口で歩く (おはなしプレゼント)

著者 :
  • 小峰書店
4.20
  • (20)
  • (17)
  • (6)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 158
感想 : 22
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (95ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784338170062

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 小学校の国語教科書(光村図書出版)4年生に紹介されている本。

    これは良い!!何気なく読んでびっくりした。これはぜひとも大人にも子供にも皆さんにも読んでいただきたい!

    ===

    タチバナさんは生まれてから一度も歩いたことがありません。骨の病気で寝たっきりなんです。離れたところのものを取るには1.5メートルくらいの棒を使います。タチバナさんのお母さんは「ナマケモノみたいだね」というので「なまけん棒」って名前にしました。
    でも家で寝っ転がっているだけではありません。今日はいい天気、お友達の上野さんに会いに行こう。
    タチバナさんのお母さんは、車輪と人が押すためのハンドルがついたベッド式乗り物にタチバナさんを寝かせます。
    あとは人任せ、今日はどんな人に出会うかな。あ、きたきた。タチバナさんは通りかかった人に声をかけます。
    「すみませーん!」
    びっくりする人にタチバナさんは言います。
    「このベッドを押してくれませんかねえ」

    何も言わずに立ち去る人、「どんな病気も治るお祈りがあるのよ」って勧めてしてくる人」、「なんの役にもたっていないのに散歩なんて恥ずかしくないのか!」なんて怒る人、「いえいえあなたは十分人の役に立っています。だって私はあなたと話せてとても楽しいんだから」と言う人…。
    人任せの散歩はなかなか進みません。人が全く通らないこともあります。変なところに置き去りにされちゃうこともあります。それでもタチバナさんは人と出会うことをやめません。タチバナさんは色々な人と出会って色々なお話をします。やってもらいたいことははっきり言います。嬉しい出会いがあったらそう伝えます。嫌なことを言われたら嫌だなって顔もします。

    「ぼくは人と出会うために散歩に出るんだ。ぼくは人の手を借りなければ生きていけない。そんな人がいるって認めてくれたっていいじゃないか。」
    そんな生き方を認めないって人もいます。でも「人間は支え合って生きている。これは人間が編み出した人類の知恵なんですよ」って言う人もいます。

    その日は午後になってやっとお友達の上野さんの家に着きました。車椅子の上野さんは言います。
    「はっはー。通りかかった人を呼び止めベッドを押してもらって、きみは口で歩いているようなもんじゃないか。なあに、人の手を借りて生きることだって立派な自立だよ。」

    そろそろ家に帰らなければいけません。
    帰りはどんな人と会うのかな。


    P2、P3 引用

     人は
     ひとりで生きているのではありません
     まわりにいる
     おおぜいの人たちと つながって
     ささえあう輪の中で
     いきているのです。
     だれひとりとして 意味のない人は、いない。
     だれひとりとして 価値のない人は、いない。

     ひとりひとりが なにかの役割をになって
     人のささえあう輪になって
     人のささえあう輪の中に
     生きているのです。

  • 一人でなんでもできるようでも、誰かの助けが必要な時は必ずくる。助けられてばかりいるようでも、人知れず誰かの何かの役に立っている。全て物事は支え合い無しには進まない。当たり前でもわすれがちなことを教えてくれる一冊。

  • 光村国語4年上巻末本の世界を広げよう掲載図書
    タチバナさんは骨が発達しないような障害で起き上がれない。散歩をしようと通りに車付きベッドで母親に出してもらうとじっと待ちます。そう、散歩をお願いして、口で頼んで歩くのです。
    さすが丘修三って感心するのは、押してくれる人が良い人だけでなく、色んなタイプの悪い(面倒な)人が来ること。スゴく現実感。
    短い本なのに(大人なら20分かからない)、色々考えさせられ、感じさせられ、とても良かったです。

  • とても良い作品だと思いました。障がい者になる可能性は誰だってあります。生まれつきハンディを持っている人もいれば、年老いて目が見えなくなったり歩けなくなったりすることで障がいを持つこともあります。弱い立場の人も、肩身を狭くすることなく共に生きられる社会にしていきたいものです。

    作品から抜粋
    人は
    ひとりで生きているのではありません。
    まわりにいる
    おおぜいの人たちと つながって
    ささえあう輪の中で
    生きているのです。
    だれひとりとして 意味のない人は、いない。
    だれひとりとして 価値のない人は、いない。
    ひとりひとりが なにかの役割をになって
    人のささえあう輪の中に
    生きているのです。

    「自分ばかりがびんぼうくじをひいているような気持ちになってさ。ちっぽけになって…。さびしいねえ」

    「だって、人間はささえあって生きているんですもの。そこが他の生き物と違うところですよ」

    「ほかの生きものだったら、弱肉強食、強いものが勝ちですけど、人間はそういう生き方じゃない、みんなで助けあって生きる生き方を発明したんですもの。わたし、これは人類が考え出した一番すばらしい知恵だと思いますよ」

  • 助け合いと言うことを、教えていただいたような気がしました!

  • #口で歩く
    #丘修三
    #立花尚之介
    #小峰書店
    自分では歩くことのできないタチバナさんと町の人々とのお話。美化され過ぎていないリアルな印象。私だって突然タチバナさんに声かけられたら戸惑うと思う。踏み込んでほしくないこと、逆に引いてほしくないライン。答えはないけど考え続けて過ごしたい。

  • 子どもの頃からずっと寝たきりのタチバナさん。散歩には特製の車輪つきのベッドで。しかも道ゆく人に押してもらう。逆ヒッチハイク的な。タチバナさんの手助けをしているつもりがいつしか押す側の人がタチバナさんに話を聞いてもらったりして。障がい者も健常者も大人も子どもも、どんな人だって支えて支えられている。ひとりで生きている人なんていないから。ユーモアがあって飄々としているタチバナさんがよい。とてもおもしろかった。

  • ・私が、この作品を選んだ理由は1つです。ある病気で体を動かせない人が他の人とふれあいながら、友人の家へ行くというお話です。私はそういう人のことを考えたことがなかったので考えてみたいと思いました。

  • 人にも勧めたいなぁ。と思った。
    重度の障害を持ったタチバナさんが、自宅から友人の上野さん宅へ遊びに行くまでのお話。
    タチバナさんの飄々とした人となりが、いい意味で裏切られた。障害者を描いた作品は独特の重さと笑えない雰囲気があるという先入観があったけど、そうではなかった。心無い人の言葉に憤ったり、人を傷つけたのではと反省したり、上品な喋り方につられたり、タチバナさんの心の在りようは、健常者とと何ら変わらない。
    人は誰でも支え合って生きている。だから誰もが生きていることを肯定される存在なんだ。

  • ある天気の良い日の寝たきりの方の散歩。散歩と言っても移動出来るベッドに寝ていますので、散歩自体が人と関わりながら進んで行くのです。著者のあとがきも読んでほしい。読みやすいですが、小学校4年生〜

  • タチバナさんは二十数年、生まれてこのかた歩いたことがありません。体が自由に動かせず、ねて暮らしているので、背骨も足も、まるでニボシのように曲がっています。散歩びよりのある日、タチバナさんは車輪のついたベッドで出かけることにしました。道で出会った人とお話しをしながら、友だちの上野さんの家へ向かいます。さて、どんな人と会えるでしょうか──?
    タイトルに込められた意味、上手いなあ。寝たきり=家もしくは施設から出られないイメージがあったので、タチバナさんの積極性に驚いた。また出会う人は良い人ばかりでないのも良い。郵便局で出会うおやじさんの言い分、否定しづらいよね。タチバナさんのように身体を自由に動かせなくなったら、大抵その世話は家族へと負担がかかる。家族に代わって近所や社会が支えるのは少数派でしょう。しかしその現状がつらくて死を選ぶこと、よくニュースで見かけます。でも誰しも突然死なない限り老いや病気で一人では生きていけない、支えてもらわなくてはならない時が来るはず。避けられない現実だと思う。どうやって支えるか、今の社会では本当に大きな課題だなと改めて感じました。また、どんな人であれ誰かを支えることができるというのも素敵でした。ヒマワリのきみ、そして後書きに涙腺緩みました。あの男の子も、タチバナさんと出会えて良かったです。読友さんの感想を見ていつか読もうと1年ほど放置、もっと早く読めば良かった。オススメです。

  • 障がいをもつ人からみた世界。
    体が自由に動かないタチバナさん。彼は一人で散歩へでかけます。
    そこで出会ういろいろな人たち―。「口で歩く」の意味が分かると、なるほどと思うと同時に、唸っちゃいました。
    中学年でも読めないことはないけど、高学年へおすすめします。

  • 体のほとんどが動かず寝たきりの主人公。けれど、彼は散歩にでかけます。どうやって?車輪付きのベッドに寝転がって道路に出て、そのベッドを押してくれる人を待つのです。そうすることで様々な人々と出会い、一瞬のつながりを持つ。それがどんな出会いであれ、何かしらの意味がある。彼の一期一会の人生を通じて、人間の様々な面が見えてくる作品です。

  •  児童文学論レポートのために借りた本その2。
     
     寝たきりの生活を送る青年タチバナさんは、ある朝、知り合いの上野さんのところに行くことを思いつく。歩くことはおろか自力で動くこともままならない彼の移動方法は、車輪付きベッドに寝転がり「口で歩く」こと。道行く人に声をかけ、ところどころまで押して行ってもらうのだ。そんなタチバナさんが出会った人々を、障害者視点で描く一冊。
     
     この本を読み終わって思い出したのは、小学校だか中学校だかで、体育館に全校生徒で集まってみたアニメ。病気だか事故だかで片足を失った男性雑誌編集者が待ち合わせ場所の喫茶店で会ったのは、タチバナさんのように車輪付きベッドの乗った子供の背丈しかない男性。どうやってここまで来たのか、という問いに彼は「道中、いろいろな人に声をかけてここまでやってきた」……。うろ覚えな点があるが、確かこんな話だったと思う。大阪弁を話していたような記憶があり、話の内容も違うので、多分「口で歩く」のアニメ版ではないと思うのだが……。本作品では障害者から見た健常者が少しユーモラスに描かれていて面白い。しかしながら、不躾に「障害者?」と聞いてきたり、自分たちの税金で食べているんだから散歩などするべきではないと冷たく突き放したりする登場人物もおり、まさに現代社会における障害者への偏見や問題点をも同時に描いている。登場人物のおばあさんが言うように、年をとって「みんなのお世話になる」ようになり、体がいうことを聞かなくなってからではないと障害者の気持ちにはなれないのかもしれない。だが、せっかく人間はしゃべることと協力ができるのだからそれを使わない手はないだろう。

     相手の気持ちになって考えること、言葉が持つ力、協力することの大切さを、少し変わった視点で教えてくれる作品。

  • 「タチバナさんは、ずっと寝たきりです。でも、暗くなったり、くじけたりはしません。いつも散歩にいきます。特製の車輪つきのベッドで、道ゆく人に押していってもらうのです。人と人とのつながりをあたたかく描いた物語。」

  • タイトルからどういう意味かと思ったけれど、文字通り「口で歩く」主人公。

    さらっと書かれているけれど、声をかけるとか、人が来るまで待つとか、相当勇気がいることだと思う。

    福祉について勉強する4年生に勧めたい。

  • いろいろな人と出会って行くところが楽しい。ブックトークして、誰が好きだった?どうして?とおしゃべりしたい。

  • 肢体不自由のタチバナさんが,知人の家に行く為に通りがかる人びとに声をかけ,車椅子を押してもらいます.
    「青い芝の会」の事を思い出します.

    「さか立ちしても、ひとりで生きていくということはできっこないんだよ。だれかの手を借りなきゃ生活ができないんだ」「でも、ぼくはそれをみんなにみとめてほしいんです。人の手を借りなきゃ、生きていけない人間もいるってことを」pp. 73-74

  • 人間は支えあって生きている、このことを分かりやすく描いています。

  • 寝たきりの青年がベッドみたいな車椅子で散歩に出かけて
    いろんな人に話しかけて押してもらう

    読みやすいけど
    それなりに重い‥

  • すべての人がなんらかの形で誰かの支えになっていて、人と人は支えあって生きているんだと痛感しました。

全22件中 1 - 22件を表示

著者プロフィール

【丘修三・作】  1941年熊本県生まれ。「ぼくのお姉さん」で児文協新人賞、坪田賞受賞。「少年の日々」で小学館文学賞受賞。

「2015年 『おばけのドロロン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

丘修三の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×