクラスメートもいる。でも今さらやめるわけにもいかない。

    若い女性の担任教師・新藤先生は香南のあこがれ。その新藤先生から今度来る転校生の面倒を見てあげて欲しいと頼まれ、不安を感じながらも引き受けた。転校生についての詳しい情報を全く教えてもらわないままで。
    香南はいろいろ準備して保護者気分になっていたが、転校生・波多野透子は独特の雰囲気を持ち、他を全く拒絶する気難しい少女だった。そのうち透子の過去がクラスメートに知られると、一気に透子は悲劇の主人公。彼女のために努力する香南は逆にクラスから浮いてしまう。
    何の情報も与えられなかったのに頑張って、でも成果もなくただ他の人から透子の窓口として便利に扱われる状況に、ついに爆発してしまった香南。
    もう優等生なんかやってられない!先生なんて大嫌い!』

    香南は自分が優等生を演じていたように思ってしまいましたが、でもやっぱり彼女は優等生なんです。自分自身をきちんと見極めることが出来るからこそ、自分で自分を追い詰めてしまった。もっといい加減な性格だったらここまでにならなかったのにと思って、読んでてとてもかわいそうになりました。
    香南は秀才、そして透子は天才です。秀才が努力してやってきたことを、天才は軽々と飛び越える。そのことを突きつけられると辛いですね。

    私が一番いやだなと思ったのは新藤先生のやったことです。転校生と同じ立場のはずのクラスの生徒に、先生でも持ち重りがする生徒の面倒を見てやって欲しいと頼む。気を配ってあげるだけでいいからと言われても、ただ見ているだけでは気を配ってることになりません。やっぱり何か話しかけないわけにはいかないのに、基本的情報は与えない。
    しかも先生個人のことについて、結果的にですが嘘をついてしまってます。生徒に対する裏切りで、かなり罪が深いと思う。
    でも現実にこういう先生っていそうだわ。他人を全面的に信ずるな、頼まれても納得出来ないことは引き受けるなという教育をしたことになったのかな。

    救いはクラスメートの男の子・シーナ君の存在。でもこういう子って実はいそうもないわ。この子がいなかったら物語がものすごく暗くなったと思うので、作者の配慮でしょうか。

    難関を乗り越え香南と透子が共に大きく成長していく物語で感動しました。

  • 登場人物一人一人の役割がはっきりしていて、
    読みやすかった。
    思った以上に、主人公の女の子がいろいろ
    やってくれてますが、
    優等生女子の心の中ってこんな感じだろうなあ。

    ただ、担任の先生はもうちょっと書きようが
    あったのでは…
    あんな先生、おらんよ…

  • 優等生の主人公が元天才ピアニストの転校生の世話をするように先生に依頼される。優等生の殻を破る主人公、新たな夢へと邁進する転校生。思春期の多感な時期がよく書かれていると思う。

  • ・舞台はたぶん中学校。
    ・透子が転校してきたことがきっかけで果南は自分の中の醜い部分に向き合うことになりショックを受ける。元気で心地よいタイプのお話ではないのだなあとそういうのを想像していたのでちょっとした驚きではあった。
    ・ドロドロのグダグダになりつつも完全にはメゲない二人の少女の心が少しずつとけていくところはなかなかの感動もんでした。

    ▼簡単なメモ

    【薫】吹奏楽部で果南と同じフルートパートに属する。
    【果南/かなみ】主人公。秋山果南。吹奏楽部でフルートを吹いている。教師に媚売ってると一部ではうとましがられている。黒板拭きが得意。
    【木暮】吹奏楽部部長にして生徒会長。王子様系。自分に酔うタイプ。
    【詩織】お調子者。クラスの中では果南といちばん親しい。
    【新藤】担任の女性英語教師。
    【知栄/ちえ】高木知栄。陸上部。果南に反感を抱いている。
    【透子】波多野透子。転校生。すごい美少女で極端な短髪。天才ピアニストと言われていたが交通事故で指を怪我して再起不能になったらしい。
    【シーナ】椎名正樹。剣道部。お気楽なヤツ。どうやら果南に気がある感じ。

  • 心の皮を剥いで、本当の自分の姿で向き合い始めた少女2人の物語。
    思春期だからこその脆いハートがリアル。

  • 『ヒトリコ』と前後して読んだからどうしても比較しちゃうなー
    あちらは教師に対して完全に諦めてるけどこちらはまだ希望がある感じなのでホッとします

  •  転校生は実は天才ピアニスト、透子(とうこ)。吹奏楽部の果南(かなみ)と剣道部の椎名(しいな)等が織りまじわり、新たな展開に…。人は人と出会うことで、かけがえのない今を生きてゆける。それを教えてくれる本です。
    (カウンター担当/日本チャチャチャ)平成28年9月の特集「職員おすすめ」

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著者プロフィール

松本 祐子
早稲田大学第一文学部英文科卒業、日本女子大学大学院文学研究科英文学専攻博士課程満期退学。聖学院大学・児童学科教授。児童文学作家。
1992年、ティーンズ向けの小説『虹色のリデル』(早川書房)を上梓。以後、ティーンズ向けのレーベルで作品を発表するが、児童文学に路線変更し、2002年刊『リューンノールの庭』(小峰書店)で、第1回日本児童文学者協会・長編児童文学新人賞、第19回うつのみやこども賞を受賞。

「2016年 『魔女は真昼に夢を織る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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